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【レポート】手塚治虫 生誕90周年記念 Amazing Performance W3

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結末は原作とほぼ同じ、銀河同盟は地球を残す価値があるかないかをジャッジする。確かに諍いの絶えない地球であるが、W3の3人は無形の大きなものを得ることが出来た。もちろん台詞では決して語られない。地球に着いたときから元の場所に帰るまでの過程で観客は台詞がなくても理解で出来る。だから原作を知らなくても特に問題なくすんなりと受け入れられる。
ところで手塚治虫はこの「W3」という作品から何を伝えたかったのだろうか。いくつかのテーマが思い浮かぶが、観客の個々の感じ方や解釈は多少異なるだろう。台詞、しかも説明的な台詞や見せ方がないので、ここは観る側の感性に委ねられるところ。あっという間の1幕ものであるが、密度濃い時間でもある。また、一部、観客を巻き込む演出も用意されているので、ここはお楽しみ。
この作品は今から50年近く前の作品であるが、根源的かつ普遍性を持っている故に古くならない。手塚作品全般に言えることだが、いつの時代でも共感出来るし、考えさせられる。見せ方や表現方法で無限大の可能性を秘めている作品群、この公演はそういったことを改めて観客に認識させてくれる。シリーズ化は難しいかもしれないが、他の手塚作品でもチャレンジして欲しい。

<構成・演出 : ウォーリー木下>
神戸大学在学中に演劇活動を始め、劇団☆世界一団を結成し、現在は「sunday( 劇団☆世界一団を改称 )」の代表として全ての作品の作・演出を担当。外部公演も数多く手がけ、役者の身体性に音楽や映像等を 融合させた演出を特徴としている。ノンバーバルパフォーマンス集団「THE ORIGINAL TEMPO」の プロデュースにおいてはエジンバラ演劇祭にて五つ星を獲得するなど、海外で高い評価を得る。
10 ヶ国以上の国際フェスティバルに招聘され、演出家として韓国およびスロヴェニアでの 国際共同製作も行う。また、ノンバーバルパフォーマンス「ギア -GEAR-」の立ち上げに関わり、 言葉を使わず、五感を刺激するエンターテイメントは小劇場では異例のロングランを記録。 最近の主な作品に、「ハイパープロジェクション演劇 ハイキュー !!」、「Honganji」、「麦ふみクーツェ~ everything is symphony!! ~」などがある。DANCE BOX 20 周年企画「The PARTY -Canʼ t Stop the Dance-」他、様々な演劇祭のフェスティバルディレクターや「東京ワンピースタワー ONE PIECE LIVE ATTRACTION」の演出、「東京パフォーマンスドール (TPD)」のライブ演出を手がけている。

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