弱虫ペダル

【レポート】舞台『弱虫ペダル』新インターハイ篇~スタートライン~

弱虫ペダル

勝負のシーンは圧巻で、西田シャトナーの演出の手腕が光る。中央の坂が縦横無尽な活躍をする。俳優陣は坂の上でしゃがみ、腕を、さも自転車を操っているように動き、坂は、というと人力で“動く、回る”、自転車の疾走感を観客に見せる。原作もそうだが、ぐいぐいと読者(観客)を引っぱっていく。古賀と手嶋のデッドヒートは、見応えあり、思わずエールを送りたくなる名場面だ。
いつも通り、ユーモアのあるシーンを交えながら進行する。例えばキャストが自分の役をやる以外のところ(モブ)、もはや“お約束“感のある“人間自動販売機”、新しいシーンではカエルが登場!(兼崎健太郎が大健闘!)ここは、もう観客は大笑い、しかし、レースのシーンになると観客は固唾をのんで舞台に見入る。千葉県大会で優勝し、インターハイに出場出来ることになった総北学園、いよいよ大舞台に挑む。しかし、会場では、やはり“王者箱学”取材陣は総北には目もくれず、箱根学園の面々の撮影に余念がない。場所は栃木、この栃木を表現する場面は、もう抱腹絶倒で、キャスト全員が全力で“栃木”PR、ここはもう客席は笑いっぱなしだ。
そしていよいよレースが始まる、坂道は不安でいっぱいだが前に進まなければならない。そんな坂道を仲間が温かく見守り、励ます。一方の箱根学園も、また優勝の2文字を賭けて総北学園に挑む。レース開始の場面は、キャストが台詞を言いながら“自転車を操る”。同じ演出だが、このシーンが出てくると観客は“芝居の観客”ではなく“レースを観戦する観客”に変貌する。ここが“マジック”、知らず知らずのうちに芝居に参加しているのである。「自分の脚を信じて、仲間を信じて」、これが、この作品の最大のテーマだ。
スプリントラインのファーストリザルトを狙うのは、“道の怪物”、箱根学園の銅橋正清(兼崎健太郎)と、闘志と必殺技を秘めた青八木、そして自分的にはオールラウンダーだと思っているが、実はスプリンターとしての才能を持つ鏑木。3人が勝者の証・グリーンゼッケン獲りに全力でペダルを回す、このスプリント戦の決着は手に汗握る瞬間だ。山岳リザルトを目前に控え、舞台上はエンディング。
学年も変わったところでの主要キャストをオーディションで選び、キャスティング、ちょうど節目ということもあるが、インターハイ、という大きな大会を描き、試合を通じてキャラクターが成長し、それに合わせてキャストの成長も見ることが出来る。今は初々しい雰囲気の新キャスト、これからどう変わっていくのか、また継続して出演しているキャストの貫禄、そういったところをチェックするのも観客にとっては楽しみのひとつ。舞台『弱虫ペダル』はまだまだ進化するであろう。

初日はダブルカーテンコールで大盛況、本編が終わった後は今までは『恋のヒメヒメぺったんこ』だったが、今回からは新曲、HPで動画も上がっているが、『ヒメのくるくる片想い』(作詞:渡辺航 作詞補佐・作曲・歌:桃井はるこ 編曲:manzo)、こちらも楽しい楽曲で、もう振付を覚えた観客もいて楽しく終幕、初日挨拶は小野田坂道役の醍醐虎汰朗は「カーテンコールをもっと勉強してペラペラとしゃべれるようになりたいです!」と挨拶、客席からはドッと笑いが起こり、またまたいい雰囲気になった。次回公演も楽しみである。

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