【インタビュー】「手塚治虫 生誕90周年記念 MANGA Performance W3(ワンダースリー)」構成・演出、ウォーリー木下さん特別インタビュー
「新しいものが出来たなと凄く思いました!」
--実際に、夏に公演をやった訳ですが、上演に至るまでは凄く大変だったと思います。その公演の手応えはいかがでしたか?
木下:2つあって、ひとつは、新しいものが出来たなと凄く思いました!僕は観るのも好きなんですが、たくさん、色んな面白いノンバーバルがあるのは知ってるので……ついつい何かと似ちゃうものを創ってしまいがちなんですけど、でも、あんまり観たことがないものが出来たな……それは、とてもいいなと思いましたね。もうひとつは……やっぱり観た事ない、新しいものなので、本当にまだ、ドロドロの状態!全然固まってない、よくわからない、溶岩みたいな感じ……でも熱量は凄くあったし、面白かった。これをロングランしていくんだって考えると、それに耐えられるもの、体制……全ての役にトリプルキャストぐらいまでいるんですが、キャストが変わってもクオリティが下がらないもの……きれいに作品を固めていくっていう作業をしないと、ダメだなっていうのは痛感しました。
--長く続けていくとキャストさんがずっと同じ人だと、それも負担ですね。
木下:そうですね、11月からは、トリプルキャストで一役に3人います。
--劇団四季さんは何十年も同じ作品やってて、役者さんが、いつも複数キャスト、しかも新しい俳優さんが入ったり……。
木下:その仕組みですね。こういう取り組みの面白さっていうのは、どこかの劇場をお借りして一週間、あるいは二週間程公演して、という従来の興行じゃないので……朝、入って本番までの間にこれとこれをこうして……仕組みまで考えなきゃならないんですが、これが面白いんです。そういうシステムをつくっている感じですね(笑)。
--やることはたくさんありますね。
木下:凄くありますね。
「物語を追うんじゃなくって一個一個、このショーを魅せていくっていうこと、ですね!」
--夏公演から時間も経っていますので、そこから作品をよりよくしていく訳ですが、ここはもっとこうしてみせたいとか、そこから、今回の見どころ、こういうところを観て!というポイントは?
木下:ダンサーさんだったりとか、パントマイムする人だったりとか、役者さんだったりとか、実にいろんな資質の人たちがごちゃ混ぜになっているカンパニーなんです。個性が凄く溢れているカンパニーっていう感じは出るんですけど、作品をロングランしていくときに「あの人のときは面白いけど、この人のは面白くない」っていうことになってしまうのは問題あるし、常にクオリティをKEEPするためには、やはり全員が身体が動けて演技も出来て、パントマイムも出来て、人形も使えて……オールマイティなことをする、出来る……それによって、全員が「MANGA Performance W3」のパフォーマーになる……そこのところは今回は初演のときは出来なかったので、今回の公演で、さらに!観にきて下さった方にたのしんでもらえる!「あ、こんなに面白いパフォーマンスがあるんだ」っていう風に……演劇って物語を追ってしまうんですけど、物語を追うのではなく、一個一個、このショーを魅せていくっていうこと、ですね!より面白くなっていくんじゃないかなと思います、ハイ!
--稽古、大変ですよね。
木下:みんな、大変だと思います、偉いです、僕はそんなに偉くないです(笑)。みんな、本当に偉い!
「自分がそこに行って身体を動かしたり、頭を使ったり、手を伸ばしたりすることで、変化していく……そういうことが凄く面白い
--今、本当にノンバーバルの作品が日本で多く上演されています……「アラタ」とか「フエルタ・ブルータ」とか京都の「ギア」、こういったジャンルの可能性は?
