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【レポート】ミュージカル『刀剣乱舞』 ~阿津賀志山異聞~(その1)

ミュージカル『刀剣乱舞』 ~阿津賀志山異聞~(その1)

昨年秋にトライアル公演を行ったミュージカル『刀剣乱舞』、本公演の開幕である。春にはアニメ化も発表され、その人気はとどまることを知らない。大千秋楽公演はライブビューイングも決まり、8月10日には1stアルバムも発売が決定し、ファンにはたまらないニュースの目白押し、7月16日〜7月18日にはミュージカル『刀剣乱舞』公式ファンサイトプレミアム会員限定LIVEも決定している。

さて、今回の本公演、ストーリーは基本的にトライアル公演と同じだが、全体として”ヴァージョンアップ”、かなり楽しい2部構成となっている。

まずはミュージカル、「刀剣乱舞、いざ、始めよう!」、壮大さを感じる音楽で幕開き、映像で戦いの場面、風の音、それからアンサンブル陣による戦いのシーン、それからキャラクターが次々と登場し、あの歌、そう『刀剣乱舞』のナンバー、ここで早くもテンションアップ、ミュージカル『刀剣乱舞』の幕開きである。

加州清光に審神者から命令が下る。1189年(文治5年)に出陣せよとのことだ。しかし、三日月宗近はまったりとお茶を飲んでいるし、「大きいのになんで子狐?」とか言ってる小狐丸、なかなかに個性的な面々で、ここはちょっと笑らえるところ。

1189年と言えば鎌倉政権と奥州藤原氏との間で東北地方で行われた一連の戦いがあった年、これは後に”奥州合戦”と呼ばれる。この戦いで源頼朝による武士政権が確立したのであるが、同時に1180年に始まる内乱時代(治承・寿永の乱)の最後に当たる戦争でもある。この戦い、鎌倉方の圧迫に屈した藤原泰衡は平泉衣川館の義経を襲撃、自害に追い込んだ。しかし、頼朝の本当の目的は奥州藤原氏を滅ぼすことであったので、泰衡は義経の首を差し出すことによって恭順を示そうとしたが、頼朝は逆に家人の義経を許可なく討伐したことを理由に自ら大軍を率いて奥州討伐に向かったのである。

さて、加州清光が率いる第1部隊のメンバーは三日月宗近、小狐丸、石切丸役、そして岩融、今剣。今剣は平安時代の刀工、三条宗近作と言われ、源義経の守り刀と言われている。元気いっぱいのキャラクターであるが、その命令を聞いて、表情が曇る。岩融は武蔵坊弁慶が使っていた薙刀で、豪快だが、どこか品が良く、今剣を可愛がっていた。そんな今剣をどこかで心配する岩融、男気のある優しさにあふれたキャラクターだ。そんな2人がメンバーに選ばれ、他の刀剣男士と共に1189年に出陣する……。

おおむね、どんなストーリーなのか、トライアル公演を観劇していなくても察しはつくが、それでもドキドキしながら観てしまう。義経を想う今剣の溢れんばかりの切ない気持ち、刀は人を斬る道具であるが、作る刀工やそれを持つ人間の魂がこもっている。今剣の持ち主を想い慕う純粋な気持ち、義経が死なずに済むかもしれない、使命と主を想う気持ちの板挟み、「どうして歴史を変えてはいけないの?」と問いかける。だからこそ、掟破りの行動をとってしまう。それがわかっている岩融や他の刀剣男士たちもまた、その心中は苦しい気持ちでいっぱいだ。それでも歴史は守らねばならない、それが使命であり、正義である。その気持ちを乗り越えてこそ、刀剣男士たる所以なのである。”人が人を想う心”はいつの時代も、どんな時も変わらない、ここは、もう感涙必至、しっかりと見届けたい。

また、”サイドストーリー”である頼朝と義経の関係性も見逃せない。義経の”怨念”が負の形で現れ、登場人物は皆、翻弄される。そんな時、頼朝は「俺には何も才がない」と義経に向かって言い放つ。現代においても義経は常に愛され、悲劇のヒーロー扱いであり、それに対して頼朝は、時として狡猾な人物として描かれることが多い。弟へのコンプレックスが歴史を”作った”、非常に人間味溢れる解釈、ここの部分は、物語全体のアクセントになっており、秀逸であった。

ミュージカルナンバーも3曲増え、その分、ぐっと場面が凝縮、構成もスッキリ、メリハリも効いて、観やすくなっており、また、キャストの面々の歌唱力も稽古の成果でぐっと”魂がこもった”感、全体として”バージョンアップ”、映像の使い方もより効果的で完成度が高くなった。アクション、殺陣もぐっと大胆に、特にアンサンブルの面々のアクロバット的な動きは、もう”凄い”の一言、キャスト、スタッフの熱量を感じる1時間45分であった。

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©ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
取材・文/高浩美
撮影/冨田祐太郎

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2.5news(編集部)

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