30-DELUX Perfect EDITION『SHAKES』

【オフィシャルレポート】大阪公演 30-DELUX Perfect EDITION『SHAKES』

30-DELUX Perfect EDITION『SHAKES』

【大阪公演オフィシャルレポート】

30-DELUX Perfect EDITION『シェイクス』
グループの持ち味を十二分に注ぎ込んだ、完熟度の高い舞台作品。

演劇集団・30-DELUXが2007年に上演し話題を呼んだ『シェイクス』。
脚本と演出を一新し、完全なるリメイク作品として作り上げられた、
モチーフの一つである「シェイクスピア」を彷彿とさせるような
喜劇と悲劇を併せ持ったその完熟度に驚かされる。

大阪公演の会場である「インディペンデントシアター2nd」は小振りな劇場。
場面転換の大道具は一つ。扉も木枠がむき出しになっているが、
その質素な背景が却って「劇場でのできごと」を演出、リアルさを感じさせる。
また、役者一人ひとりの演技に目を配ることのできる空間になっていることも興味深い。

冒頭は、30-DELUXの持ち味であるダイナミックな殺陣シーンのほか、
コメディも取り入れた賑やかな場面で掴みはOK。
中でも主演・鯨井康介(江口久之役)が見せたスタイリッシュな剣さばきは
本人のスラリとした体型も相まって一際目立つ存在だ。
コメディの演技でも顔の筋肉を十二分に使った表情の豊かさは必見だ。
また、宝塚歌劇団出身の蓮城まこと(苫米地蘭子役)が3回転のターンを披露するなど、見事なダンススキルを発揮。
同じく宝塚歌劇団を退団後、舞台初出演となる矢吹世奈(江口メイ役)はお芝居で魅せる役柄を魅力的に。

30-DELUX Perfect EDITION『SHAKES』

舞台は「シェイクスピアランド」の現場責任者である江口久之がこの物語の中心で展開される。
「一筋縄ではいかない」舞台人たちによる会話の応酬のコメディアスの部分と、主人公江口が見る「予知夢」に関わる過去などを描くパートのから物語は進んでいく。
ここでも役者陣の演技力が光っており、コメディとシリアスで全く違う表情を魅せる。
30-DELUXが掲げるテーマ「笑って、泣けて、考えさせられて、カッコいい」がそのままダイレクトに伝わってくる。
コメディの部分で活躍していたのは先に紹介した鯨井だけでなく、柏進(凪川来雄役)にも注目したい。
彼独特のしゃがれ声と、細身でありながらしっかりとしたスタイルがいかにも、
演じる役柄がもつ「大御所感」にぴったりだ。
さらに江口が「シェイクスピアランド」のオープニングアクトが完成目前というところで、役者と演出家が対立するシーンでは銀ゲンタ演じる小手形イチロウの役割がおもしろい。
役者の代表である倉木ユタカを皮肉まじりに持ち上げつつ、自分の地位を上げていく腹黒さは、「こんな人いるよね」というリアリティを生んでおり、この作品が現代劇であることを再確認させる。

30-DELUX Perfect EDITION『SHAKES』

シェイクスピア作品のオールスターが登場する劇中劇において、小手形は「ハムレット役」倉木は「マクベス役」、さらにここで江口の友人・匠が登場し、
江口の「予知夢」パートの真相に迫る。
ここの心理的描写はぜひ劇場で観てほしい!
登場人物それぞれのセリフがシンクロ、前半と後半のつながりを意識して観ると面白さは倍増する。

クライマックスの殺陣のシーンでは90年代エレ・ポップ風の楽曲をあわせてくる。
登場人物の一人だけにスポットを当てるのではなく、脇役のドラマも緻密に描いて「オチ」をつける様子は、登場人物が何人もいるアドベンチャー・ゲームの手法、アプリゲームに親しむ世代であればすんなりと入っていける。
ここは「誰にでもわかりやすく」をモットーにしている30-DELUXならではの粋なはからい。

物語のラストには後日談もあり、「え、この人こんなことになったの!?」と感想を抱くこと必須。
それぞれがシェイクスピア悲劇のような「バッドエンド」ではないのでご安心を!

30-DELUX Perfect EDITION『SHAKES』

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