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上海歌舞団 舞劇「朱鷺」-toki-

【3.0レポート】上海歌舞団 舞劇「朱鷺」-toki-

上海歌舞団 舞劇「朱鷺」-toki-

休憩の後の2幕は一転して舞台はダークに。直線的なコンテンポラリー的なダンス、心を失くした人々が忙しく動き回る。どんよりとした世界、近代化、産業の発展により物事は便利になったかもしれないが、失くしたものもまた大きい。羽根が所在なく漂っており、その羽根を手にしたジュン、手にはカメラを持っている。黒ずんで弱ってしまったジエ、ジュンは彼女を見つけ、介抱するも元気にはならない。時空を超えて再会したがもどかしい。自由に踊れない2人、朱鷺は次々と命を落とす。その様子は心痛い。悲しげな情景、儚げなダンスと直線的なダンスとの対比、一層この汚染されきった世界を表現する。ジエは遂に命の灯火が消え、ガラスケースに収まる。その様は冷たい現実をみせつける。
そして博物館、見学にきた学生にガイドする教師、よく見る光景、そこに朱鷺のジエも“展示”されている。そこに1人の老人がやってくる。彼の名はジュン、朱鷺のジエと巡り会うために三たび現れたのである。剥製がいくつか展示してあるが、かつて輝くような命があったはずの鳥たちが丁重にガラスケースに収まっている光景はどこか寂しげだ。ジュンはガラスケースに入っているジエの姿を見つけ、羽根をそっと胸に当てると、ガラスケースは消え、在りし日の光景が甦り、2人は踊る。そこに大勢の朱鷺たちもいつの間にか現れて、あの美しい景色が広がる。ジュンはその羽根を若者たちに託す。未来の景色が美しく、輝くなるように、という願いがそこにある。
朱鷺は中国では幸福、幸運のシンボルで「吉祥の鳥」と言われているそうで、純情、無垢、優雅の象徴とも言われている。羽衣伝説のようなテイストに自然環境問題等を盛り込んだ作品、背景はシンプルだが、場面を雄弁に語る。朱鷺の衣裳のスカートが流れるようでシューズの先の赤い色が特徴的。群舞のシーンでのスカートと足先の動きがなんとも美しく、キュートさも感じられる。主演の2人始め、ダンサー陣のひとつひとつの動きに見とれてしまう。テーマは21世紀らしく未来へと繋げていきたいもの。来年はニューヨークやモスクワでの公演も決定している。ワールドワイドな広がりを見せる作品、世界中の観客から拍手で迎えられることだろう。

上海歌舞団 舞劇「朱鷺」-toki-

【公演データ】

上海歌舞団 舞劇「朱鷺」-toki-

<東京公演>
2017年8月29日〜8月30日
Bunkamura オーチャードホール
2017年9月6日〜9月10日
東京国際フォーラムC

<名古屋公演>
2017年9月2日〜9月3日
愛知県芸術劇場 大ホール

<大阪公演>
2017年9月13日〜9月14日
オリックス劇場

オフィシャルサイト:
http://toki2017.jp/cast.html

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