『美男高校地球防衛部LOVE!』は原作・馬谷くらり、『銀魂』等を手掛けた高松信司監督によるアニメ作品で2015年1月〜3月まで放送され、第2期の制作も決定しており、3月17日のニコ生放送が発表されるが(10名登壇予定)、それが早くも舞台化した。主要登場人物の苗字は日本の温泉地の名前に由来、眉難高校に通う男子高校生たちが宇宙からやってきた謎の生き物によって”地球を守る”防衛部と”地球を征服”する征服部に分かれて戦いを繰り広げる、という内容。
この”地球防衛部”、元々は学校未公認のサークルであったが、部室を占拠していたので生徒会から正式に部活動登録するように催促されていた。しかし、別名”何もしない部”で、箱根有基(はこねゆもと)らはなんとなく『地球防衛部』に集まって特に何かする訳でもなく、ダラダラと過ごしていた。そんなダラけきった5人の前に、突如として現れた喋る桃色のウォンバット。 「この星を守りたい…どうか力を貸していただけませんか」ひょんなことから愛の王位継承者“バトルラヴァーズ”に任命された5人は、変身アイテム“ラブレスレット”の力で“ラブメイキング”(変身)し、地球を愛で満たす為に戦うことになる。こうしてホントに地球を守ることになった5人は、草津錦史郎(くさつきん しろう)率いる征服部が送り込む怪人たちと戦うことになってしまったのである。アニメでは、この変身シーンが見どころのひとつ、ちょっとどこかで見たような変身の仕方であるが、それは”ご愛嬌”、また征服部が送り込む怪人もひとくせもひたくせもある、ちょっと笑える怪人ばかりで、ちくわぶ怪人(知久和武)は容姿や才能がないことを悩み、しかも存在感が薄く、割り箸怪人(橋田割男)は秩序と規律を重んじ、割り切れないもの(円周率とか)をやたら憎むが、肝心の割り箸を割るのは苦手だったりする。今回の舞台版はオリジナルキャラクターが登場し、原作にはない特別なストーリーになる。
季節は秋、防衛部の5人は板の上(舞台)でしか生きられない演劇部2年の北島マヤオの炎のような情熱にほだされて、演劇部の合宿に参加することになってしまう。なりゆきでマヤオに協力することになるのだが、合宿地のリゾート開発問題まで勃発し、さらに征服部まで絡んでくることに!?防衛部の5人は今回も愛で地球を守ることができるのか!?というのがおおまかなストーリーである。脚本・演出は拙者ムニエルの主宰、村上大樹、舞台『私のホストちゃん』の脚本・演出を手掛け、客席を笑いの渦に巻き込んだが、今回はどのくらい客席を笑わせてくれるのだろうか。
最初の出だしはアニメでも描かれている5人の出会いをテンポよく描いているが、なんといっても”銭湯のシーンはどうするんだろうか?”とアニメ視聴者は気になるはず。でも大丈夫!ちゃんと制服着用で入浴している(笑)。風呂に入りながら「これが2.5次元の限界だ」等の台詞で客席は大笑い。アニメで描かれて部分が終わってからタイトルロールが映し出される。
演劇部の北島マヤオ(西山丈也 )は学園祭で上演したい演目があったが部員が足りなかった。ひょんなことで手伝うことになった5人は合宿へ行く。しかし、そこには生徒会、実は征服部の面々も……。
