【3.0レポート】ミュージカル『オペラ座の怪人』
ミュージカル『オペラ座の怪人』
原作はフランスの作家ガストン・ルルーが1909年に発表した小説で、元は虚構と現実が入り交じったミステリアスな怪奇ロマン。ガストン・ルルーは元々は新聞記者で執筆にあたり、実際のオペラ座(ガルニエ宮)<※1>の構造や地下の奈落、また建築経過もきちんと取材、また物語に登場する幽霊話やシャンデリア落下事件、地下水の存在、全ては実際にあったことや当時語られていたこと、そういった入念な取材がベースになっているので、詳細な描写はリアリティに溢れており、無論、実在の人物ではないが物語に登場するキャラクターも存在感は抜群だ。また記者故にヨーロッパや中近東でも取材の経験があるので、怪人の設定にそれが生かされている。さらにガストン・ルルーとほぼ同時代を生きたエレファントマン、奇形であり、不幸な生い立ち、原作でもそうだが、その奇形のために見せ物小屋にいたとされる。
この作品、早い段階で映画化、しかも原作者存命のうちに、である。最初の映画化は1916年でサイレント映画(日本未公開)、その後1925年の映画はロン・チェイニー主演で、特殊メイクを施して原作をほぼ忠実に再現しているのが特徴。クリスティーヌへの愛も原作通りで今風で言うならほぼストーカー状態で狂気じみており、怪奇映画となっている。また登場人物を減らし、結末が異なるが、かなり原作に近い内容だ。これはサイレント映画だが、1929年には台詞が加えられたトーキー版が製作されている。これは日本でも公開されている。1943年版はアカデミー撮影賞とアカデミー色彩美術賞を受賞している。その後、何度も映画化され、大胆に翻案されたもの<※2>も公開されている。近年では2004年の、ミュージカル版、こちらは記憶に新しいところだが、舞台のアンドリュー・ロイド・ウェバー版がベースになっている。
舞台作品は実は3つあり、ひとつはよく知られているアンドリュー・ロイド・ウェバー版、初演は1986年なのでおよそ30年前、ロンドンのウエスト・エンドで、1988年にはブロードウェイで開幕、1986年にはローレンス・オリビエ賞、1988年にはトニー賞のミュージカル作品賞を受賞した。この作品はブロードウェイ史上最長のロングランを記録、2012年には公演1万回を達成した。ウエスト・エンドでは『レ・ミゼラブル』に続き2番目のロングラン作品となっている。残りの2つはケン・ヒル版で1976年初演、こちらはゴシック・ホラーとなっており、楽曲は「ファウスト」等著名なものを使用している。そしてもうひとつは1991年上演のアーサー・コピット&モーリー・イェストン版、こちらはタイトルは「ファントム」となっている。アメリカのヒューストンで初演、ブロードウェイでの上演は、まだない。この「ファントム」は宝塚歌劇団で2004年に宙組で上演されている。その際には2曲のナンバーがオリジナル版より追加、その後は2006年、2011年と上演されている。その他、2008年、2010年、2014年と異なるカンパニーで上演されている。
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