ギャグマンガ日和

『舞台 増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和 デラックス風味』、脚本・演出 なるせゆうせいインタビュー

『舞台 増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和 デラックス風味』、脚本・演出 なるせゆうせいインタビュー

昨年、『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』がまさかの舞台化と言われて話題騒然、チケットは即日完売、客席を笑いの渦に巻き込んだ舞台が”デラックス風味”と銘打って、4月に”再登場”する。原作は一話完結型のギャグマンガ、『月刊少年ジャンプ』(集英社)で2000年1月号から休刊する2007年7月号まで連載され、その後は『ジャンプSQ.』にて連載中である。この舞台の脚本・演出のなるせゆうせいさんに昨年の手応えや”デラックス風味”の意味等を語ってもらった。

 

ストーリー仕立ての方が得意なんですが、むしろその方がいい

Q 昨年の舞台の手応えとお客さんの反応はいかがでしたか?

A ざっくり言うと・・反応はよかったです。(舞台化が)難しいジャンルだし原作はほぼ短編ですから、あれをどういう風に舞台にするか悩みました。原作ファンのお客さんにどう納得してもらうのか、悩ましいところでしたが、意外とよかったですね。僕は不安症で、いっつも不安を抱えている哀れな人なんですよ(笑)。

Q ショートコント集、次々と繰り出していくのかと思ったらストーリー仕立てだったんですね!

A 話、ありますね(笑)。

Q ストーリー仕立てにしようと思った理由は?

A ストーリー仕立ての方が得意なんで、むしろその方がいいかな、と。ショートコント集みたいに出来なくはないのですが、でも、それなら芸人さんがやればいいじゃないかと。役者がやる意味、舞台でやる意味を考えるとやっぱりひとつの軸が合った方が面白いし、軸があるからこそ、引き立ってくるものがあるんじゃないかと思いまして。ここだけの話、僕、驚くほど賢いもんですから(笑)、分析能力がたぶん長けてまして(自画自賛)原作を読むとパターンが全部わかるんです。作家のくせとかセンスとか、一回読むとだいたい取り込めるので、それがわかると、どういう風にやったら原作を崩さないようにストーリーに出来るかっていうのがなんとなく見えてくるんです。ギャグマンガに関しては、パターンの一つに、ダメな男がフラれるパターンが、原作にあるので、それを軸にした方が面白いかなと思ったんです。あとはファンから人気の高い聖徳太子や妹子、うさみ、クマ吉とかは出そうと思ってました。ただ、カオスな中にも時代設定が一応あるので、すべてをごちゃ混ぜにするというよりも時間軸を過去と現在に分けて多重構造にしようかなと。そうすることでちょっと深みも出るかもしれないし、深みが出た中で面白い事が出来るかな?と。

Q 例えて言うなら、ミルフィーユみたいな構造ですね。

A そう。特に原作がバラエティに富んでいるので、多重構造にした方が出せるキャラも増えるし、良さが出るんですよね。

Q フツオがダメダメだったのが試練を経て成長していくって言うんでしょうか……。

A 成長したかどうかはわかんない(笑)、あ、ちょっとだけした(笑)。

Q そこにいろんな話が串刺しになっていますね。

A そうですね、ひとつ軸があると差し込みやすいんです。そういう意味で軸を作ってそこから原作のポイントを入れていったって感じです。

Q ファンが期待しているシーンとか台詞とか、そういうのを上手に差し込む……。

A それはあると思います。原作モノをやらせてもらう上で自分の感覚としては「これ好きだな」っていう感覚は大事にします。それはファンの、そもそも僕が原作ファン第1号じゃないとやれないもの、実はこの作品は元々、僕がやりたくって集英社に話をしたところから始まったのと、そもそも自分の主観的な感覚として「これ、面白いな」と思って始めているので、ファンの感覚は自分の中で消化している、自分の感覚がファンの感覚と一緒になっていれば描けるものが出てくると思っています。

“バラエティ風味”はお菓子のキャッチコピーから、言葉の響きとして向いている

Q 昨年はチケットも完売しましたね。

A ありがたいですね。

Q 今回、満を持しての再演なんですね。なぜデラックス風味なんですか?

