昨年と比較するとシンプル、かなりの部分を削ぎ落し、エッセンスだけを抽出してそこから再構築した感がある。象徴的な動き、映像もテクニカルな印象は全くなく、むしろ“手作り”な感触、制作側のこだわりを感じる事が出来る。オペラ形式ではあるが、観た印象は前衛的、かつ挑戦的。ピアノの旋律は状況やキャラクターの心情を繊細に、時には大胆なタッチで物語を雄弁に語る。ピアノは観客から見えないところにいるのではなく、視覚的に歌劇『BLACK JACK』の世界に含まれている。コミックの舞台化、単純に“誌面から飛び出した”というのではなく、原作者が語りたかったことをクリエイターの目線でビジュアル化、ライブ化する。こういった表現方法は他の作品にもよい影響を与える。来年は米子公演が控えているが、“舞台は生もの”、ここから多少の手直しもされるかもしれないが、さらに進化する予感がする。
2015年上演 歌劇『ブラックジャック』世界初のMANGAのオペラ化
http://animeanime.jp/article/2015/09/09/24840.html
【公演データ】
歌劇 「BLACK JACK」
浜松公演:2016年9月18日(日)
アクトシティ浜松中ホール
米子公演:2017年2月26日(日)
米子市公会堂
原作:手塚治虫「ブラック・ジャック」
<主催・企画制作> 公益財団法人浜松市文化振興財団
<制作スタッフ> 音楽監督・ピアノ:宮川彬良/構成・演出・振付:長谷川寧(冨士山アネット)/脚本・歌詞:響敏也 監修:田尾下哲/美術:杉山至/衣裳:山本亜須香(FUGAHUM)/演出助手:青木真緒 振付助手:高谷楓/映像:中澤陽/照明:奥田賢太/ヘアメイク:林摩規子
/伴奏ピアノ:加藤真弓、近藤麻由/カバーキャスト:井上大聞/舞台制作:㈱ステージループ
<出演>
大山大輔/鷲尾麻衣/水船桂太郎/吉田裕太/髙畠伸吾/鈴木玲奈/今井学/今野沙知恵/加藤宏隆/中島実紀/田上知穂/趙知奈
<企画協力>株式会社手塚プロダクション
©手塚プロダクションン
※手塚の塚は旧字体です。
取材・文/高浩美