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ミュージカル『パジャマゲーム』

【3.0レポート】ミュージカル『パジャマゲーム』

ミュージカル『パジャマゲーム』

またダンスシーンもスキルが高く、ピクニック(労使共々の一大イベント)のシーンの群舞は楽しく、ひたすら明るく、元気!“7セント半”問題などどこ吹く風の如くにあっけらかんとしている。ここでかかる「年に一度」のナンバーはキャッチーで耳に残る、ご機嫌な楽曲。その後のシーンでまた“現実”に戻されるところの対比は鮮やかだ。また、2幕の最初の「Steam Heat」はうって変わってスタイリッシュでセクシーなダンス、かっこよく、粋な感じだ。この「パジャマゲーム」の初演の振付家はボブ・フォッシー。元々はボードビルのダンサーだったが、この作品で本格的にブロードウェイデビュー、翌年の1955年のトニー賞の振付賞に輝くのだが、映画版でも振付を行っている。今回の振付のニック・ウィンストンはフォッシーゆかりの人々と仕事をした経験があるとのことで、フォッシースタイルをよく知っている彼ならではのリスペクトにあふれた振付、ここはミュージカルファン、ダンスファンなら心に響くであろう。またガールズトークっぽいナンバー「I’m Not At All in Love」、“シドのことなんか”と歌うベイブに女子たちがツッコミを入れてくるが、ここは“ある、ある、そういうの”的な共感とキュートな振付で思わず笑みがこぼれるシーンだ。セットも最先端の映像等を全く使わず、舞台空間を最大限に生かしたシンプルなセット、それがマンパワーで縦横無尽に動くのだが、それがダイナミックかつ変化に富み、しかもかなりのスピード感で変化していく。アイディア満載感で、「なかなかやるな〜」と感心させてくれるし、小物の使い方も心憎い。洒落とエスプリがピリっと効いた感じが好感が持てる。
このミュージカルは楽しいだけではない。もちろんラストは言わずもがな、であるが、雇い主と従業員の関係性、恋愛、友情、普遍的なものが多数詰まっている。恋愛すれば、もちろん相手のことがあれこれ気になるものだが、そういった心情をダンスやミュージカルナンバーで提示する。悪人は出て来ないが、登場人物は皆、自分が置かれた“場所”で悩んだり、迷ったりする。ベイブとシドは惹かれ合っても自分の置かれている立場を考えると、そう簡単に「好き」という感情だけでは行動に移せない。そんなやるせなさは時代が変わっても、人間の気持ちは変わらない。このミュージカルが発表されたのは1954年のことで、インターネットが発達しようが、生産性が向上しようが、人間の根っこは変わりようがないことを教えてくれる。まさにミュージカルコメディの王道、笑って笑って、ちょっとホロリ、ノリよく観劇すれば楽しさ倍増、ハッピーになれる作品だ。

ミュージカル『パジャマゲーム』

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