【レポート】ミュージカル『ふしぎ遊戯〜朱ノ章〜』
ミュージカル『ふしぎ遊戯〜朱ノ章〜』
『ふしぎ遊戯』は1992年、『少女コミック』で連載され、全18巻。シリーズ累計発行部数は2000万部以上、1995年にはアニメ化もされた。古代中国の四神(東の青龍・南の朱雀・西の白虎・北の玄武)や二十八宿などを題材とし、主な登場人物の名前は二十八宿から取られており、主人公や国名も五行説に則っている。また、身体に文字があるが、これは里見八犬伝がルーツ。
物語は受験間近の中学3年生の夕城美朱とその親友・本郷唯が「読み終えた者は主人公と同様の力を得、望みが叶う」という序文につられて図書館の立ち入り禁止区域で見つけた四神天地書を開いて、その中に吸い込まれ、そこで額に鬼の字を持つ青年・鬼宿に出会い、奇想天外なアドベンチャーをする、というもの。
この作品の初の舞台化は2010年、その後2011年に朱雀編、2012年に青龍編、とシリーズ化、今回は初ミュージカル化となる。主人公の夕城美朱に田中れいな、朱雀七星士・鬼宿(たまほめ)を演じるのは初演から参加している平野良、また、同じく初演から出演している宮地真緒が朱雀七星士・柳宿(ぬりこ)を演じる。朱雀七星士・心宿(なかご)役の寿里も初演からの持ち役。その他、夕城美朱の友人・本郷唯に坂田しおり、朱雀七星士・心宿(なかご)に寿里朱雀七星士・星宿(ほとほり)に前山剛史、朱雀七星士・翼宿(たすき)に小谷嘉一、朱雀七星士・軫宿(みつかけ)に滝川英治と実力者が揃った。脚本・演出・作詞は超歌劇『幕末Rock』、舞台『戦国無双』等で手腕を発揮する吉谷光太郎。
幕開きはアンサンブルのダンス、そこへ夕城美朱、1冊の本を手にする。これが四神天地書であるのだが、この本のページを開いたとたんに夕城美朱と親友の本郷唯は本に吸い込まれ、異世界に。「望みが叶う」とコーラス、この物語の芯になる”設定”だ。ここで夕城美朱は鬼宿(たまほめ)に出会うが、この運命的な出会いをデュエットで歌い、踊る。まさに”恋に落ちる”瞬間をロマンティックに表現、楽曲もポップな印象だ。ミュージカル仕立てではあるが、とにかく歌が多く、オペレッタのような構成、ひたすら歌が入る。そして星宿(ほとほり)登場、いかにも高貴な雰囲気、この朱雀七星士が順番に登場するのだが、それぞれの”テーマ曲”が楽しい。井宿(ちちり)の歌はBW風で、刀や槍をステッキに見立てたアンサンブルのダンスが楽しく、また、翼宿(たすき)の曲は関西弁で昭和な雰囲気の楽曲、ここは聴き逃してはいけないところ。見どころはやはりアクションシーン、段差を有効に使ってさらにダイナミックに魅せる。平野良のジャンプの高さは必見、小谷のコミカルな動き(ポーズを決めて“静止”、ゲネプロのカメラマンサービスも!)、前山の品の良いアクションは、キャラクター研究の成果か、なかなかたおやかな雰囲気。とにかく、朱雀七星士たちが限りなくかっこよく、まさに”漢”な面々、情に厚く、まっすぐだ。なかでも軫宿(みつかけ)のエピソードは泣ける場面で、演出も思い切りよく情感を全面に出して熱い場面に仕上がっていた。アンサンブルのメンバー、ダンスで感情を表現したり、アクロバティックなアクションで舞台に躍動感をつけたりと、なかなか忙しい。バレエを基本とした曲線的なダンスと近年流行の直線的なダンスを上手く使い分けて物語や感情の輪郭をはっきりとさせる。ところどころに差し込まれる細かいギャグも楽しく、2幕ものの大作、原作を大きくはしょらずに丁寧にエピソードを描いており、異世界ファンタジーでありながら恋愛模様もしっかり入った秀作であった。
田中れいなはキュートなルックスを生かした役作りで元気で仲間を大切に思うヒロインを好演。坂田しおり演じる本郷唯は複雑なキャラクター、親友を裏切る複雑な役どころを細かい表情や佇まいで表現、今後の活躍が期待される。平野良は当たり役で、初演から演じ続けているのもよくわかる。また、宮地真緒も初演からの持ち役、可愛い雰囲気を残しつつ、ボーイッシュな中性的な持ち味が生かされていた。寿里はクールな敵役がよく似合う。カンパニーもよくまとまっており、また物語も長いので、ミュージカル版の続編も期待したい。
なお、ゲネプロ前に囲み会見があった。主演で座長の田中れいなは「”アイドルがなんで主演なんだ”って言われないように低姿勢でいくようにしていました。引っぱっていくより、毎回稽古場にお菓子を持っていって配ることで仲良くなろうとしていました」とコメント。演技については「本格的な俳優の方たちから学べることがいっぱいありました」と語った。制服に関しては「お団子ヘアは普段しないですね。コスプレ好きなので抵抗ないし、嬉しいです」とコメントした。
平野良は「初演から参加しています。今回はミュージカルなので広がりや深みが出て、表現が広がっているのが新しいところです。初演の頃26歳だったのですが、今32歳。鬼宿は17歳なので、演出家にももっと若くしてくれないかと言われます(笑)」とコメント。原作ファンの宮地は「柳宿は特別。男とか女とかを凌駕した存在、そんな柳宿になれることが幸せ」とコメント。初演から参加している寿里「新しいキャストが入りまして……いろんなものが新しくなっています」とこちらもPR。坂田は「難しい役で悩みながら稽古してきました」とコメント。前山は「鬼宿、美朱、星宿の三角関係が重要ですので、美朱や仲間に対する想いを歌に乗せられたらいいな」と語る。年齢設定は鬼宿は17歳で夕城美朱、本郷唯は、原作設定はなんと中学3年生、舞台ならではの突き抜けた演技で”年齢問題”を吹き飛ばしてくれた。
[出演] 田中れいな、平野良、坂田しおり、寿里、前山剛久、宮地真緒、小谷嘉一、滝川英治、橘龍丸、服部翼、富田大樹、栗生みな、我善導、藤宮潤
[公演データ]
ミュージカル『ふしぎ遊戯~朱ノ章~』
2016年4月8日~4月17日
池袋・あうるすぽっと
http://www.39amipro.com/fushigi-shu/
©渡瀬悠宇/小学館 ©amipro
撮影/洲脇理恵(MAXPHOTO)
取材・文/高浩美
■過去記事
・ミュージカル『ふしぎ遊戯~朱ノ章~』 https://stagenews25.jp/?p=951
・『ふしぎ遊戯~朱ノ章~』ビジュアル公開!! https://stagenews25.jp/?p=1249
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