いよいよ 9 月 16 日(土)に開幕を迎える「チェンソーマン」ザ・ステージ。
稽古開始直後から熱が高まっているチェンステカンパニーより稽古レポートをお届け。
※稽古レポートにはネタバレ要素が含まれます。
その前に、いくつかのアクションシーンの確認が行われていた。
確認していたのは、武器の使い方や身体の動かし方。脚本・演出の松崎史也、アクション監督の栗田政明らが一つひとつを見て整えていくのだが、その修正の内容は例えば「手斧の角度を少し上向きにする」や「仰向けに転がったときに肩を地面につける」、「攻撃を仕掛けるタイミングを1秒ずらす」など、アクション満載のこの舞台では途方もないような細かな部分。しかしその後の変化を見るとハッキリとした違いがあり、感動した。また松崎は、ときに動きを減らしていたのも印象的。迫力や手数で押し切るのではない、洗練されたアクションシーンになりそうだ。
シーンの確認の後は一幕の通し稽古へ。確認で動いたからだろう、開始前に「アクションは5割くらいで」「安全を優先して」と声がかかる。物語は原作の冒頭、主人公デンジ(土屋直武)が『チェンソーの悪魔』ポチタと共にデビルハンターとして暮らし始め、殺され、悪魔の心臓を持つ『チェンソーマン』として蘇るところから描かれる。この頃のデンジは、親に背負わされた借金を返すため、内臓を売ったり、ヤクザの食い物にされたり、人並みの扱いを受けていない。しかし彼は社会も世界も知らないので、その境遇を当然のように受け入れており、なんとも言えない気持ちにさせられる。しかし、その環境でも奪われなかったデンジの無垢さが土屋の芝居の中にくっきりと輝いており、それがこの作品の光になっているように感じた。
とあるエピソードで揃うデンジ、アキ、パワー、姫野、コベニ、荒井が並ぶと、キャストもキャストで、それぞれキャリアも経験もバラバラなメンバーなのだと気づく。そこで自然と生まれるデコボコ感がキャラクターたちと重なり、愛すべき6人となっていた。
そんな彼らがデビルハンターとして悪魔と戦うアクションシーンは、この舞台の楽しみなポイントのひとつ。悪魔はどう表現されるのか、デビルハンターそれぞれの能力を使った戦いをどう見せるのかなど、期待をしている人は多いだろう。見学した一幕でもアクションシーンが見られたが、特殊な存在である悪魔たちの表現も、彼らの特殊な戦い方の表現も、舞台化の醍醐味!と嬉しくなるような多様な手法が取られていた。
実際はここから更にパワーアップするだろうが、現時点でも、さまざまな道具を組み合わせ、アンサンブルの方々の息を合わせた身体表現を駆使したバトルシーンは迫力があって、なによりとてもおもしろい。
その中で、デンジが変身するチェンソーマンは、夛⽥将秀と仲宗根 豊のふたりが演じる。夛⽥は舞台「鬼滅の刃」などでも活躍するアクション俳優。仲宗根は「東京 2020 パラリンピック競技大会閉会式」にも出演したダンサーだ。その夛⽥のアクション、仲宗根のボーンブレイク(脱臼ダンスとも呼ばれる技)をはじめとする身体表現が、リレーのように繋がれ、チェンソーマンの動きを表現していく。そしてそこにシンクロする土屋のデンジ。人間離れしたキャラクターの動きを3人の人間によって表現していくというアイデアには脱帽してしまう。演じる側は入れ替わりのタイミングや段取りなどを何度も稽古していたが、見る側にとってはリアルなチェンソーマンが見られるのではないかと期待が高まる。
通し稽古は途中で何度か止めながら進んでいった。
その合間で松崎は、ときに自身が演じてみせ、台詞の言いづらさを感じれば本人に確認して変更し、動きについて「キャラクター的にはこうしたいと思うけど、ちょっとこれも試してほしい」と提案していく。また、この作品は違う空間や違う時間を同時に表現したり、回想しながら進めていくことが多いが、松崎は役者たちに「時間の行ったり戻ったりをがんばらないといけない。自分(の芝居)だけでやろうとすると難しいので、演出と協力してやっていきましょう」と説明していた。そして役者たちも積極的に意見を出し合いながらシーンをつくっている。それぞれの役割を全うしながらも、全員で芝居を磨いていこうとしているのが感じられる稽古がとても印象的だった。
稽古後、松崎は「今の時点でここまでイメージができていれば、だいぶいいと思います」と話した。開幕まであと約3週間(※取材時)。どのような舞台ができあがるのか、とてもたのしみだ。
(撮影=大塚浩史、文=中川實穂)
期間・劇場
【東京】2023 年 9 月 16 日(土)~10 月 1 日(日)天王洲 銀河劇場
【京都】2023 年 10 月 6 日(金)~10 月 9 日(月・祝)京都劇場
原作 藤本タツキ(集英社「少年ジャンプ+」連載)
脚本・演出 松崎史也
音楽 和田俊輔
振付 HIDALI
出演
デンジ:土屋直武
早川アキ:梅津瑞樹
パワー:甲田まひる
姫野:佃井皆美
東山コベニ:岩田陽葵
荒井ヒロカズ:鐘ヶ江 洸
岸辺:谷口賢志
チェンソーマン:夛田将秀/仲宗根 豊
サムライソード:オレノグラフィティ/吉岡将真
マキマ:平野 綾
船木政秀 三枝奈都紀 阿瀬川健太 新原ミナミ 古屋敷 悠 山咲和也
キッキィ 啓 ゴリキング Charlie
【声の出演】ポチタ役 井澤詩織
チケット料金 11,000 円(全席指定/税込)
チケット取り扱い チケットぴあ
公式 X(Twitter) ≫https://twitter.com/CHAINSAWMAN_ST (公式ハッシュタグ:#チェンステ)
公式サイト ≫ https://chainsawman-stage.jp/
(C)藤本タツキ/集英社・「チェンソーマン」ザ・ステージ製作委員会