エッグ・スタンド

【レポート】スタジオライフ『エッグ・スタンド』

エッグ・スタンド

舞台の幕開き、死体を見つめるラウル、そこにルイーズが通りかかる。「死んでるってどんな気分だと思う?」と言うラウル。基本的に原作通りに進行するが、舞台ならではのリアリティと虚構性、舞台上には特に何かがある訳でもなく、いくつかの箱が置かれているのみで、八百屋になっており、奥行きを感じる。ここは様々な場所に変化する。一転してキャバレーのシーンでは賑やかな嬌声が響く。刹那的な快楽を求める兵士たち、明日はどうなるのかはわからない。キャバレーの女性たちもまた、同じ、この一瞬の幸せと心地よい気分を求めに集う。そんなキャバレーで働くルイーズ、父親はどこかに行ってしまった。無機質な憂いを漂わせたラウルは無垢な少年だ。そして戦争を経験し、レジスタンス運動に身を投じたマルシャン、この3人は偶然に出会い、共同生活を送り、心通わせる。一瞬の煌めきと幸福感、それは本当に一瞬のことだ。音楽と照明と、そしてひとつひとつの台詞は、ただ重いとか、そういうものではなく、じわじわと心に染み入る。マルシャンは言う、「戦争は異常な怪物だ」と。しかし、物心がついた時から戦争があったら、どうであろうか。日常が戦争、ラウルの無垢な表情や態度はそういったことを想像させ、そして観客は心が痛くなる。殺人事件、ルイーズの出生、コミックを読んでいれば、どういう結末かは先刻承知、それでも何故か、ドキドキする展開。タイトルの“エッグ・スタンド”、ゆで卵を入れる、あの器、舞台には卵も何も出てこない。原作で語られる卵の中で死んでしまったヒヨコも出てこない。舞台上にしつらえた楕円形のセットは、様々なものを連想させるが、そこは観客に委ねられている部分だ。

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