舞台『クジラの子らは砂上に歌う』、崎山つばさ、五十嵐麻朝インタビュー
舞台『クジラの子らは砂上に歌う』、崎山つばさ、五十嵐麻朝インタビュー
梅田阿比原作の『クジラの子らは砂上に歌う』 (秋田書店「月刊ミステリーボニータ」連載中)、2013年より連載が開始され、現在、単行本は既刊6巻。『このマンガがすごい!2015』オンナ編において10位にランクイン。さらに『次にくるマンガ大賞』にノミネートされている。作画の繊細かつ圧倒的なタッチと空気感、描かれている世界、登場人物たちの心の機微が読者を惹き付ける。
砂が全てを覆い尽くす世界で、砂の上に浮かぶ巨大な漂泊船“泥クジラ”は、農園も工房も貯水池もあり、 自給自足を行える浮き島のような場所となっている。 住人たちは感情を発動源とする情念動(サイミア)を使える「印(シルシ)」と呼ばれる短命の能力者と、 能力を持たない⻑寿のリーダー的存在「無印(むいん)」がおり、513人が共に生活していた。 何故、彼らが砂の海をさまよっているのか。「外界から閉ざされた“泥クジラ”で短い一生を終える」 その運命を受け入れる主人公チャクロたちは、ある日流れてくる「島」で少女に出会う……。
この作品の初の舞台化、本読みを終えた3月某日、スオウ役の崎山つばささんと団長役の五十嵐麻朝さんに作品のことや演じる役柄、お互いの印象等について語って頂いた。
「スオウは誰かのために任務を果たす人」(崎山)
「演出家さんと相談しながら団長役を掘り下げたい」(五十嵐)
Q 原作を読んだ感想は?
五十嵐 :少女マンガらしい表現がなくて、普通に男性でも全然見れちゃう。生と死がテーマなのかな?世界観がファンタジー、非日常的で、これは舞台化も大変じゃないかな?と。
崎山:僕は自分とかけ離れた世界だと思ってても、ちょっとどこかで考える、自分を重ね合わせてもいいところがあります。感情がない世界と感情がある世界と、”どうなのかな”と感じつつ、”感情がなければ、こんな思いはしなくていいのに”とか……ね。感情があるからこそ、こういう仕事をしてても楽しいと感じる面もあって、自分とかけ離れている部分と重ね合わせる部分が混同して、そこから徐々に引き込まれていく……世界観が独特っていうか、マンガも凄くて、しかも繊細な絵で、そういう作品を舞台で出来るのは、楽しみでもあり、ワクワクしています。
Q ご自身が演じる役柄についてですが、五十嵐さんは団長で、実力はバッチリの役ですね。
五十嵐:はい(笑)団長見て思ったこと、彼は笑顔が凄い眩しいんですよ~。だけど、笑顔の眩しさの中で吐く言葉が~誰よりもえぐいこと吐いていて……なんでそんな言葉を笑顔で言えるのかな、と。最初は団長って感情ないのかな?って……。
Q 不思議な役ですよね。
五十嵐:はい、不思議な役なんですけど、彼の中には何かがあって今の団長がありますから、そこを詰めて役作りできたらいいなと思います。演出の松崎さんに相談しながら、団長の過去も掘り下げていきたい。一緒につき詰めたいなと思っています。
崎山:スオウは自分自身が無印で、その泥クジラの印のある人々のことを思って嘆き、自分自身よりも誰かのために任務を果たす人なんです。その彼が時期首長となり、自分が感情を出したい部分でも腕組みをして抑えたりとか……。本当に心の奥底が美しくって、素敵だし、スオウを愛せると思います。そういう部分は自分でも研究して近づいていけたらなと思っています。
「その役の方が読んでくれると役に息吹が入る」(崎山)
「30数名が力を合わせて最高の作品に」(五十嵐)
Q 今日は本読みだったんですよね?