木下:ビジネスを考えている人達は10年ぐらい前からこの事を言ってまして……オリンピックも決まりましたし。僕は大阪出身ですが、「ギア」もその流れで出来ました。増加する観光客をどうやって楽しませるのか……政府とその場所の観光を抱えている人達と、ビジネスを考えている人達が手を取り合って考える、やりましょうって言うのは、必然的だと思うんですね。そこにアーティストとして、僕はTHE ORIGINAL TEMPOっていうのを偶然創れて、YouTubeで観てもらって世界のフェスティバルに呼んでいただいたりもしました。だけど台詞のない演劇を創る発想っていうのは、なかなか作り手側からは必然性が無い限り、やらないと思うし、やっても面白くないと思う。でも、ビジネスでやれって言われてもそんなには上手くはいかないと思うんですね。可能性は凄くあるけど、どうしたら若いクリエイターの人達がどんどん作品を創っていけるのかは皆で考えなきゃっていう気はします。「MANGA Performance W3」を創って、青山のこういうところで出来て、このくらいのキャパシティで、凄い目の前で不思議な体験が出来るって……「こういうのもあり、なんだな」っていうのをいろんな人に思ってくれたら嬉しいなと。
--よりクリエイティブで独創的なものを……。
木下:そういう意味では台詞はあってもなくてもいい……いろんな事が出来る、演劇なら出来ると思います。でも、まず、日本人が観ないとね。
--日本に来る外国人、圧倒的に多いのは観光客、お仕事で来る方もいらっしゃいますが、その方々がどういうものを求めているか。
木下:海外旅行に行ったら、首都とかには観光客が観に行けるショーが絶対にあるんですよね、この街はこういうのが流行っているんだ、とか、プラハにいったことがありまして、ブラックライトのショーが凄く流行ってて、それをやっているところが5つぐらいある、上演時間は1時間ぐらい、凄い面白いんですよ!韓国に行っても、現地の雑誌とかに掲載されているから、ミュージカルも、ノンバーバルも、観に行ける。その街、街で特色が出るといいですね。
--そういうのもいいかも、ですね。数年前にたまたまですが、旅行会社から依頼を受けて、ロンドンからいらした主婦の皆様に日本のお料理教室を体験するイベントのコーディネートをしたのですが、メニューは天ぷら、肉じゃが、ちらし寿司。そのちらし寿司にトッピングする錦糸卵を作る実演で料理の先生が薄焼き卵を目の前で作ったら拍手喝采!!
木下:わかります!
--マダム達が発した言葉が3つ、「ミラクル」、「マジック」、「ファンタスティック」。
木下:それは凄い!
--先生はびっくり!
木下:へ〜!いいですね!「ミラクル」、「マジック」、「ファンタスティック」まさにそういうものを求めてますよね!
--演劇じゃないですが(笑)。
木下:体験型のライブエンターテインメントって日本人は得意だと思うんですよ、演劇でも脱出ゲームとかも流行っていますし。観客がもっと能動的に参加する……ただ鑑賞するのではなく、自分がそこに行って身体を動かしたり、頭を使ったり、手を伸ばしたりすることで、変化していく……そういうことが凄く面白い……「W3!」もそういう作品です。観光客の方々がわざわざ劇場に来て楽しむんだったらただ観るだけでなく、体験をしてもらうことが大事だと思うんですよ。
--エキサイティングな体験。
木下:ハイ。帰国したきたときに「観てきた」じゃなくって「やってきた」っていう方が経験値が上がるんだと思うんです。
--イギリスは日本のようなお弁当の食文化がないので、松花堂弁当形式にして、自分で盛りつける……工夫次第で自分だけのアートが出来るんです。中には「弁当箱を売って欲しい」とおっしゃる方もいらして(笑)。
木下:そういうのは嬉しいですよね。僕らが気づいてないことが意外とたくさんあるんですよね、きっと。薄焼き卵があまりにも当たり前過ぎて、それがいかに感動的か、なんて全然わかんないけど、子供だって薄焼き卵をひっくり返したら「わー!」って叫ぶと思うんです。そういう忘れてしまっていることとか、角度を変えれば、めちゃくちゃ面白いものはまだまだあるので、そういうのを発掘したいですね!「ナンタ」もそうですね、料理の……そういった子供の遊びみたいなことがショーになっちゃったりしますから!
--本当に些細なことでも。
木下:面白いですし、本当にそうですよね。
--最後に締めのPRを。
木下:今、話したみたいにお客様、1人1人が持って帰れるものがたくさんあると思います。言葉がなく、非常に感覚的なことなので、10人いらしたら、10個の感想がある、発見がある、パフォーマンスになっていると思います!そこを楽しんでもらえたら嬉しいです!何回来ていただいても……「この間はここが目についたけど、今回はここが目が入った」みたいに、全く別の視点で見えたりもしますので、そういう楽しみ方も出来ると思います!なんせ、3分に1回、驚きがあるので、もう、「わー!」って言いながら楽しんでもらえたらと思います!ハイ!7月に観た人も!もう一回!是非、来てください!
(※)ノンバーバル:言葉以外の手段を用いたコミュニケーション。ノンバーバル・パフォーマンスは言葉を使わないパフォーマンス。
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