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『終わりのセラフ』The Musical

『終わりのセラフ』The Musical

原作は鏡貴也(原作)、山本ヤマト(マンガ)、降矢大輔(コンテ作成)、『ジャンプスクエア』(集英社)で2012年より連載中の人気コミック。その後、講談社にて小説も発表、出版社をまたがったメディアミックスという点ではちょっと珍しいコンテンツだ。コミックは百夜優一郎を主人公にしているが、小説は一ノ瀬グレンが主人公、アニメはコミックに沿っており、今回の舞台もコミック、アニメに沿った内容となっている。
オープニング、客席に車のクラクションやら爆発音が響き渡り、軍靴の音、それから各キャラクターが登場する。ミカエラの独白「吸血鬼のボスから逃れられたら……」と言う。地球は吸血鬼に支配されており、生き残った人間との終わりなき戦いが繰り広げられている、という設定がここで語られる。そして心電図のモニターが舞台背景に、音が哀しく響く。昏睡状態になった百夜優一郎がベッドに横たわっているところから時間が遡っていく構成になっている。どうにか逃げ延びた優一郎が共に戦うことになる三宮三葉や君月士方、早乙女与一らとの出会い、ひとりぼっちだった優一郎が次第に仲間を得て、成長していく。一ノ瀬グレンは厳しい男だが、情に厚く部下から慕われている。また、阿朱羅丸は形状は日本刀、鬼呪訓練の際に優一郎の体を乗っ取ろうとするも「仲間になってくれ」の優一郎の言葉で憑依することを認める。

ミカエラの回想、逃げ切れずにつかまってしまったこと、フェリド・バートリーを欺いたつもりだったが、実は見破られていたこと、クルル・ツェペシによって吸血鬼になってしまったことが彼を苦しめる。プロジェクション・マッピングをふんだんに使い、アンサンブルの動きやミュージカルナンバーで綴っていく。見どころはやはり人間vs吸血鬼の戦いの場面であろう。そして一ノ瀬グレンはミカエラに追いつめられ、”あわや”というところで優一郎に助けられるが、そこにいたのは生き別れになったミカエラ、優一郎はとどめを刺せなかった。一瞬、優一郎とミカエラの感情が交錯する。偶然に会えたのだが、”こんな状況”が2人を苦しめる原作でもここは感涙の場面であろう。

 

話題作のミュージカル化とあって佐野 岳(百夜優一郎)や 鈴木勝大(百夜ミカエラ)の熱演が光る。小野健斗(一瀬グレン)は長身で舞台映えするルックスで存在感を示す。美山加恋(三宮三葉)、 水石亜飛夢(君月士方)、橋本真一(早乙女与一)甲斐千尋(柊シノア)も殺陣、アクション、稽古の成果がうかがえる。知念紗耶(阿朱羅丸)の卓越した身体能力は見どころ。中村誠治郎(フェリド・バートリー)はもはや貫禄で舞台全体を引き締める。永尾まりや(クルル・ツェペシ )も難しいやくどころでありながらも健闘。楽曲も全体としてはロック調で、そのビートの効いた感じが作品世界とマッチする。原作はまだまだ続いているので結末はなく、優一郎が昏睡状態から醒めたところで物語はひとつの区切りになっている。舞台版も続編が期待される。

「終わりのセラフ」The Musical
2016年2月4日~2月11日
AiiA 2.5 Theater Tokyo
※DVD発売決定!
本編約120分、特典約35分
≪特典映像内容≫
キャスト座談会&インタビュー、稽古風景
7,500円(税別)
一般予約販売:2016年2月4日(木)より同時開始
発売日:2016年6月30日(木)
販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
http://www.nelke.co.jp/stage/owarino-seraph/

≪特典映像内容≫
キャスト座談会&インタビュー、稽古風景

(C)鏡貴也・山本ヤマト・降矢大輔/集英社
(C)「終わりのセラフ」The Musical製作委員会2016

取材・文/高浩美

2.5news(編集部)

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