残響のテロル

PREMIUM 3D STAGE『残響のテロル』ナイン役・松村龍之介インタビュー

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 2016年、PREMIUM 3D STAGEと銘打って『残響のテロル』が舞台化される。2014年7月から9月までフジテレビ『ノイタミナ』枠で放送されたテレビアニメ、キャッチコピーは「この世界に、引き金をひけ。」。
 スタイリッシュな映像、高校生がテロを起こすというインパクトのあるストーリーで話題になった作品である。
 2015年の舞台『攻殻機動隊 ARISE:GHOST is ALIVE』では演劇史上初の3D演出で話題を呼んだが、この作品もまた3D演出になる。3D演出は2度目となる松村龍之介さんに俳優の立場から3D演出初体験の感想や演出家のこと、今回の作品の役作り、また俳優を志すきっかけについて語ってもらった。

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「3D演出は斬新、自分の感覚をフルに使わせてくれました」

Q 今回の『残響のテロル』も3D演出ですが、昨年の舞台『攻殻機動隊ARISE:GHOST is ALIVE』で演劇史上初の3D演出を体験してますが、どんな感じでしたか?

A 舞台上でお芝居している時は実感はないんですが、稽古中に共演の方と一緒に3Dを拝見しました。普段観ている演劇からは体験出来ない臨場感、迫力も違いますし、見え方も違います……普通なら近ければ近い程観えやすいのですが、3Dは関係なく目の前に迫ってくる、凄く新しくて驚きました。生身の人間が芝居してて、映像との融合、斬新だな、と思いました。『攻殻機動隊』自体が電脳世界だったり、サイバーだったり、これが(3Dと)ぴったりだったし、自分がこの世界に入り込んでる、この世界にいるという錯覚してしまうくらい、自分の感覚をフルに使わせてくれる、それ以上に、そこにいるという感覚は本当に新しいと思いましたね。

Q お友達も観劇に来ていたと思うのですが、反応は?

A 月並みではありますが、「凄かった」とか「びっくりした」とか「面白かった」とか。芝居している側からすると、客席では皆さん3Dメガネをかけているんで、どこ観てるのかはわからないんですが、食い入るように観てくれて下さってるのはわかりました。カーテンコールは凄かったですね。

Q 希有な体験でしたけど、次回公演も3Dですね。

A はい。楽しみです。

Q 演出の奥秀太郎さんは今回で3回目ということですが、どんな演出家さんですか?

A いい意味で他の人と違う、ちょっとプライベートが不思議な人なんですよ、食べ物とか服装とか。本当にこだわりがある方なんです。そういう方だからこそ、奥秀太郎さんなりの独特の世界観、センスがあって、毎回毎回、いろんな発見があります。「こういう捉え方をするんだ〜」とか。自分自身役者としてもとても刺激になりますし、一緒に仕事すればするほど、もっと奥秀太郎さんのことを知りたくなりますね。どういうことを考えているのだろうかな?と、実現させようとしている世界、これの力になれればいいな〜と思いますね。初めて3D観た時の感覚っていうんでしょうか、その新鮮さとちょっと似ているかもしれないです。今まで出会ったことのない人物です、一言では言い表しづらいんですけど、魅力的な人ですね。

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「『残響のテロル』のナインは多くを語らず、闇がある、ここまで深い主人公は初めてです」

Q 今回の作品、『残響のテロル』の主人公のナイン、難しい役どころですね。

A そうなんです。自分からは言わない人物、例えば”100あったら100は絶対に言わない、10も言わない”人物ですね。言わない分、自身の根底にあるものが凄く深い。それを感じさせない強さや信念を曲げない強さっていうのがある。それをどう舞台上からお客さんに伝えるか、100%伝えるのは不可能かもしれませんが、観客はどこまでナインの感情を汲み取ってくれるか、僕は全部伝えなくてもいいと思っています。観にきて下さったお客様一人一人が、いろんな解釈を持ってくれたら、ナインはどういうことを考えてどういうことをするんだろうかと。謎を投げかける、ある意味挑戦的な感じにしたいですね。

Q アニメでは断片的に生い立ち、過去が描かれていますよね。アテネ計画の犠牲者であり、ツエルブと一緒に孤児院から逃げたんだけど、一人、逃げ切れなかった子がいた……。