五十嵐:本読みやって驚いたのは、キャストさんが30数名いらして……感想としては、本当に世界観が、思いっていうんでしょうか、深過ぎて……お客さんも、これ淡々とやってたらつまんないなと思います。だけど、ここから演出が入って稽古が順調に進んでいくとたぶん、最高の作品が出来あがるんじゃないかと。それは演出家さんも含めて、30数名が力を合わせて本気出せば、最高な、とてもいい作品になるといいなと思うんです。あと、僕にとって初めてお会いするキャストさんが多かったので、”あ、この人の声、こんな声なんだ~”とか。そういうのも含めていろんな刺激があって、これからの稽古が楽しみです。
崎山:自分で台本読むよりも、今日の本読みでその役の方が読んでくれて、役に息吹が入るっていうんでしょうか、生の、その瞬間に感じたものがありました。自分としては、スオウは”こうあってこう思うんだろうな”って思っていても、実際に役の方と一緒に読んでみると「こういう風に思うかな?」とか「(自分が思ってたのと)ちょっと違っていたな」とか「本当はこう思っていたのか」っていうのが凄くありましたね。これから稽古が始まると違ったアプローチでスオウを作っていけるのかな?と思いますし、今日、自分で作ろうと思っている部分プラス他のキャストさんからもらうものもあったので、明日からの稽古が大変楽しみです。
Q 一人で台本読むのとキャストさんが揃っての本読みは本当に違いますよね。
2人:もう全然違いますね~。
五十嵐:キャッチボールじゃないですか~感情が入ってきたものに対して、こっちもまた”1で返すのか、2で返すのか”って……一人で読んでいると、どうしても自分vs自分になってしまい、他の台詞を全部自分の気持ちで言っちゃうんですね。でも他の役者さんは全く観点が違うので「こういう捉え方してたんだ~」ってね。
「(五十嵐さんは)なんか~アニキ肌!」(崎山)
「(崎山さんは)役について追求していそうなイメージ」(五十嵐)
Q せっかく2人でいらっしゃるので、それぞれの印象は?
五十嵐:初めまして、なんですよ~。
崎山:僕は五十嵐さんの舞台観てるんです。舞台『戦国無双 関ヶ原の章』を見せて頂きましたが、でもそこでご挨拶はしていなかったんですね。だから個人的には知ってはいたんですけど……今日、顔合わせの中で、意気込みを言うところで~ユーモアっていうか~面白い方なのかな?と(五十嵐、笑う)……思ったし~、うん、なんか~アニキ肌!凄く感じましたね。
五十嵐:基本、僕はボケなんですよ~。
崎山:あ……そうなんですね(笑)。
五十嵐:ほかの演出家さんに言われたんですけど、「五十嵐はボケだから~」って。
崎山:で、僕もボケなんですよ(大笑)、ボケボケになっちゃう(笑)
五十嵐:(大笑いしながら)ボケボケの方が楽~。
Q お互いにボケ同士。
五十嵐・崎山:ね~(笑)。
五十嵐:初めて会って~、第一印象、僕はなんか、彼はボケには見えなくって、しっかりして、ちゃんと役について追求していそうなイメージだったんで……。
崎山:合ってま〜す(大笑)。
崎山:仲良くなりはじめたら、僕も人見知りしないんですけど~。割と稽古の中盤ぐらいあたりで~急にしつこくからんだりするかな?お互いに~。
五十嵐:今は台詞覚えたりとか、余裕がまだ、ね。
崎山:そうですね。でも、本当に仲良くして頂けたら、嬉しいかな?と。
五十嵐:(笑)
崎山:と、思っております。
2人:(大笑)
「共演したいなと思われる俳優になりたいです」(崎山)
「役者という仕事、やりがいがあるっていうよりも、生き甲斐を見つけた感じです」(五十嵐)
Q ここではインタビューした俳優さんに共通の質問をしています。俳優になったきっかけと、もし、あれば、目指す俳優像。
