【レポート】舞台『曇天に笑う』(その1)
舞台『曇天に笑う』
昨年好評だった人気舞台、一部俳優陣が入れ替わっての再演となった。唐々煙原作、『月刊コミックアヴァルス』(マッグガーデン)2011年3月号~2013年6月号まで連載された。2014年のアニメ放映も好評のうちに終了し、舞台化発表もアニメ放映中に行う、という早さ、初演は2015年の2月、早くも再演、それだけ、人気コンテンツと言えよう。
1878年、明治維新以降のこと。日本国内は士族反乱などで犯罪者が増加した。彼らは監獄に送り込まれるも脱獄は後を絶たなかった。そこで政府は脱獄出来ない『獄門処』を設置、重罪者をここに放り込んだのである。その護送の最終段階となる”橋渡し”を担当するのが湖畔の大津にある『曇神社』の曇三兄弟であった。この時、空は300年に一度の長期の曇天になっていた。この時に現れて人々に災いをもたらすという『大蛇(オロチ)の器』を求めて右大臣直属の部隊・犲(やまいぬ)が始動することとなった……。
基本的に同じストーリーではあるが、初演よりスピード感もあり、引き締まった印象、映像がスタイリッシュで、黒、というより、墨に近い色彩で様々なシーンを表現する。『曇神社』の曇三兄弟、地域の治安のために心を砕き、人々から愛されている。物語の出だしはそういった温かい関係性が描かれているが、一方では、時代に取り残された不満分子、特に武士だった者は刀を取り上げられてしまい、しかも商人や職人と違い、何か技術がある訳でもなく、”無法者”となっていく者もいる、そういった”時代の闇”も同時に見せる。舞台版に登場する赤松一郎太、青木弥次郎、元武士だが、明治になって山賊に、廃刀令にもかかわらず、刀を所持したままだ。「サムライをなめるなよ!」と暴れる姿は哀れだ。曇三兄弟の長男・天火は兄弟想いの優しい兄であるが、彼には大いなる秘密があった。また、10年前に大怪我をしていたところを天火に助けられた金城白子、曇家に居候しているが、彼にもまた秘密があった。
物語は『大蛇(オロチ)の器』を軸に進行していくが、その”サイドストーリー”、天火と右大臣直属の部隊・犲(やまいぬ)の隊長・安倍蒼世の唯一無二の友情、犲の創設者である岩倉具視の企みと思惑、金城白子の”事情”、それどれが絡み合って大きくうねりながらクライマックスへと突入していく。その台本の構成はわかりやすく、感情移入もしやすい。映像で大蛇(オロチ)を表現するが、俳優の演技と映像が一体となって迫力を持って観客席に迫る。音楽もアコースティックギターの音色が物悲しくもあるが、心に染み入る空気感を出し、アクションシーンや殺陣も単なる”かっこいい”、”派手”という言葉では言い尽くせない陰影と不穏な空気を醸し出し、『曇天に笑う』の世界を創造する。俳優陣も初演から曇天火を演じる玉城裕規はじめ 、初演よりもしっかりとした印象で『曇天に笑う』の世界を体現、初役の植田圭輔や松田 凌も難しい役柄をよくこなし健闘、重鎮・藤木 孝がいい場面でしっかりと重厚に演じているのは流石の貫禄。
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©唐々煙/マッグガーデン
取材・文/高浩美
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