Categories: レポート

『花より男子 The Musical』

『花より男子 The Musical』

『花より男子』は神尾葉子原作、『マーガレット』(集英社)で1992年〜2004年まで連載され、単行本は全37巻、完全版は全20巻、第41回(平成7年度)小学館漫画賞受賞作品である。超絶セレブな学園に入学した貧乏少女の牧野つくしがいじめや差別に遭いながらも持ち前の明るさと前向きさで乗り切る恋愛物語だ。ギャグコメディの要素もあり、老若男女問わずファン層は幅広い。テレビドラマ化、アニメ化され、さらに台湾では『流星花園』、韓国では『꽃보다 남자(コッポダナムジャ)』のタイトルでドラマ化された。2005年の『マーガレット』本誌で原作者が2006年に続編を描くと明言、同年に読み切り形式で発表されている。また花沢類主役の物語も2008年に発表されており、現在は2015年から『少年ジャンプ+』にて続編『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』の連載も始まった。ミュージカル化は今回が初めて、ヒロイン・牧野つくし役はオーディションで3000人から選出された加藤梨里香が演じる。子役からスタートしている実力のある新人だ。F4の道明寺司役にミュージカル『黒執事』で注目され、ミュージカルに歌に活躍する松下優也(X4)、叶わぬ恋に悩む花沢類を白州迅、茶道家元の息子で軽いノリの西門総二郎に真剣佑、年上との恋を楽しむ美作あきらに上山竜治と実力派が揃った。テレビドラマ版に負けないくらい、舞台版も強力なF4、である。

プロローグは学園シーンから。F4の噂をする生徒たち、F4は学園を牛耳っている男子生徒4人組。つくしは「皆、あいつらに恐れをなしている」と歌う。派手なロック調の曲と共にF4登場、さしずめ”真打ち登場”という風情、物語を知らなくても、ここでだいたいのことは把握出来る。虐められていた級友をかばうつくし、正義感は強いのだが、少々無鉄砲で気の強い少女、ひょんなことで道明寺司を殴ってしまうのである。そこで、なんと道明寺司は恋に落ちてしまう。それを一瞬で察する他のF4メンバー、この様子はかなりコミカル、ここの松下優也(X4)のコメディアンぶりは相当可笑しい。しかし、残念ながらつくしは気づかず、道明寺を「バカ!」とののしってしまう。のっけから可笑しくも微笑ましいシーン、つくしの母は娘を玉の輿に、と願い、父は尻に敷かれっぱなし。母は生田智子、父は吉野圭吾とベテランだが、この夫婦、抱腹絶倒でさしずめ、ワンポイントリリーフといった”美味しいポジション”。メインストーリーはもちろんつくしと司の恋の行方だが、サイドストーリーの類のほろ苦い片想いもしっかりと描かれている。素直になれず、いじっぱりなつくしと本当はさびしんぼうのくせに、虚勢を張ってる俺様タイプの司、そうそう上手くいくはずがない。セレブを気取るクラスメイト達、嫌味を通り越して、ちょっと面白おかしい印象だ。幼なじみの木村了演じる織部順平、1幕では内気キャラ、転じて2幕ではダークに豹変、この切り替えの良さは作品のアクセント、他のキャストも適材適所、真剣佑と上山竜治、ダンスに歌に、と大活躍。このコミックの面白さのひとつ、”小ネタ”も満載、司の妙な言葉遣いをいちいち訂正する仲間のツッコミで客席からはクスクス笑いが。ミュージカルナンバーは全部で23曲、変化に富んだ楽曲は本田昭光。演出は『ピーターパン』で知られる鈴木裕美の手腕が光るメリハリの効いた構成、オチは先刻承知なのだが、それでもハラハラドキドキしてしまう、楽しく笑っての2幕もの。ラストナンバーはこのミュージカルの主題、とも言えるゴキゲンなナンバー、で笑って終幕、続編があるならつくしと司のその後をやって欲しい。

 

『花より男子 The Musical』
東京公演/2016年1月5日~24日 シアタークリエ
福岡公演/2016年1月28日 福岡サンパレス ホテル&ホール
名古屋公演/2016年2月6日~2月7日 愛知芸術劇場 大ホール
大阪公演/2016年2月11日~2月14日 サンケイホールブリーゼ
http://www.hanadan-m.com

©神尾葉子・リーフプロダクション/集英社
©『花より男子 The Musical』製作委員会2015

取材・文/高浩美

2.5news(編集部)

2.5news(編集部)