誰もが知ってる有名ミュージカルのパロディやら、なんやら、もう抱腹絶倒のシーンの連続、アドリブもあり、なんでもありだ。合宿所には露天風呂もあり、またまたお約束の”入浴シーン”も用意されているが、ここは必見。宿にいる先輩もなんだか可笑しく料理人の道場一徹(西ノ園達大)、終始たぬきの格好の老婆島デニ郎(山岸拓生)と出てきただけで、もう可笑しい!という風情。台詞も各々のやり取りもいちいち笑えるので、客席は終始ウケまくり状態。時折、歌とダンス、ちょっとアイドル風の振付で、ここでは客席から手拍子、ラスト近くは、ちゃんと”怪人”登場、そして5人は変身アイテム“ラブレスレット”の力で“ラブメイキング”(変身)、ここは最大のハイライト、「3分待ってね」と言ったとたん、舞台に大きな布が降りてくる。映像で5人の変身が大きく映し出されるが、原作アニメ同様、”どっかで見たことのある変身シーン”(別の某有名アニメ)、ここはしっかりと観て欲しいポイント。そして怪人と戦う5人、そして”予定調和”で5人は地球を守ることに成功し、めでたし、めでたし。
とにかく幕開きから観客は笑いっぱなしで、時には手を叩いてウケまくり、原作アニメもとにかく笑えるシーンが多いが、舞台版の場合、俳優陣が全力で”おバカ”をやるのは並大抵ではない。箱根有基(赤澤燈)、 由布院煙(五十嵐麻朝)、鬼怒川熱史(越智友己)、 鳴子硫黄(高崎翔太)、 蔵王立(荒牧慶彦)、もうパワー全開、キャラクターそのもの、征服部もここは負けていられない、草津錦史郎(前山剛久)、 有馬燻(伊万里有)、 下呂阿古哉(柏木湊太)、特に下呂阿古哉のうっとおしいくらいのナルシストぶりは拍手。
なお、ゲネプロ前に囲み会見があった。登壇したのは我らの地球を守る防衛部から箱根有基役の赤澤燈、 由布院煙役の 五十嵐麻朝、鬼怒川熱史役の越智友己、鳴子硫黄役の高崎翔太、 蔵王立役の荒牧慶彦。油断ならない征服部からは草津錦史郎 役の前山剛久、有馬燻役の伊万里有、下呂阿古哉役の柏木湊太。
この作品に出演する感想を?の質問に赤澤は「とんでもない作品に手を出してしまった(笑)実際にアニメも拝見しましたが、バトルシーンを観て”とんでもないな”と。でも、こんな衣装はなかなか着れないと思うので(笑)」とコメント。
五十嵐は「これは伝説のアニメだと思います!」と語り、衣装に関しては「違和感なくて(笑)」と、そして越智は「(この衣装は)こういう仕事してないとなかなか着れません」と語る。なんせ変身後のキラキラ衣装、登壇直後はやや緊張気味であったが、いろいろとコメントするうちに衣装にも慣れてきた様子。高崎は「役者のメンバーの顔を見て安心しました」と語り、荒牧は「アニメを観て開いた口がふさがりませんでした(笑)」と率直な感想を述べた。それに対して征服部の面々、まず前山は「衣装がかっこよくって防衛部じゃなくてよかったと思いました(笑)、生足じゃないんで(笑)」このコメントには防衛部の面々は笑うしかない、という状況。伊万里は「有馬燻を自信を持って演じたいです。制服は、かっこいいです!」とPR。柏木は「自分のスタイルを存分に出せる衣装」とコメント、かなり衣装が気に入った様子。お客様へのメッセージを、という質問には全員が「楽しんで!」とコメント。最後に赤澤は「アニメの世界観がなんとも言えない、とんでもないですが、このとんでもないシーンが舞台でどう表現されているのか、この舞台でしか観られない、もう2度と観られないと思います!」と締めた。会見の間じゅうはキャスト同士、突っ込み合ったりして和気あいあい。”征服”ならぬ”制服”バトル(?)が繰り広げられたが、実は仲がよかったりして、な会見であった。
[公演データ]
『美男高校地球防衛部LOVE!活劇!』
2016年3月10日~13日
Zeppブルーシアター六本木
Blu-ray&DVD発売決定!
2016年7月20日
価格:Blu-ray 9800円(税別)DVD 8800円(税別)
©馬谷くらり/眉難高校演劇部
取材・文・撮影[会見]/高浩美