五十嵐:もともと、モデル出身で、それから今の事務所に移籍したのですが、役者になるつもりはなくって、ただ、お仕事で役者の仕事をしていたんです。そこから映像の仕事が入ってきましたが、もう、本当に何も出来なくって何も知らなくて、ルールも何も、しかも台詞覚えてないのに現場に行って、何回もテイク撮って、凄い惨めというか、悔しい思いをしました。それから舞台もやるようになって、たくさん怒られて、もう、役者やるのが大嫌いだったんです。やっていくうちに、どんどん”役者沼”にハマってた自分がいます。ステージに立ってる自分の、本番の緊張感、あの緊張感を味わったら、芝居やめられないんじゃないかと、と思うくらい。きっかけはやっぱり、怒られてからですね~誰も教えてくれないし。自分を応援してくれるファンの方も徐々に増えていって、役者っていう仕事がやりがいがあるっていうよりも、生き甲斐を見つけた感じです。中学生の時に好きだった役者さんがジム・キャリーで、もう、(当時)役者になりたいっていうのはないんですけど、ジム・キャリーの作品は全部観るようになりました。それからちょっと年齢がいってから、松田優作さんの作品、全部観ました。こういう人になりたいっていうのは、正直、今はわからないんです。もちろん、ベテランの俳優さんも上手い人はとても上手いんですけど、でも、やっぱり、自分は自分でしかないから~”こういう存在でありたい”っていうイメージはありますが、「誰々さんみたいに」っていうのはちょっと描けていないです。
崎山:はい、僕も五十嵐さんと似てる部分があって、僕は雑誌のモデル、読者モデルだったんです。何度かやらせてもらえて、それから今の事務所に入りました。事務所の先輩方の舞台を見せて頂く機会がありまして、「こういう役、僕も演じられたらいいな」って~そこから始まりました。だんだん、役者っていう道に興味が沸いてきたっていうのはあります。他の方のお芝居を観て感銘を受けたのは何度かあります。で、目指す俳優像は……映画は凄い好きでたくさん観るんですけど、「(この方と)共演したい」っていう、のが結構あります。あと、「こういう役、自分も出来たらいいな」というのもありますね。自分もそういう風に共演したいなと思われる俳優になりたいです。
Q 最後に作品PRを。
五十嵐:この作品はファンタジーだとは思いますが、人を守るためには時には人を傷つけなければならないのではと……でもそれは儚いことであり、現実に起きたらそうなってしまうし、誰かを守るために、そんな繊細な作品です。あと僕の役柄ですが、本当にかっこいい役を頂いたので、お客様を魅了出来るような、要するに頑張るので(笑)、観に来てください!
崎山:『クジラの子らは砂上に歌う』っていう意味がどんな意味なのかがこの作品に隠れていますし、テーマでもあります。観に来てくれた方はそれを「こういうことなのかな?」と感じてもらえるような作品にしたいし、男性、女性問わず、楽しめる作品だと思います。是非、泥クジラの神となって頂いて~僕はスオウとしてその民を幸せにすることが使命だと。全力で頑張っていきたいなと思っております、ハイ!
崎山つばさ(さきやま・つばさ)スオウ役
1989年11月3日生まれ。千葉県出身。
土星人☆ドットとして舞台『CHaCK-UP』シリーズに出演。主な出演作としてTV『アルジャーノンに花束を』(TBS系列)、舞台『孤島の鬼』、舞台『ノラガミ』―神と願い―、ミュージカル『Dance with Devils』等に出演。今後、ミュージカル『刀剣乱舞』~阿津賀志山異聞~(5/27~6/26東京・大阪・京都公演)が控えている。
五十嵐麻朝(いがらし・まあさ)団長役
1985年1月31日生まれ。青森県出身。
テレビドラマ『ろくでな しBLUES』、『トッカン』、『私のホストちゃん』、映画『図書館戦争』、『潔く柔く』、『アキラNo.2』、『MONSTERZ』等に出演。さらに舞台『ニンギョヒメ』、『戦国無双』、『薄桜鬼』、『Anchor』、『私のホストちゃん THE FINAL ~激突!名古屋栄編~』『美男高校地球防衛部LOVE!活劇!』出演など多方面で活躍中。
【出演】赤澤燈/前島亜美(SUPER☆GiRLS)/山口大地/崎山つばさ/碕理人/佐伯大地/宮﨑理奈(SUPER☆GiRLS)/大野未来/五十嵐麻朝 他
舞台『クジラの子らは砂上に歌う』
2016年4月14日~4月19日
AiiA 2.5 Theater Tokyo
http://kuji-suna-stage.com/
©「クジラの子らは砂上に歌う」舞台製作委員会
取材・文/高浩美
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