【オフィシャルレポート】舞台『ちるらん 新撰組鎮魂歌』
◆公開ゲネプロレポート
「血がたぎってしょうがねぇんだよ!」と、盛んに刀を交える幕末の漢(おとこ)たち。次々と繰り広げられる立ち回りは、次第に素手で殴り合うアクションへと発展することもあり、よく観る幕末ものの舞台とはひと味もふた味も違います。まるで現代の若者のケンカを見るような“リアルな熱さ”が伝わってくるからこそ、幕末の有名なヒーローたちの等身大の叫びが心に刺さります。
舞台は、田舎道場「試衛館」に24歳の若き土方歳三が道場破りで現れるところから始まります。そこで近藤 勇をはじめ、のちの新撰組隊士たちとの出会いがあり、ときにぶつかり合いながら距離を縮めてゆきます。土方歳三演じる花村想太は、がむしゃらな強さと、情の厚さを併せ持つ魅力的なキャラクターを造形。滑らかな剣さばきも鮮やかです。(馬場ふみか、花村想太)
圧倒的な存在感を放ったのは、サングラス姿でファンキーに登場する芹沢 鴨役の松本利夫。高い身体能力を駆使して、ハイスピードな殺陣を披露。その立ち回り中に吐く台詞の一つ一つまでが格好良く、あまりにキマリ過ぎていて心憎いほど。おそろしく強いのに、サムライの終焉をどこかで予感している、影のある役どころが似合っていました。
(松本利夫)
仲間の間でも丁寧語で話し、優しげでどこかミステリアスな沖田総司を演じたのは岩岡 徹。彼が芹沢 鴨と争うシーンでは、赤いライティングのもと一気に変貌し、「殺す」とつぶやき“神速の三段突き”を繰り出します。終盤には、土方や沖田が芹沢に立ち向かうクライマックスも用意され、漢集団の派閥抗争を越えた物語の展開に、感情が揺り動かされます。
岩岡 徹
他にも、美しく強靭な殺陣で魅せながら斉藤 一のトラウマも抽出した早乙女友貴、人間味溢れる大きな近藤 勇像を造り出した滝川英治、最強の人斬り・岡田以蔵の真の姿をときに軽妙に表現した久保田秀敏、青い瞳を持つ長州藩の刺客・琴を体当たりで演じた馬場ふみかなど、出演者全員が迫力ある立ち回りや丁寧な演技を見せ健闘していました。
背景一面にスクリーンを配したセットで映像も大いに駆使し、時代感、季節感までダイナミックに表現。脳髄を刺激するロック、自在に動く照明の躍動感もあいまって舞台ならではのライブ感を演出家・岡村俊一が引き出していました。殺し合いが日常の幕末にあって、己の信念を貫くことの難しさと潔さ、命の尊さを訴える力強い舞台が誕生しました。
なお公開ゲネプロに合わせて出演者12名がフォトセッションを行い、代表者キャスト6名が意気込みを語りました。
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