【オフィシャルレポート】スタジオライフ公演『卒塔婆小町』開幕レポート
自称99才の醜い乞食の老婆(山本芳樹)。夜更けの公園で何度か彼女を見かけ近付いた詩人(関戸博一)に対し、 彼女は美人の代名詞である小町を名乗って、「私を美しいと云った男はみんな死んじまった」と語り始める。すると、 舞台は80年前の明治時代にタイムスリップ。驚いたことに老婆は気高き20才の生娘となり、奥の殺風景なガラス板も かの鹿鳴館の飾り窓に変身、過ぎし時代の栄華をロマンティックに物語る。詩人はたちどころに女に魅了されてしま うのだった。やがて姿は若く美しいまま、徐々に声色、姿勢、風格が崩れ、老婆に戻っていく山本の怪演には目が釘 付けになる。男と女、美と醜、恋慕と嫌悪、生と死、祝福と呪い――さまざまな対比を鮮やかにしつつ、美貌ゆえ己 も周りも不幸にしてしまう娘、誰にも見向きもされなくなった老婆、その双方の悲哀をエネルギッシュに表現。それ を受ける関戸の、熱を帯びた視線もいい。これは詩人が見ている夢なのか、それとも現実なのか? 二人の巡り合わせ
の意味とは? 答えは出ない。飾り窓の中央に咲き誇る芍薬の花一輪が、百夜通いに込めた少将の情念を想わせて―。
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。