【3.0レポート】『POWER OF VOICE ~朗読から落語、無声映画まで~』
登場したのは三宅健太、加藤英美里、ランズベリー・アーサーの3名。無声映画コーナーの始まりだ。上映されるのは『キートンのゴルフ狂』。活弁士の新たな形として、ライブで声を当てていく新しい時代の無声映画だ。
照明が落ち、ムービーが始まる。アーサーと加藤の軽妙な掛け合いに、三宅が見事なテクニックで切り込んでいく。声が映画に新たな力を加えていき、会場のあちこちから絶えず笑い声が聞こえる。楽しい。あっという間に約20分が過ぎてしまった。モノクロのムービーから声の力によって鮮やかな色が立ち上がっていくような思いにとらわれた時間だった。
しかし、演じている方としては緊張で綱渡り気分だったようだ。実演後、次の演目へのブリッジ部分で3人が登場した際の三宅のコメント
「活弁士の方が一人でやっていたのを三人で(声を)当てていくのがやっとでしたね。活弁士は一人で演じていたわけで、すごい技術ですよね」
や、エンデイングで本日の感想を問われた加藤が
「アニメ作品や外画の吹き替えと違って、タイムボードなしで絵を追って声を当てていくのはなかなか大変でしたが、貴重な体験でした」
とコメントしたのは、とても印象的だった。
続いて本日最後の演目『二十六夜まいり』の朗読だ。同作品は、俳優の武田鉄矢が実話をもとに書き起こし、黒井健の絵で絵本として出版された作品だ。
アーサーの呼び込みでステージに登場したのは、関俊彦、箸本のぞみ、本泉莉奈の3名。客席が期待感にざわめく。
しかし、スクリーンにタイトルが現れ、関がタイトルコールをした途端、その圧倒的な声力に会場は水を打ったような静けさに包まれた。スクリーンに映る黒井健氏の絵に合わせ物語が進んでいく。物語を告げる関の声が耳に心地よい。関の演技に優しく色を添えるのが、ちいちゃん役の本泉の愛らしさと、その母親役の箸本のやさしさだ。ちいちゃんの目を通して淡々と進む若い兵士たちと母子のやり取りが、せつなくて客席からすすり泣きの声が聞こえる。
関の豊かな演技力・表現力を通して鮮やかな景色が頭に浮かび、ああやはり声には色があるんだと強く感じた30分だった。
気が付けばあっという間に1時間半が過ぎ、すべての演目が終了していた。“POWER OF VOICE”確かに声には心を動かす力があると強く感じたイベントだった。
コラム
洗足学園音楽大学
洗足学園音楽大学は1967年に設置された神奈川県川崎市に所在する総合音楽大学。
伝統的な演奏家養成や作曲、バレエといったコースと共に、ジャズ、ロック、ミュージカル、現代音楽、音楽・音響デザインなどのコンテンポラリーなコースまで音楽全般に関わる多彩な学びの場・自由な発想で音楽を学べる環境を提供している。
2016年4月には声優アニメソングコースを開設、新たな分野の才能を育んでいる。
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。