A そういうのプレッシャーですよね(笑)。ぶっちゃけ言えば、再演なんですけど、再演っていうと、なんか面白味ないですしね。「デラックス風味」ってのは、お菓子のパッケージからインスピレーションもらいました。”さらに美味しくなりました”みたいな~(でも)さほど味変わってない(笑)あるじゃないですか~”ちょっと美味しくなって新登場!”みたいな(笑)。”そんなに変わってねーだろう”って思うんだけど(笑)、この作品には、言葉の響きとして向いているなと、そういうお菓子のキャッチコピーから引用させてもらおうかなと。もともとの原作がバラエティ色がありますから、そういう意味での”デラックス風味”、”デラックス”じゃなくって”デラックス風味”、単なる初演を踏襲する再演ではない。まあ、そもそも舞台が倍ぐらいになるので、セットの作り方や空間の使い方が膨らみますし、その時点で否応なしにデラックス(笑)。必然的にデラックスになりますから(笑)。

Q 初演の博品館劇場はコンパクトで濃密な空間でしたから、それもよかったですね。

A それはそれでよかったんですけど、今回次につなげるための新キャラも出ます、松尾芭蕉と河合曽良という人気キャラ、初演は封印してたんです。今回はちょこっとだけ、”風味”として出しています。今後、もしシリーズ化するなら出てきて欲しい、今回だけちょっと風味を匂わせておこうかな、と。

Q 初演からずっと観ていれば、いろんなキャラが増えるのがわかる感じですね?

A その方がお客さんも喜ぶかもしれないですね。チラシのデザインもお菓子のパッケージの後ろに書いてある成分表みたいにしています。お菓子っぽいイメージ、バラエティ詰め合わせみたいな。

 

才能を引き出したい、何かやらかしてくれる人達です(笑)

Q 新しいキャスト、前回のキャストいらっしゃいますが、今回の俳優さんたちは?

A 宮下雄也とか磯貝龍虎とかはおなじみのメンバーですが、コメディアンっていうか、喜劇的なことが出来る人を選ぶというのは、キャスティングする上ではひとつのポイントですね。昔でいえば渥美清さんとかフランキー堺さんだったり。いまの時代にしかも若手で喜劇出来る人って少ない、その中でも喜劇、コメディアン、まあ風格があるというか匂いというか、コメディアン風味な方々招集した、っていうのはありますね。今回新しい人では阿部丈二さん、キャラメルボックスの中核を担っていらっしゃいますが、軸としては安定感があってしかも松尾芭蕉に顔が似てるし(笑)、出演者を代えることによって少し作品が締まる感じがします。演劇ファンにも観てもらいたいし、一般の人でも楽しめるようなものにしたいです。

Q 今回の見どころは?

A 全部がギア上げているので、みどころは全部です(笑)

Q お菓子全部食べてくださいっていうことで。

A そうそう(笑)。全部を食べて欲しいので、前説からギャグマンガ臭を出していこうかと。最初っからギア飛ばしていいこうと。それも含めて観て欲しいですね。

Q そう言えばカップラーメンも”さらに美味しくなりました”っていいますね?

A 言いますね(笑)、”さらに美味しくなった”と。あとは役者の仕掛け、役者が仕掛けてくることを僕は期待しているので~僕は引っぱって行こうっていうタイプの演出家ではないので、なるべくみんなの才能を引き出したい、上げることを重視していますので、彼らに自由にやらせたいし、出してくるもの、やっぱり舞台なので、それは面白い事ではないかと。毎回、同じ舞台はない、本人たちも飽き症なので~。僕も飽き症なんですけど(笑)。何か出てくるところを僕も期待しています。

Q 全公演、目が離せない、全公演観られないんですけど(笑)

A そうですね~みんな何かやらかしてくれる人達です(笑)、自由に!

 

なるせゆうせいなるせゆうせい
脚本家・演出家
1977年岐阜県出身。早稲田大学在中の1997年「劇団インペーダーじじい」を旗揚げし、トムプロジェクト新人賞、パルテノン多摩演劇フェスティバル特別賞など数々の賞を受賞。以後、自身が漫画原作をした「東京無印女子物語」を、谷村美月主演で映画にしたり、監督と脚本をつとめた異色の映画『不毛会議(石黒英雄主演)』を新宿バルト9皮切りに全国公開させるなど、活動の場を、映像や広告、漫画などに広げる。
ここ最近では『ギャグマンガ日和』『弱虫ペダル』などの人気原作に関わるとともに、『ハンサム落語』歴史漫才ヒストリーズジャパンなどのオリジナルコンテンツにも力を入れている。

 

■ゲストキャラ■
松尾芭蕉
松尾芭蕉

河合曾良
河合曾良

■場面写真■
ギャグマンガ日和

ギャグマンガ日和

ギャグマンガ日和

ギャグマンガ日和

ギャグマンガ日和

 

■公演データ■

『舞台 増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和 デラックス風味』
2016年4月6日(水)~4月10日(日)
AiiA 2.5 Theater Tokyo

※2016年2月24日(水)より 公演DVD絶賛発売中!
タイトル:DVD『舞台 増田こうすけ劇場ギャグマンガ日和』
本体価格:7,222円+税
収録内容:
2015年9月、銀座 博品館劇場にて公演された、舞台 増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和」がDVD化!公演本編に加え、特典映像を収録!

http://butai-gagmanga.com

©増田こうすけ/集英社
©『舞台 増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和 デラックス風味』製作委員会

取材・文・撮影(初演公演)/高浩美

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