• 2.5→3
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TOHOKU Roots Project 『想稿・銀河鉄道の夜』

今作品は宮沢賢治の代表作である「銀河鉄道の夜」を北村想が戯曲化し、「想稿・銀河鉄道の夜」として現代に蘇らせた作品である。
東日本大震災から五年、人々が見て、感じてきた震災の記憶は風化しつつある。しかし、被災地、被災者の傷は深く、その爪痕は目に見えなくとも確かに残っている。そんな中でもう一度、目に見えにくい東北の人々の想いや葛藤を世間に伝える役目を今作品は担っている。そのため役者も東北出身者で揃えられ、映画やドラマに多数出演している岩手県出身の女優・小松彩夏が主演の一人のジョバンニを熱演。さらに八重の桜などドラマ、映画、CMなど多方面で活躍している福島出身の女優・佐藤みゆきがもう一人の主演でカムパネルラを演じている。その他の役者も東北出身であり、スタッフも東北出身。作品を通して東北へ一歩踏み出す勇気を届けたいという想いがキャスト・スタッフ一同からひしひしと伝わってくる。

物語は「銀河鉄道の夜」をベースにし、印刷所で働きながら貧しさと懸命に戦うジョバンニとジョバンニの唯一無二の理解者であり親友のカムパネルラとの別れと旅立ちを生と死を絡めて描いている。ジョバンニはクラスメイトにいじめられても親友のカンパネルラが寄り添い励ましてくれるから、この世界で生きてこられた。彼の唯一の救いが、親友の存在だった。そして二人は星のお祭りが始まる日に銀河鉄道に出会う。
星のお祭りの日、カンパネルラに会ったジョバンニは彼と駅で待ち合わせをする。駅についてカンパネルラと話すうちにシスター、考古学士、猟師、車掌、家庭教師と女の子など多彩な人物が次々に駅の待合室にやってくる。彼らもまた汽車に乗って“ほんとうのこと”求めにいく。どこまでも一緒にいこうと約束した二人も銀河鉄道に乗ろうとするが、乗れるのはカムパネルラだけ。どこでもいける切符を持つジョバンニはまだ乗車することができない。
ここから先にジョバンニは進むことができない。銀河鉄道に乗れなかったジョバンニは、その後親友・カムパネルラがクラスメイトを助けて水死したことをようやく知る。そしてジョバンニはカムパネルラにほんとうのことを探すと誓う。カムパネルラがほんとうのことを探していたように。そしてここから始まる「ほんとうの幸い」を探す旅が……。

場面ごとに歌い上げられる美しい曲の色彩は豊かで鎮魂歌のような曲調からゴスペル風の歌まで様々な曲が歌われる。その姿もまた物語をよりファンタジーにさせる。

また、見どころとしては台本を一読すると分かるのだが、台本には特定の人物のセリフしか書かれていない。セリフのない他の役者たちはほとんどアドリブに近い演技をしなければならない。しかし、その方が演技の自由度が上がり、細かい演技が妙に現実味を帯び、全く違和感のない空間が生まれる。特に授業中のシーンでは生徒たちのセリフは被ることがあった。しかし、かえってその空気を読まないセリフによって授業中の生徒たちの密談に見えてくる。
アドリブかセリフか区別がつかないほどの多彩な芝居が繰り広げられることで、
本当の授業のように生徒一人一人の意思がそのまま出ているのだ。くだらないことを言う生徒、真面目に考え込む生徒、夢想する生徒など確かに色んな生徒がいる。そうした自由な演技こそが、本当に伝えたいことを素直に届けられることに繋がっている。

今作は残された者、残していった者の想いが駅の待合室を起点に描かれる。
それぞれのキャラクターが抱える想いがコミカルに、時にドラマチックにどんどんと移り変わって表現される様はまるでおとぎ話を見ているかのよう。
だが、その想い、感情を通して人はたくさんの死の上で成り立っていることがわかる。
食べるために、生きるために人は多くの生き物命を奪っている。
そして誰かの死を乗り越えて人は生き続けなければならない。
それが残された者の義務であり、残していった者への弔いなのだと教えてくれる。
舞台に込められた想いは銀河鉄道に乗って東北の人々にきっと届くだろう。

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「想稿・銀河鉄道の夜」
原作:宮沢賢治 脚本:北村想 演出:小池竹見(双数姉妹)
3月6日(日)~13日(日)東京:あうるすぽっと
3月20日:いわきアリオス中劇場 
3月24日:南相馬市民文化会館ゆめはっと
3月27日:東松島コミュニティーセンター
4月1日:仙台イズミティ21小ホール
4月3日:盛岡劇場

全公演チケット発売中

公式サイト
http://tohokurootsproject.wix.com/tohoku-roots-project

写真:公野研究室 冨田祐太郎
取材/文:公野研究室 喜多村太綱

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