『ダンガンロンパ THE STAGE 〜希望の学園と絶望の高校生〜 2016』脚本・演出、田尾下 哲さんインタビュー
ゲーム、アニメの世界の持つスピード感と夢の世界の舞台化は、表現の技術を磨けば新しい可能性がある
Q 今、ゲーム、アニメ、マンガ原作の舞台は非常に多く、昨年でも主立ったもので60~70作品近く、このジャンルの演劇的な可能性は?壮大な質問で恐縮です。
田尾下:ゲーム、アニメ、凄く壮大な世界観のものが多いですね。ヨーロッパでも日本のアニメはジブリだけじゃなくって『ルパン三世』とかもその国の言葉に訳されて、テレビで放映されたりしています。ゲームも、86年にアメリカに行った時、ゲームセンターに行くと既にスーパーマリオとかありましたね。無限増殖をやったら、黒山の人だかりになりました(笑)。国境を超えて、皆さんに愛される、このゲーム、アニメっていう日本の文化は、いわゆるクールジャパンの代表的なのもののひとつですが、何でそれが彼らにとって魅力なのかって言うと、絵が綺麗であることもそうですが、物語が壮大であること……そして、設定が細かいんです。アニメ、ゲームの原作者の方々が、もの凄いリサーチの上に、独自の世界観をイマジネーションで作りあげていて、唯一無二のものになっている……そこの魅力が圧倒的!ヨーロッパ等では子供がプレステをずーっとやっちゃって、教育上、問題になっている。アメリカのマッキントッシュ、スターバックスと日本のゲームが我々の文化をぶっ壊している、とか言われるんですけど、裏を返せば、それだけ魅力的だっていうことなんですね。
そのような状況下で、アニメ・マンガ・ゲームを舞台化する流れがここ3、4年増えていますね。生身の人間が、好きだったゲームやアニメのキャラクターの格好をしてしゃべる、ましてや、今回、松風雅也さんみたいに、ゲームやアニメで声を当ててる人が舞台に出てきちゃう……。「夢」ですね。そういうことが起きているのは凄いことなんです! でも、アニメやゲームだと画面上でシーンがどんどん変わっていきます。最近、映画もそうですが、そのもの凄いスピード感、これを舞台で、生身の人間、物理的な空間でどう表現出来るのか、っていうことが”勝負”になっていると思います。これがひとつの部屋で行われているものだったらいいんですが、『ダンガンロンパ』は、場所が教室もあれば、食堂も個室も、体育館もある、それをどうスピーディーに見せるか、です。ブロードウェイもそうですが、シーンの転換時において、お客さんを待たせることなく、どんどん次から次へと変えて描ける高度なスキルを持った演出家がいい演出家と言われています。つまり、しっかりとその多面的な構造、いろんな場面をストレスを感じないように、どんどんどんどん絵を被せて、継ぎ目なく見せていくっていうことを舞台で出来るならば、日本発の、この世界中に愛されているゲーム、アニメの持つスピード感と夢の世界の舞台化は非常に可能性があると思いますね。今回の『ダンガンロンパ』はホンがいいからこそスピーディーにやりたいと申し上げたんですけど、どんな作品でも、もの凄く可能性を秘めているんですよ。舞台でしか出来ない表現、映像と合わせたり、テクノロノジーで複雑につり上げたり、我々みたいに本当に愚直に身体だけで表現していく……いろんなアプローチがあると思いますが、舞台表現の技術を現場で開発して、磨いていけば、新しい表現の可能性があります。
この『ダンガンロンパ』に関しては映像表現ではなく、身体で表現することが作品の描く物語にはふさわしいのではないか、と思って取り組んでいます。お客様には「なるほど、こう来たか」って言って頂きたいのですが、それも、あくまでも原作を愛しているファンの皆さんの持っている世界観を損なわずに……。我々作り手の原作に対する尊敬と愛情が原点ですし、舞台化するにあたって、お客さんは「こういうもの、観たいんだろうな」と考えながら、そして自分も原作を愛する1人として「こんなの観たいな」っていうものを作っていきたいですね。
Q 最後に締めの一言を。
田尾下:『ダンダンロンパ』の世界観を愛している方、俳優さんのファンの方、ちょっと興味があるから観てみたいな、とか、いろんな方が観にいらっしゃると思うんです。ファンの方にも初めて見た方にも、この原作の持つ物語のメッセージと世界観、それは学級裁判や”おしおき”に象徴されると思うんですね。元々ゲーム原作ですが、それをしっかりと3次元に、本当に目の前で息をしている俳優さんが生の声でしゃべって物語として描く、手元のモニターで観るのとは違い、目の前で行われている物語として伝える……。超高校級の特別な能力を持った人達が集まって行われているコロシアイ生活、テーマは凄く重いです。”命を争う物語”だからこそ、命と向き合う、愛情、友情、正反対のおしおきであったりとか、人を糾弾する裁判とか、そういった真逆のものを使って、そこをしっかりとお届けして、皆様に感じて頂けたら嬉しいですし、自分もそういう風に感じたいと思っています。
田尾下 哲(たおした・てつ)
1972年兵庫生まれ、横浜育ち。第20回五島記念文化賞オペラ新人賞受賞。
ドイツ人演出家ミヒャエル・ハンペに西洋演劇、演出を学ぶ。2000年から演出家として活動。03年から09年まで新国立劇場に所属し、オペラ・チーフ演出スタッフを務めた。
09年、チューリヒ歌劇場『カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師』で、共同演出・振付を担当しヨーロッパデビュー。
近年の演出作は、神奈川県民ホール『金閣寺』、あいちトリエンナーレ『蝶々夫人』、ホリプロ『天才執事ジーヴス』、平幹二朗主演『王女メディア』、自作『プライヴェート・リハーサル』/『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』など。
今後は日生劇場『三銃士』/『後宮からの逃走』など、オペラ、ミュージカル、芝居の演出が控えている。
[出演]
本郷 奏多/岡本 玲・中村 優一・七木 奏音・松風 雅也・長田 庄平(チョコレートプラネット)・松尾 駿(チョコレートプラネット)・雨野宮 将明・ 池端 レイナ・宮下 雄也・村田 充・杉江 大志・石田 晴香・泉貴(THE HOOPERS)・森山 千菜美・佐藤 すみれ(SKE48)・岩田 華怜・松田 彩希・後藤 郁/山崎 静代(南海キャンディーズ)/神田 沙也加 風間 トオル(映像出演) TARAKO(声の出演)
[公演データ]
『ダンガンロンパ THE STAGE 〜希望の学園と絶望の高校生〜2016』
東京公演 6月16日~6月26日 Zeppブルーシアター六本木
名古屋公演 7月1日~ 7月2日 東海市芸術劇場
大阪公演 7月7日~ 7月10日 サンケイホールブリーゼ
神奈川公演 7月14日~ 7月16日 横浜・関内ホール
チケットはチケットぴあ(http://w.pia.jp/t/dangan/)他にて発売中!
©Spike Chunsoft Co.,Ltd./希望ヶ峰学園演劇部 All Rights Reserved.
http://www.cornflakes.jp/dangan/
取材・文/高浩美
演出家・アーティスト写真/ ©平岩亨
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