大野大輔監督はアクション映画である本作の撮影にあたり参考にしたヒーロー像を問われ「ダークヒーローということで、作品もスカッと楽しんでいただけるような娯楽作にしたく、結構デフォルメチックにしたいと思っていました。そこでその旨を荒木さんをはじめとした役者の皆様に事前にお伝えし、そういうキャラクターを作りたいなとは思っていました」と語る。また、年齢を聞かれた大野監督が 34 歳だというと、高橋健介から年上の荒木と陳内への演出について「やりづらくなかったですか?」と問うと、即座に荒木から「その導き方はないだろ!」とツッコまれ、場内が沸き立った。
改めて、出演陣に印象に残ったシーンについて尋ねると、荒木は剣舞を披露するシーンが印象的だったという。「ジュラ刀といって金属でできている刀で剣舞をするのですが、これが重いんです。舞台では殺陣を竹光と呼ばれる竹に銀の張り紙をして光らせたもので行うんですが、金属の場合は軽やかに刀を振って見せなければならないシーンと相性が悪い。遠心力で持っていかれてしまうのでとても苦労しました」と振り返る。
続いて高橋は本作で登場する緑色のスポーツカーが気になったという。「あの冒頭に出てきた車は誰のですか?僕がプロデューサーだったらあの車は相当お金がかかるので借りてこれないな」と尋ね、日本で数台しかないスポーツカーを制作会社のツテで借りてきたと聞き、納得した様子。
また陳内は荒木との一対一のシーンについて振り返る。「商店街をずっと歩く長回しのシーンがありまして、本当に映画あるあるなんですけど、そういうシーンに限ってチャイムが鳴ってしまったり、救急車が通ったり、通行人が路地から出てきて、その度に撮影が止まってしまって」と苦労について語る。そこで再び荒木が陳内のセリフ覚えの良さを褒め、長回しでも陳内がスムーズに間違えずに進んでいくため、間違えられないという緊張感があったという。
最後に荒木が、「ご鑑賞ありがとうございました。僕が映像作品ですごく意識している部分で言うと、普段の舞台に比べると、映画は見やすい環境にあると思うんですね。だからこそ気構えずに楽に観てもらえるというのが、映像の一つの魅力になるんじゃないかなと思っています。今回は大人向けの荒唐無稽なヒーロー作品ですが、楽しく観てもらえるように、シンプルなテーマを表現できるといいなと心がけ、この作品に挑みました。楽しんでいただけますと幸いです」と映画を観終えたばかりの観客に語り、温かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
弁護士の神道楷(荒木宏文)は請負った裁判では連戦連勝の負け知らずで、事務所内でも不動のエースだった。しかし、楷には法の抜け穴を使い悪事を働く者たちに、直接裁きを下す“人斬り”としてのもう一つの顔があった。そうして勝ちに持ち込んだ訴訟も数知れず、正義に仕える仕置人として暗躍していたのだ。
さらに彼は老舗のヤクザ、権藤組四代目組長・権藤平八朗の隠し子として生まれた出自を隠して生きていたが、権藤が新興組織・メイヘムに襲われたことをきっかけに若頭の鬼頭(陳内将)が楷に接触してくる。
ある日、入念に準備していた IT 企業の情報漏洩訴訟で敗訴してしまう楷。あまりにも不自然な負け方に納得がいかない楷はすぐさま裁判を調べ直すと、所長の葛西が証拠書類の偽造や証拠品を破棄していたことが明らかになる。
葛西の裏切りを仕掛けたのは誰なのか、そして楷の逃れられない血の物語が動き出す…
<出演>
荒木宏文
陳内将 秋谷百音 高橋健介
北川尚弥 伊能昌幸 渡邊将 才川コージ 忍足洸武
監督:大野大輔/脚本:大野大輔、久保和明
制作プロダクション:レオーネ/宣伝・配給:クロックワークス
2023年/日本/80分/カラー/DCP/シネマスコープ/ステレオ/G(一般)
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