海外の小劇場で生まれた傑作を東京の舞台へ。このコンセプトの元に1997年に誕生したのがThe Other Life、この公演が9回目になる。
今回の作品は『BLOOD RELATIONS ~血のつながり~』米国犯罪史上最大級の迷宮入りミステリー“リッヅィー・ボーデン事件”、1892年8月、米国マサチューセッツ州ボストン近郊のフォールリバーで、町の豪農夫妻が何者かに手斧で乱打され頭蓋を打ち砕かれて死亡するという凄惨なものであった。被害者の次女リッヅィー・ボーデンに疑いの目が向けられたが、証拠不十分で不起訴に。そして、この事件の犯人は未だ不明のまま迷宮入りとなっている。
ストーリーは事件から10年後が舞台。主人公リッヅィー(青木隆敏)と、彼女と親密な関係にある「女優」(松本慎也、久保優二/Wキャスト)は、事件の真相を追及するために、10年前の事件を芝居で再現する。その劇中劇では、「女優」が過去のリッヅィーを、リッヅィーが当時の女中ブリジットを演じるという、演劇的な仕掛けを施している。19世紀末は、まだ特に女性にとって生き辛い時代だ。真実はどこにあるのか、主人公を取り巻く状況が明らかになっていく。家族関係、価値観、財産、社会の慣習、そういったものが主人公を苦しめる。女優がリッヅィーを演じることによってそういったことがじわじわと浮き彫りになっていく。“外的”な要因によって精神が引き裂かれていく様は観客の心に刺さる。負の感情が大きくなっていき、リッヅィーの行動や発言は次第に狂気を帯び、崩壊していく。