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『ホテル・カルフォリニア~HOTEL CALFORINIA~』

 原作はすぎむらしんいち、北海道の山奥の開業間近いリゾートホテルを舞台にしたクライムアクションギャグのコミック。ヤングマガジン(講談社)にて連載され、単行本は全5巻。土砂崩れ、社長の失踪、完全に孤立してしまった人々の奇想天外な共同生活を描いている。
 舞台に文字が浮かぶ。「北海道のどこか山奥」、物語はここで起こる。土砂崩れのシーン、プロジェクト・マッピングで表現、車が立ち往生、タイトルロールが浮かび上がる。一転してホテルのシーンに変わる。「社長!!」と叫びながら男が右往左往、恰幅の良いおばちゃん登場、男は「社長、見なかったか?」と女子更衣室に入り、案の定、「キャー!!」、とお約束感のあるドタバタから始まる。そこから再び、土砂崩れの場所に移る。車から降りてきたのは、いかにも強面な感じの3人組。そこへ白いスーツのまた強面の男が1人やってくる……。やくざ、ホテルにお勤めとはとうてい思えない従業員たち、何故か武士の格好をしたおじいちゃん等、”多士済々”なキャラクターが登場する。北海道なだけに熊も出没、予測出来ない展開が続くのである。常にハイテンション、すぐに撃ち合い、もうなんでもあり、だ。スーパー歌舞伎『ワンピース』のエース役で好演した福士誠治が演じるやくざの篠崎哲也はなかなかに手強いキャラクター、子分の健二(山田悠介)、「アニキー!」と叫び、篠崎を慕う。篠崎と犬猿の仲のやくざ・池田(なだぎ 武)の熱演、上はセーラー服、下は桃色パンツの浜崎(町田水城)はインパクトあり。鎧を着たおじいちゃん・金次郎(松尾伴内)、ぼけっぷりがとにかく可笑しい。それ以外のキャラクターも「これでもか」というくらい。従業員・虹男(太田基裕)は女装癖、何度も”お着替え”。バイオレンス、エロ、不条理、もちろん客席を使っての演出もあり、シュールな笑いが充満する。
 原作が発表されたのは、およそ四半世紀前、しかし、古びた感じもせず、作画のタッチもそこはかとなく感じさせる。俳優陣のテンション高い演技で作品のエッセンスをおよそ2時間、これでもかと見せる。流行りの原作ものばかりではなく、秀作を”発掘”しての舞台化もまた意味のあることではないだろうか。

(C)すぎむらしんいち/講談社

『ホテル・カルフォリニア~HOTEL CALFORINIA~』
2016年2月4日~2月14日
紀伊国屋ホール
http://www.nelke.co.jp/stage/HOTEL_CALFORINIA/

取材・文/高 浩美

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