アンドリューの申し出自体が胡散臭さ満点、そういったいかにも“怪しい”提案をするアンドリューを演じる西岡徳馬がベテランらしく余裕しゃくしゃくで渋い感じ、それに対峙するマイロ演じる新納慎也(探偵バージョンで観劇)、その狡猾さに翻弄されるが、後半の“逆襲”に出るところは一皮むけたマイロの痛快さを感じさせる。芸達者同士の丁々発止のやり取りは片時も目が離せない。アンドリューとマイロは対立関係にあるが、同時に“同士”でもある。共感と反発、愛情と憎しみ、相反する様々な感情が2人の間で渦を巻いている。ミステリー要素は当然であるが、2人の男のプライドをかけた駆け引きとつぶし合いと騙し合いはスリリングでもある。また、イギリス社会における差別的な要素も台詞に含まれており、持てる者と持てざる者の対立関係も見え隠れする。出だしはピアノの旋律で不協和音、これから繰り広げられる危うい空気感を提示する。小道具から照明、音、全てがどんでん返しに次ぐどんでん返しに向かっていく。多少のアドリブも交えつつ、こなれた感じ、これぞ“芝居”の真骨頂を見せてくれる。膨大な台詞の応酬、どこを取っても面白く、スリルと笑いに満ちた戯曲、2人とも軽やかな身のこなし、“3人目のキャスト”の小道具の人形も大活躍、この人形の存在、不気味さと人間の持つダークな部分を感じさせる。