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舞台「『ポセイドンの牙』Version蛤」

【3.0レポート】舞台「『ポセイドンの牙』Version蛤」

舞台「『ポセイドンの牙』Version蛤」

海底宮に住むアムトリデ(西丸優子)、腹心の部下のイカ議長(竹岡常吉)、手下のアワビ(大塚由祈子)、ここでは大変な騒ぎに。3つの牙のうち、1つが……どこにいった???そして「黄金の釣針」を追う深海の使者・ドローナ(森山栄治)に深海の戦士・カルナ(汐崎アイル)、いわくありげな外資系エリートの岸部英夫(渡辺和貴)、曲者だらけで奇想天外、ジェットコースターの如くに展開する。客席を使う演出も多く、俳優陣が縦横無尽に動き回る。セットが実にアート、白が基調、しかも嵐だの海底だの、というと映像演出をイメージするが、映像は全く使わない。マンパワー、俳優陣が動きながらセットを動かす。フォーメーションも独特で、これらが世界観を立体的かつ個性的に魅せる。前田航基はいわゆる演劇の舞台は“お初”とのことだが、そういったことは微塵も感じさせない。伏線も多く、全てがラストに向けて怒濤のように押し寄せる。スイサンズの面々、津波の如くに押し寄せる危機に懸命に立ち向かう。「諦めない!」の一心、ドローナ、カルナの想定外の顛末、決してハッピーな終わり方ではないが、それは観客に委ねられている部分。アドベンチャーと日常の大きな落差、現代社会への強烈な寓話、ファンタジーではあるが、シビアで意表を突く内容で刺激的だ。「命ってそういうもの」この一言は重く、様々なニュアンスを含む。命、生は大切なものだが、しかし忘れ去ってしまうこともあり、忘れられないこともある。戦争や災害等で多くの命を失くしたはずだが、それらはどのくらい忘れられているのか、忘れられないでいるのか。台詞もウイットに富んでいて、構成も工夫を凝らしている。スイサンズの若者たちの心の中の何かが変わる。それは「成長」という言葉にも置き換えられるが、成長以外の気付きもある。そして幕切れに……最後の最後に「え?」なことが明かされる。アーティスティック、かつピリッと風刺も効いた舞台、笑いながらも心に残る作品だ。

舞台「『ポセイドンの牙』Version蛤」

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