A (ナインは)本当に謎が多い人物で、それをどこまで舞台で見せるか、全部見せることは出来ないですが、謎が残ってもいいと思うんですね。(テロリストを扱っているので)社会的には凄く敏感なテーマですし、この作品で普通に僕たちの暮らしている中では味わえない非日常的な体験や生い立ち、そういう人物を演じるのは勉強になります。自分の全てをぶつけてナインを演じます。

Q ナインはテロリストですからね。クールで、緻密に計算をして爆弾を仕掛けて……それを刑事が追いつめていく。
沢田研二さん主演の『太陽を盗んだ男』(※)はご覧になったことはありますか?この作品もテロリストを扱っていますね。

A はい。

Q アパートの一室で爆弾を粛々と作っている……。

A そうですね。ナインとツエルブだったら、どっちかと言うとツエルブかな〜って感じですよね。教師をきちんとやりつつ、まあ”ちょっと変な先生だな〜”ぐらいで、でも目的に向かって進むのはナインと共通していますね。

Q 設定も謎っぽいところがありますし。ナインみたいな役どころは今までなかったのでは?

A ここまで暗い役っていうのはなかったですね。今までは熱い役だったりとか〜いろんな舞台に立たせて頂きましたが、多くを語らず、ここまで闇がある、深い主人公は初めてです。自分が元々ネクラな人間なんで(笑)。そういう暗さは自分の中にあるかな?って。

「俳優は自分がひとつのコンテンツ、お客さんを感激させる素晴らしい職業です」

Q がらっと質問変えますが、俳優を目指したきっかけは?

A ちょっと話が長くなってしまうのですが、今は大学4年生で、来年卒業です。岩手県出身で高校まで岩手県にいました。実は経営者になりたくて……両親が接客業に就いておりまして、人を喜ばせる仕事がしたくて、それで接客業……色々考えて、そういう会社を経営して、お客様を喜ばせようと。起業して、まあ、そういう会社を立ち上げたいな、と考えていたんです。それで大学で勉強するために上京して経営学科に入って勉強しようと。接客……商品だったり、サービスだったりそういうものを通してお客様を満足させたいなと。そういうことに重きを置いていて、考えていたんです。ふと、あるきっかけで舞台を観まして。俳優っていう仕事に感動いたしました。俳優っていうのは自分がひとつのコンテンツで、自分のやり方次第で観にきてくれるお客様のいろんな感情が引き出せる、喜ばせたり、悲しませたり、そういうことが出来る仕事は素晴らしいな、と。そこからですね、俳優を目指すようになったのは。それからお芝居を勉強するようになりました。俳優ってひとつの”商品”ですよね、応援して下さる人がいるわけですから。観に来て下さるお客様一人一人に(自身の)世界がある、仕事環境だったり、そういうお客様を感激させる、僕という俳優を通して生活が豊かに充実してくれたら嬉しいです。このサイクルが凄く素晴らしいな、と。かつてはこの仕事をするっていう考えがなかったので、自分でもびっくりです。お客様のいろんな感情を引き出せたらいいなと思います。

Q 憧れ、目標とする俳優さんは?

A 渡辺謙さん。僕、渡辺さんの眉毛のラインが好きなんです。それと立ってるだけで絵になる! あの方のここで語る力(目と眉毛を指して)、こう、目で語る、台詞を発しなくてもここで語れてしまう!観ている人を感動させられる、そのお芝居の力!語りすぎない、深みがありますよね、憧れです!

PREMIUM 3D STAGE『残響のテロル』
2016年3月2日〜3月6日
Zeppブルーシアター六本木
http://www.negadesignworks.com/terror/

松村龍之介(まつむら・りゅうのすけ)
1993年生まれ。岩手県出身。主なる出演舞台作品『戦国BASARA3-咎狂わし絆-』『戦国BASARA4』舞台『弱虫ペダル』インターハイ篇 The WINNER』舞台『BLOOD-C~The LAST MIND~』『戦国BASARA vs Devil May Cry』『武士白虎〜もののふ白き虎〜』『攻殻機動隊 ARISE:GHOST is ALIVE』 PREMIUM 3D STAGE『残響のテロル』
4月は舞台『黒子のバスケ』が控えている。

※『太陽を盗んだ男』(1979)原爆を作り上げた中学教師が国家を相手に理不尽な要求を突きつけていく犯罪サスペンス。

文章:高浩美

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