松田凌

【イケメンコレクション】第10回 俳優・松田凌さんインタビュー

芝居を通して見えた、役者としての成長

松田凌

続いて、共演時のお話を聞かせてください。舞台上で芝居を交わして気づいたお互いの変化や成長はありますか?

今でも覚えているのが、2016年上演舞台『瞑るおおかみ黒き鴨』のとき。毎公演魂を削っていたと言えるくらい全力で演じていたのですが、とある公演で勝吾くんが「凌、今日俺がもらうわ!」と言ってきたことがあったんです。「その公演は俺の色で染めるから」と。それに悔しさを感じて、僕も負けじと食らいついたのですが……振り返ると、やっぱり勝吾くん色の公演だったんです。

そのあと、地方公演で僕がゾーンに入ったときには「勝吾くん、今日は僕がもらいます」と言って。個人的な意見ですが、その公演は自分のなかでもよかったと思える公演になりました。

松田凌

まさに、お芝居のせめぎ合いですね。

公演後に食事に行く機会があり「勝吾くんの役、とても素敵ですごいと思いました」と言ったら「実は、少し価値観が変わったんだよね」と話してくれて。「それまでは情熱だけを持って演じていたんだけど、もうひとつ“冷静さ”を自分のなかで持った方が、お芝居がうまく行くことに気づいたんだ」と。

客観視、ということですか。

そうですね。第三者の目を持った自分がいる、というか……。当時、僕も同じことを感じていたのですが、まだ“技術”にはできていなかったんです。でも、勝吾くんは会得していた。「数多あるお芝居の武器のなかで、ひとつ持てたかもしれない」と教えてくれたんです。

それから3年、今年1月に共演した『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』では、その武器がさらに研ぎ澄まされていました。本人に言われるまでもなく、僕がお芝居を見てわかるくらい。

松田凌

3年ほど経って、武器に磨きがかかったと。

はい。緻密なものを積み重ねてお芝居をした方が、伝わり方の安定度も上がるし、まったく同じものはできないけれど、公演の水準は保たれますよね。それを感覚的でなく、計算して行うことで毎公演“凄み”を感じさせてくれたんです。

その武器は、ロジカルな面と感覚のバランスを使い分けている、ということでしょうか?

僕の意見なのですべてではないけれど、おっしゃっていただいたように、バランスがあるのだとすれば、ふたつをうまく混ぜ合わせてお芝居ができる方なのだと思います。もし勝吾くんに彼だけの計算式があるなら、僕も自分なりの計算式を見出して、色は違えど同じような形を目指したいです。

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