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アニメ産業レポート2016

【3.0レポート】『アニメ産業レポート2016』アニメライブ・アニメミュージカル市場が前年比168.4%!

『アニメ産業レポート2016』刊行記念セミナー開催
アニメライブ・アニメミュージカル市場が前年比168.4%!

さる2016年10月21日、日本動画協会主催による、『アニメ産業レポート2016』刊行記念セミナーが開催された。

アニメ産業市場は前年比107.7%、6年連続で伸びており、3年連続して最高売上を更新している。ビデオ(前年比90.9%、−93億円)や商品化(前年比88.4%、−758億円)は数字を落としているが、海外販売が前年比178.7%、2568億円アップ、この大幅な伸びが数字を後押ししている。またライブも前年比がおよそ170%、と好調だ。
アニメはかつて“オタク”と呼ばれる愛好者がメインであったが、今や“オタク”は死語になりつつある。つまり一般化、ライトユーザーが増え、裾野が広がっている。
確かにデータで見る限り好調のように見えるが、現在、アニメのウィンドウは「テレビ」「映画」「ビデオ」「配信」「商品化」「音楽」「海外」「遊興」「ライブ・エンターテイメント」と9つあるが、実際に今後、成長が見込まれるのは「配信」と「ライブ・エンターテイメント」のみと言っても過言ではない。また、2016年は“アニメクライシス”と一部で言われているようである。現場はフルキャパ、直前に制作延期、途中で中断したものもある。また、キッズアニメと深夜アニメの制作本数が逆転している。劇場アニメはジブリ作品がない年も好調で、例えば、現時点で『君の名は』の興行収入は200億に手が届こうとしている。

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配信に関しては、この12年間で大きく市場を拡大している。特にスマホの普及で2012年から急成長を遂げたが、ここにきて数字の伸びは落ち着きをみせている。配信の売り上げが伸び悩んだ要因としてはキャリア系サービスの減速が挙げられる。また2016年に入って総務省の「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」による「実質0円廃止」の実施によってさらに伸び悩むことになりそうだ。

ライブエンターテイメントは、2015年は産業市場は523億円、前年比168.4%の大幅アップとなっている。項目はステージイベント(アニソンライブ、アニメイベント)、2.5次元ミュージカル、ライブビューイング、アニメミュージアム・関連展示会、アニメカフェであるが、この数字の中に物販は含まれていない。この数字を計上すれば、たぶん一千億円の市場規模になっている可能性がある。さいたまスーパーアリーナで開催されたコンサート、2012年3回、2013年9回、2014年13回、2015年14回になっている。
2.5次元ミュージカル、2010年にはタイトル数が38であったのに対して2015年は123と3.2倍になっている。この傾向は少なく見積もっても2020年の東京オリンピックまで続くと思われる。観客動員数も数字で見る限り順調である。

現在、日本のアニメやコミック、ゲームの人気は国内だけにとどまっていない。2013年から再びミュージカル『美少女戦士セーラームーン』が始まったが、観客のおよそ半分は外国人ファンが占めているそうである。初日を待つ行列の中に必ずと言っていいほどコスプレした外国人ファンがいる。また、大人気作品である舞台『弱虫ペダル』やミュージカル『刀剣乱舞』等のタイトルは海外でもライブビューイングが実施されており、その効果か来年にはミュージカル『刀剣乱舞』の上海公演も決定している(上海の2.5次元専用劇場のこけら落とし公演)。国内、日本人だけでなく、外国人等、様々な観客を取り入れていることが、観客動員アップ及び売り上げアップにつながっていくのは想像に難くない。

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また、2016年ミュージカル『王家の紋章』が興行的に成功を収めたが、このコミックの連載開始は1976年、つまり当時10歳だった読者はすでに50歳、劇場も帝国劇場でチケット代金も13500円と高額だ。例えば8月末から公演があった『ホイッスル!』の舞台版があったが、このミュージカル『王家の紋章』1枚分の値段で『ホイッスル!』は2度観劇出来る計算だ(6500円)。2015年上演のスーパー歌舞伎『ワンピース』のチケット価格は16500円(1等席)、こういった2.5次元ミュージカルの観客の年齢層が上がっており、もはやコミック・アニメ・ゲーム原作の演劇はスタンダード化してきている、という推測が出来る。初めての観劇体験が「2.5次元」という現象も不思議ではない。2.5次元専用劇場となったAiiAシアターの劇場稼働率は90%以上と聞く。

ライブビューイングの市場も拡大、2014年には21タイトル、上演回数は959回だったのに対して2015年は39タイトル、上演回数は1984回になっている。今年は『ラブライブ!』等のビッグタイトルが1度に100館前後の劇場をブッキング、億単位の売り上げを上げるケースも出てきている。
アニメミュージアム、アニメ関連展示も2013年は45億円だったの対して2015年は92億8906万円と大幅アップ、アニメカフェも2013年は10億円だったのに対して2015年は50億円、しかも物販は含まれておらず、飲食の売り上げだけの数字である。これは店舗数の拡大もさることながら、メニューアイテムも豊富になり、客単価がアップしたという推測が出来る。また、「アニメイトカフェ」のような専門店だけでなく、タワーレコードカフェ等の通常カフェ店舗でもアニメとのコラボメニューを展開しており、今後はさらに充実していくであろう。

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セミナーでは、毎年刊行している「アニメ産業レポート」に基づいてモデレーター、パネリストが解説、今年は募集開始から早い段階で満席となり、業界への関心の高さを伺わせる。2016年も残すところ、わずか。数字で見る限りは比較的よい状況のように感じるが、ビジネスは絶えず変化している。来年はどのような報告になるであろうか。

取材・文 / 高浩美

一般社団法人日本動画協会HP
http://aja.gr.jp/

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