【コラム】連載第182回 高浩美のアニメ・マンガ×ステージ評
文芸作品としてはミュージカル「さよならソルシエ」が一部キャストを変えて再演した。生演奏のピアノ、という贅沢な空間で、実在の人物ゴッホ兄弟が登場するが、物語はフィクション。“スター”が出てくる訳でもなく、“スポーツもの”のようにアスレチックなダイナミックさもないが、登場人物の心情がひしひしと迫るミュージカル、決して明るい物語ではないが、そこに描かれているものは普遍的、メインキャストの2人、良知真次と平野良が渾身の演技で見せた。
これからも続々と様々な作品の舞台化が発表されているが、特にスポーツ物の舞台化が多く発表になっているが、今後は西田シャトナー演出の「ALL OUT!」、最新テクノロジーを駆使するという「キャプテン翼」そして特に“これを舞台化??”、水泳の部活もの「男水!」、これらは表現の可能性を示唆してくれそうな作品だ。
文字情報だけの原作とは異なりアニメやコミック、ゲームには“ビジュアル”がある。しかもアニメやゲームに至っては「声」もある。それが“原作”であるので舞台化するに際しては、そのイメージを崩してはならない。それが逆に表現の多様化を生み出してきた。有名なのはミュージカル「テニスの王子様」で照明と効果音でテニスのラリーを表現した。近年はスポーツ物では舞台の“上下”と映像、効果音で野球の試合を表現した「ダイヤのA」、俳優のフォーメーションで見せる「黒子のバスケ」等がある。また、いわゆる超能力や超自然なものが出てくる原作もの、プロジェクション・マッピングや3D映像等、テクノロジーの発達により、こういった作品の表現が多彩になった。その一方でアナログ的な手法、アンサンブルのフォーメーション等で見せる“マンパワー”的な手法も、もちろん健在だ。これから様々な作品が上演されることとなり、話題は尽きないが、今、現実に使えるありとあらゆる表現方法を駆使してくるのではないかと思われる。
そしてアニメ・コミック・ゲーム原作ではないが、劇団四季のオリジナルミュージカル「人間になりたがった猫」、アメリカの児童文学作家ロイド・アリグザンダーの小説が原作だが、中国の企業とライセンス上演に関する契約が締結され、現地で会見も行われた。四季が製作したオリジナルミュージカルの上演権を、初めて、しかも海外で、もちろん劇団四季にとってはライセンス事業の第一号となる。一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会も、このライセンスビジネスを目標としており、こういった展開は大いに励みとなるであろう。2.5次元舞台に限らず、国産の演劇作品が海外で現地のスタッフ・キャストで上演されるようになるのは、大きなニュースである。
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