『カードファイト!!ヴァンガード』はブシロードのトレーディングカードゲームであるが、”ブシロード史上最大の作戦”と銘打ってメディアミックスを積極的に展開している”コンテンツ”、アニメ化は2011年から始まり、コミカライズもされ、劇場版も展開、舞台化は今回初めての試みである。
主人公の先導アイチは引っ込み思案な少年である。そんな彼がヴァンガードファイターとして目覚め、友情や絆の大切さや己の弱さと向き合い成長する物語である。舞台セットは至ってシンプルであるが、見せ場となる”勝負”シーンはカードのキャラクターのアクションとカードを操るプレーヤーの動きがシンクロ、そこに映像をかぶせて『カードファイト!! ヴァンガード』の世界を立体的に重層的に見せる。この見せ方は人形浄瑠璃に通じるものがある。人形遣いはただ人形を操るだけでなく、遣い手自身も演技をする。この作品もまた、勝負の最中の心の迷い等、そういった細かい部分もシンクロさせ、”勝負事”の厳しさや醍醐味を観客に伝える。また、アクションの型の見せ方は歌舞伎の荒事で見るやり方とよく似ている。人形浄瑠璃と歌舞伎の手法、そこに映像や効果音、音楽を使って現代の観客に観やすく提示する。こういったやり方は作品のテイストによく合っている。
登場人物は皆、心に一種の”闇”を抱えているが、それは誰しもが持っている部分だ。クールな櫂トシキは、鉄仮面のようだが、その奥に秘めたマグマのような熱いものを、ダークな雀ヶ森レンもまた、どこか憎めない内面を感じさせる。ところどころで歌が入り、ミュージカル風な演出。ラスト近く、アイチvsレンの渾身の勝負は単なる勝ち負けを超え、一種のカタルシスを感じる。一時はPSYクオリアの闇に魅入られ、アイチは力に溺れ、自らが使っていたデッキを捨て去り、仲間であるカムイやミサキにまで傲慢な態度を取り始める。己自身が強くなったと勘違いするアイチと勝負する櫂、その試合を通じてアイチは目覚め、成長を遂げる。そしてラストの勝負へとつながっていく。
キャストはアイチ役の大平峻也始め、若手の布陣で皆、張り切って役を好演。演出の堤 泰之は「本来、テーブルの上で行われているカードファイトが、舞台全体を使って行われます。もちろん、カードに描かれたキャラクターたちは立体的になり、所狭しと戦います。そしてアイチは、ブラスター・ブレードにライブします。とにかく見せ場てんこ盛りの舞台です」とコメント。カードゲームは本来は頭脳戦。記憶力や駆け引き、瞬発力や何事にも動じないしたたかさが必要だ。続編も期待出来そうだ。
舞台『カードファイト!! ヴァンガード』~バーチャル・ステージ~
2016年1月5日~1月11日 AiiA 2.5 Theater Tokyo
DVD発売決定!
発売:2016年4月30日(土)
価格:6,800円(税抜)+送料700円
収録内容:2016年1月11日(月・祝)千秋楽の公演(いずれか1公演)+特典映像・稽古風景
http://www.nelke.co.jp/stage/vanguard/
©ヴァンガードプロジェクト/テレビ愛知 ©舞台ヴァンガードプロジェクト
取材・文/高浩美