【オフィシャルレポート】『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Track to Miracle- 初日公演レポートが到着!

スマートフォン向けゲームアプリ『あんさんぶるスターズ!』を原作とした2.5次元舞台最新作にして新シリーズの第1作、「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Track to Miracle-」が、2022年2月19日(土)に東京・日本青年館ホールにて開幕した。

本舞台は、原作アプリのメインストーリー第二部「キセキ」シリーズの「輝石☆前哨戦のサマーライブ」と「軌跡☆電撃戦のオータムライブ」をベースとした二幕構成となる。アプリのメインストーリーを描く舞台は、2018年に上演された「『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ』〜To the shining future〜」以来、実に4年ぶりとなる。
新たな始まりの幕が開き、制服姿のアイドルたちがステージに現れた瞬間、会場の空気が一気に“夢ノ咲学院時空”になった。

舞台は夏。【DDD】で優勝した『Trickstar』は、夢ノ咲学院主催の合同イベント『サマーライブ』に、玲明学園の『Eve』とともに出演することになる。4人は合同レッスンで目の当たりにした『Eve』の高い実力に驚きながらも、彼らの指導によって着々とレベルを上げていく。親切で友好的に思える『Eve』だったが、実は、彼らにはとある思惑があるのだった――。

第一幕から元気いっぱいに登場した『Trickstar』は、「これぞ『あんステ』!」と思わず拍手したくなるような唯一無二の空気感を作り上げ、物語を牽引した。氷鷹北斗(演:山本一慶)、明星スバル(演:竹中凌平)、遊木 真(演:松村泰一郎)、衣更真緒(演:谷水 力)の4人は、初演からの連投組も初出演のキャストも一丸となって『Trickstar』らしいチームワークで感動を生み、“主人公ユニット”らしく観客たちの心をしっかりと掴んだ。

そして『あんステ』では初登場となるユニット『Eve』は、ファンの想像を軽々と超えてくるキャラクターの再現度だった。明るく爽やかな楽曲に乗って「ふたりでひとつの生き物のように振る舞う」という巴 日和(演:宮城紘大)と、自らを「どん底から這い上がったハイエナ」と呼ぶ漣 ジュン(演:岸本勇太)のパフォーマンスは、夢ノ咲学院のアイドルとは異なるオーラを放っていて驚かされる。原作ストーリーを知っている人にとっては、まさに理想が具現化したステージだったと言っていいのではないだろうか。
そして、季節は秋に移り変わる。『Trickstar』は、秀越学園で行われる『オータムライブ』に招待され、『Adam』と出会った。秀越学園では手厚い接待を受けながら過ごす4人だったが、見えない罠に嵌められ、次第にまとまりを失っていく。さらに、『Trickstar』にとって想像以上の悪条件のもと、『オータムライブ』が行われることになる。

第二幕でフィーチャーされるのは、年末の『SS』で最大のライバルと予想される、『Eden』を構成するもうひとつのユニットの『Adam』だ。彼らもまた、舞台では圧倒的と言うほかない存在感を生み出していた。相手に威圧感を与えながらも、幼い子供のような純粋さを内包する乱 凪砂(演:松田 岳)と、“毒蛇”と呼ばれる狡猾さで、己の野望を成就させようと目論む七種 茨(演:橋本真一)のステージは、『Eve』の2人のそれとは対照的なエネルギーに満ちている。『Trickstar』とは敵対する存在でありながら、その抗いがたい魅力に心を奪われた人もきっと多いはずだ。

さらに、この舞台で驚かされるのはキャストたちの“キャラクター再現度”だけではない。そのうちのひとつは、いわゆる旧『fine』と呼ばれるユニットのパフォーマンスだ。天祥院英智(演:笹森裕貴)、乱 凪砂、巴 日和、青葉つむぎ(演:工藤大夢)の4人からなる旧『fine』は、かつて英智が革命を成すために作ったユニットである。『Eve』や『Adam』のパフォーマンスをカリスマと表現するなら、旧『fine』はまさに“伝説”と言えるものだ。
彼らのパフォーマンスそのものは原作アプリですら詳細に描かれてはいなかったので、まさかこのステージが観られるとは……という衝撃だった。
ほかに嬉しいサプライズとしては、七種 茨と伏見弓弦(演:飯山裕太)のやりとりも挙げておきたい。彼らのつながりは原作ファンにはお馴染みだが、「サマーライブ」「オータムライブ」のストーリー公開当時にはまだ明らかになっていない話だった。こちらもまた、大いに注目してほしいポイントと言える。
そのほかにも紹介したい場面は枚挙にいとまがないが、ひとつ伝えるなら、舞台全体を通して、あの名セリフはどこで聞ける? あの名シーンはどんなふうに再現される? 曲は何を歌う? という期待が「これが見たかった!」に昇華される瞬間の気持ち良さは、筆舌に尽くしがたいものだということだ。これはぜひ、すべての『あんスタ』ファンに体験してほしい。

今回の舞台は、脚本・演出をほさかよう氏が担当した。『あんステ』シリーズでは初めての参加となるが、これまでの『あんステ』の楽しさやワクワク感・キラキラ感はそのままに、さらに濃密なステージ体験を見事に実現している。原作の膨大な数のエピソードを丁寧に拾って組み合わせ、必要な箇所にはアレンジが加えられているものの、違和感を抱かせることはない。アンサンブルキャストの登場もシリーズでは初だが、アイドルたちの通う“学校”らしさの表現に一役買っており、世界観再現の解像度を上げている。

上演は約3時間という長丁場ではあるが、観た人はおそらく皆、「とてもそうは思えないほどあっという間だった」と答えるだろう。そして、「サマーライブ」「オータムライブ」とくれば、次は……と、早くも期待しているファンは多いに違いない。だがひとまずは、この厳しい情勢の中で幕を開けた“キセキ”の舞台を、ぜひたくさんの人に観劇してもらいたい。「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Track to Miracle-」は、数えないほどの「これを観たい、聞きたい、体験したい」を叶えてくれる一作だ。

取材・文:玉尾たまお

あらすじ

【DDD】に優勝し、年末の『SS』への出場権を得た『Trickstar』。
そんな彼らの前に新たなライバルが立ちふさがる―――

【第一幕】
英智の計らいで、夢ノ咲学院主催の合同イベント『サマーライブ』に、玲明学園のユニットである『Eve』と出演することになった『Trickstar』。『Eve』と合同レッスンをしていくなかで、各々スキルを磨きレベルアップしていく『Trickstar』だったが、妙な違和感を感じる真。違和感の正体をつかめないまま、『サマーライブ』当日を迎えてしまう。

【第二幕】
今度は秀越学園の『Adam』から、彼らの学園で開催される『オータムライブ』に招待された『Trickstar』。『サマーライブ』を教訓に警戒する『Trickstar』だったが、出迎えにきた七種 茨の友好的な態度に北斗、スバル、真は戸惑う。一方、先に学園内に立ち入っていた真緒は乱 凪砂と対面する。巧妙な『Adam』の言葉に、『Trickstar』に軋轢が生じ始めるが……。

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Rie Koike