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人狼TLPT X 宇宙兄弟

【インタビュー】『人狼TLPT X 宇宙兄弟』株式会社オラクルナイツ 代表取締役 桜庭未那総合プロデューサー、株式会社コルク 代表取締役社長 佐渡島庸平 

人狼TLPT X 宇宙兄弟

舞台版オリジナルキャラは、世界観を壊さないための逆説的存在

――キャストを見ていて、舞台版キャラが非常に気になります。このへんも舞台の見どころなのかなと思いますが、原作に出てくるキャラクターと、舞台にしかでてこないオリジナルキャラが相当いますね。
桜庭:そうですね。佐渡島さんに相談させていただいた中でも、その原作のキャラクターをどこまで出すかという話を結構たくさんしたんですよね。その結果がこのバランスです。今だとこのB班なんてケンジと手島しか原作キャラいなかったりします。
――たとえば、従来の2.5系の舞台だと、舞台版だけのキャラが出てくる場合、たいがい1人か2人しか出てこなくて、あとは原作どおりだったりとか、そのなかでオリジナルストーリーをつくる、あるいはもともとの話に舞台版キャラを登場して若干ちょっと色を付けるというパターンがほとんどですよね。
佐渡島:『宇宙兄弟』の映画もアニメもオリジナルキャラはいないんですよね。普通の劇にするなら、たぶんオリジナルキャラは許諾しないと思うんですよ。だけど人狼劇のアドリブってことを考えると、やりにくいキャラっていうのがたぶんいて、それを無理やり入れて構成してもらうぐらいだったら、たとえば小山さんが見に来たときに「このキャラあんなこと言わない」って思うぐらいだったら、オリジナルキャラで人狼劇として成立させた方がいいだろうなと思いました。さらに、今回のまずは3日間上演で、複数回見たくなる宇宙兄弟の劇ってどうやったらできるのかっていうのを試してみるときに、桜庭さんが自由にできる環境で試してもらったほうがいいなと考えました。こっちは人狼劇の可能性は理解していても、それを落とし込むときのやり方に関しては知らないわけですよね。そこに対して変に口出しするくらいだったら、まかせちゃって、それで今回のが良かったから来年もやりましょうとなったときに、来年はこうしませんか、このほうが原作の良さも生きるし……とかっていう提案もできるだろうと。それはもう、1回自由にやってもらってからのほうがいいなと思ったんですよ。
――今回の公演は、ある種トライアル的な?
桜庭:その側面はありますよね。原作キャラクターを生かすため原作にいないキャラクターをつくっているところがあります。オープニングには脚本があって、オープニングだけならば、もちろん原作キャラだけできっちり作っていけて、コンセンサスもとっていけたんですが、やはり六太の良さを生かしたいときに、六太がたとえば誰かに反論する、で、反論対向に舞台版キャラを持ってくると、舞台版キャラは必要さえあれば何でも言えるキャラクターになれるし、これ六太のキャラでは言えないけど多分言ったほうが全体が締まるみたいな時に生きると思うんですよね。作品世界を壊さないための、緩衝材というかサスペンションみたいな形でもあります。
佐渡島:たぶん、こういうのが一回前例として残っちゃうと、他の原作を持ってきたときにも、じゃあ舞台版キャラ半分入れてやりましょうみたいな風になってくと思うんですよね。今回一緒に組ませてもらうのは、リアル脱出ゲームの時と同じ感じだなと思ってて、リアル脱出ゲームも……
桜庭:あの時も早かったですもんね。
佐渡島:リアル脱出ゲームを主催してるSCRAPが、自分たちの公演ではじめて全国を回るといってた頃、『宇宙兄弟』とのコラボを持ちかけて、結果的に『宇宙兄弟』で全国回ってもらったんですよ。全国で3万人近く動員できました。参加者は『宇宙兄弟』の中で自分の体験として生き残れるかどうかってやって、最後泣いちゃった人が結構出たんです。それはマンガの泣くとは違う体験なんで、よかったなぁって思うんですよね。

桜庭:貢献度高いですよね(笑)
佐渡島:手助けになれたっていうのはありましたね。だから今回の『人狼TLPT X 宇宙兄弟』で演じる役者が、どういうふうにして原作を理解してアドリブでできるか、それを1コマやるにも13人必要だから複数やろうと思うと結構人数揃えてないとだめで、大変なところがあるけれど、やり切れると結構大きくなるなと思うんですよ。
桜庭:もちろんゲームのクオリティも下げられないので大変ですね。たとえば、普通の舞台みたいにビジュアル先行で、ビジュアルがいいからこの子配役しましょう、でも人狼はできませんってなってしまうと、必ず退場するので……。
佐渡島:おもしろくないわけですよね。
桜庭:だからある程度ちゃんと見せる人狼舞台として、こちら側のプライドのラインもある。もちろんうまいからといって、全然合わない人を六太に置くって言うのもない。それらを色々考えた結果の、一応うちとしてはベストメンバーに近い形ですよ。
佐渡島:たとえば例をあげると、任天堂が持ってるコンテンツが本当に強いのって、マリオだったりゼルダだったりってあんまり数もないんですよ。だから、人狼が大きくなっていくときも、延々と再演できるものをまずはまずは1個でいいので、強い形が必要ですよね。今は、結構ずーっと新作をやってるんですよね。
桜庭:そうですね、年に何本かは新作で、他にも新設定を考えてます。
佐渡島:それよりも再演で勝っていけるようにしていって、新設定は、もう練りに練って、「これはどうだ!」っていうのを1個で、それでそのものがまた再演で溜まっていくというような、コンテンツをストックしていくような形になってったほうがいいし、それをできる役者もストックしてくっていう風に仕組みが変わっていったほうがいいですよね。たとえばリアル脱出ゲームって、参加者個々とのやり取りの体験だから、絶対ストックできない。それに比べて人狼という劇は、本体がしっかりしている脚本がもうあれば、役者さんがいなくてもまた探せるというのはすごい可能性ですよね。
――今回は、ある種のトライアル公演になるわけで、ふたを開けてみなくちゃ分からないこともあると思いますが、また次回やろうっていうときに、今回の舞台版キャラを少し変えたり、あるいは原作のこのキャラを入れたほうが面白いかも、といったこともできる……
佐渡島:というより、オープニングの劇のあり方を壊したほうがいいよね……とか。まだ実際に見てみないと僕もどういう意見を持つか思いつかないんですよ。

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