【3.0レポート】「スーツの男たち」
ボスのところにたどり着き、ボスの前に立つが、かなり緊張、それもそのはず、ヘマをやらかした相手には容赦しないからだ。しかし、ボスの態度は2人にとって意外性のあるものであった。人の多面性、裏と表、心の揺れ、人間の持つ複雑な感情、逃げるのか、観念するのか、どっちを取っても決して楽ではない。ボスは後半からしか登場しないが、その影は常につきまとう。その影におびえ、不安感が増幅するマックスとボビー、しかし、こういったシュチュエーションはどんな場面にもあてはまる。会社では上司と部下、大手企業と取引先等、回りを見渡すとある意味、“ありがち”な話。そしてストレスから病んでしまうのも頷ける。
衝撃的なラスト、この瞬間のために、“心の反逆”に突進していく。「何故?」と思うのと同時に「わかる!」という共感が交錯する。音楽、効果音が物語、人物の描写のバックアップをしている。これが人間の業というものなのだろうか、それを尊重した奇をてらわない、リアリティのある演出。物語の途中でボビーはトイレに行くが、これが本当のトイレで、リアル感を増幅する。舞台セットの奥に配したメモ用紙のコラージュ、ラスト近く、文字が浮かび上がる「I would like to “Live“」、単純でシンプルで、それでいて奥が深いフレーズだ。この戯曲に若手2名とベテラン1名、ガッチリとタッグを組んだ芝居、劇場も最大80人しか入れない濃密な空間、1幕もので1時間半、演出は落石明憲。
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。