【3.0レポート】劇団四季創立65周年記念公演『ソング&ダンス 65』
舞台上にはほぼ何もないに等しい。奥の幕があき、女性が1人、歌いながら登場する。その歌は「Somewhere」、有名過ぎるミュージカル「ウエストサイド物語」で歌われるナンバーだ。劇中ではトニーがマリアの兄を刺し殺し、その足で恋人マリアの元を訪れ、自首すると言うトニーに「行かないで!」というマリア、そこから場面が変わり、何もない舞台上で歌われる珠玉のナンバーである。原文では「Peace and quiet and open air……」となるが、美しく、透明感のある歌声、最初にこの曲を持ってくるところに制作側の気持ちを感じる。
それから、次々と有名なミュージカルナンバーが登場する。シンプルに『SONG』と『DANCE』で構成しているが、だからこそ、俳優陣の力が重要。バレエベースのダンスやコンテンポラリー等、皆、スキルが高く、これだけでも見応えあり。映像演出もあり、劇団四季の過去公演のポスタービジュアルが次々に映し出され、それがスクリーン上で万華鏡のようになっていく。ただ、劇団の歩みを見せるにとどまらず、視覚的に変化に富んで印象的だ。「ライオンキング」「クレイジー・フォー・ユー」等おなじみのナンバーが続々と出てくる、出てくる。また上演が決定している「パリのアメリカ人」のナンバーも入っているのはなかなか憎い。
楽曲は全て一度は耳にしたことのあるものばかりではあるが、ここで注意したいのは、舞台にはほぼ何もない、ということと、俳優はその作品の衣裳は着用していないこと。つまり、装置や衣裳に“助けてもらう”ことは決してないので、歌ひとつ取っても、本当にその歌の真髄を理解していないと観客の心に響いてこないのだ。しかし、十分過ぎるくらいの迫力と感動が観客に迫る。これが“歌の力”というものなのだろう。また1幕では本格的なフラメンコシーンがあるが、かなり難易度の高いもので圧巻。
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