【オフィシャルレポート】舞台「象」舞台写真&コメントが到着!

4 月 6 日〜15 日(昼)の公演中止を経て、4月 15 日(金)の夜公演から無事に開幕した、る・ひまわりのプロデュース公演『象』。数々の舞台や映像作品で活躍する小林且弥が初めて舞台の演出に挑んでいることでも話題の本作、脚本は齋藤孝の書き下ろしによるもので、物語の舞台となるのは廃業が決まったサーカス団“びっくりサーカス・ノア”だ。解団する最終日、団員たちは今後の生活の不安や不満を口にしながら後片付けをしている。殺伐とした空気を払拭させようと、見習いクラウンが皆の前で初めてで最後のパフォーマンスを披露しようとするが、彼らの“家族”の一員でもある象が業者に引き取られていない上、その代金をオーナーが持ち逃げしたことが発覚。サーカス団の団長含め、残された団員たちで象の処遇を話し合うが、事態は思わぬ方向へと転がっていく……。
中央に舞台があり、四方を客席が囲むステージ。その真ん中にそそり立つ梯子が印象的だ。梯子の上部からは電球が四隅へと吊られており、まさに“サーカス”の雰囲気。しかし床はゴミだらけ、あちこちに脚立やらバケツやら段ボール箱が散乱している。
ここで繰り広げられるのは、“サーカス”という集団内の人間関係であり、それぞれの登場人物の抱える事情であり、大切な思い出であり、不安しか見えない未来であり、忘れられない過去のトラウマであり……。だが客席から観ているとそれらは違う何かを映しているようで、彼らが劇中、何度も口にする“家族”、“ファミリー”という言葉も、連呼されるたびに暗く重たい別の意味をなす言葉のようにも思えてくる。単なるギクシャクした人間関係に見えていた彼らのパワーバランスが、置き去りにされた“象のアドナイ”の扱いをきっかけにそれぞれの感情の爆発へと繋がり、象の運命の揺らぎと呼応するかのように物語の持つ色は大きく変容していく。
キャストはクラウン見習い役の安西慎太郎を始め、眞嶋秀斗、鎌滝恵利、伊藤裕一、伊藤修子、木ノ本嶺浩、大堀こういちと、勢いのある若手から手練れの個性派までカラフルな面々が揃い、熱演。中でも不遇な過去を抱えた青年を演じた安西が終盤に見せる、狂気の淵ギリギリを踊るように歩く足さばきや繊細に伸ばした指先、哀しみが滲む背中、怖くも美しい笑顔が心に残る。
公演はこの後4月 17 日(日)まで、KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオで上演、どうぞお見逃しなく。

(ライター:田中里津子)

コメント

◆演出:小林且弥
俳優として初めて板の上に立ったのが10数年前のこと。立場が変わって演出家としての初日を迎えるにあたり、その時感じた期待と不安、高揚感、緊張感などが10数年の時を経てあの時の想いとして自分の中に再生されています。でもやっぱり今回は素晴らしいキャスト、スタッフの力で不安よりも期待と高揚感の方があの時より大きいかも。
2度とはない初演出の舞台、是非皆様劇場にお越しください。

◆脚本:齋藤孝
初めての舞台、初めて誰かに託す脚本。
書き上げたものに手応えを感じたものの、一抹の不安はなかなか消えませんでした。自分で言うのもなんですが、真面目な性格は必要以上に推敲という名の迷走をさせます。
来る日も来る日もスターバックスで濃い目のコーヒーをおかわりし、店員に顔を覚えられ、「いつもありがとうございます」の挨拶に苦笑しながら、改訂を繰り返しました。
カフェインで練り上げられた脚本を、稽古を重ねる中で演出家と共にブラッシュアップし、俳優たちのひらめきをエッセンスに、象はいつの間にか精悍に形作られていきました。
不安の影はもうありません。
幾つもの困難を乗り越えて、いよいよ象は野に放たれます。円形の大地を縦横無尽に駆け回るその勇姿が、多くの人に目撃されることを心より願っております。

◆主演:安西慎太郎
色んな気持ちが混じっていますが今一番は、お客様の前にたてるということがすごく幸せだし尊いことだなということを改めて感じています。
その中で今回、且弥さんが演出ということでいつも以上に僕自身が役に対しても作品に対しても皆さんに対しても愛情を注いできたつもりです。僕が主演ではありますが、チームプレイの作品なので全員の雄姿を是非楽しみにしていただけたらと思います。

撮影:岩村美佳

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Rie Koike