本日、東京・よみうり大手町ホールにて舞台「文豪ストレイドッグス 太宰、中也、十五歳」が開幕、12 日(火)まで東京・よみうり大手町ホール公演を行ったのち、10 月 16 日(土)から 17 日(日)まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホール、10 月 21 日(木)から 24 日(日)まで東京・シアター1010 大ホールにて上演いたします。
また、本作は東京公演にてライブ配信を実施いたします。配信では、公演ごとに異なるブロマイド特典や、キャラクターにフォーカスした映像収録など、配信限定のコンテンツをお楽しみいただけます。さらに、アーカイブ期間中は何度でもご視聴いただけます。
シリーズ累計850万部超の大ヒット作「文豪ストレイドッグス」 舞台化第6弾
現在のヨコハマより、溯ること七年前。「ポートマフィア」の太宰 治は、「羊」の長・中原中也と出会う。
――これは、「双黒」始まりの物語である。
舞台シリーズすべての演出を手がけ、作品世界の魅力を知り尽くす中屋敷法仁の脚本・演出のもと、少数精鋭の実力派キャストが集結いたしました。
中原中也役に、その圧倒的な存在感を鮮烈に放つ俳優・植田圭輔。太宰 治役に、新たな太宰を創り上げる田淵累生。ポートマフィアの武闘派組織“黒蜥蜴”の広津柳浪役に加藤ひろたか、ポートマフィアの闇の華の尾崎紅葉役に夢月せら、ポートマフィアの首領・森 鴎外役に根本正勝。中也が率いる「羊」の構成員・白瀬役に伊崎龍次郎、ポートマフィアの構成員で、森 鴎外派に付く異能力者・蘭堂役に細貝 圭。
いずれ今のヨコハマに繋がる、端緒の物語。
「異能」の力を持つ者たちを擁する「武装探偵社」と「ポートマフィア」がしのぎを削る架空の都市ヨコハマ。2017年の『文豪ストレイドッグス』初舞台化から4年という膨大な時間と5作品の上演を重ねて、通称「文ステ」は壮大に物語を紡いできた。今回上演される『太宰、中也、十五歳』は“現在”から遡ること、7年前の話。のちに「双黒」と呼ばれる二人の少年、太宰 治と中原中也の出会いが描かれる。キャストの力強い演技で浮かび上がる人間ドラマとイマジネーション溢れる「異能」バトルで、『文豪ストレイドッグス』の世界観を実体験できる。
7年前、ポートマフィアの新首領・森 鴎外に初仕事を命じられた太宰 治は、未成年のみで構成された互助集団「羊」のリーダーで「羊の王」と呼ばれる十五歳の少年、中原中也と最悪の出会いを果たす。互いに嫌い合う二人だが、ヨコハマに広がる「アラハバキ」の噂の真相に迫るため、共闘をすることに……。
太宰 治を演じるのは田淵累生。第5作『DEAD APPLE』で初登場し、今回で2度目の出演だ。『DEAD APPLE』から今作の間には映画『文豪ストレイドッグス BEAST』の撮影があり、映像作品でも太宰を演じた経験を生かして、今作に臨んだ。15歳らしく振る舞うが、ふと見せる居ずまいに太宰が本来持つ怜悧さを感じさせる。相反する表現で太宰の奥深い内面を覗かせる、魅力的な太宰だった。
本作の大きな見どころとなるのは中也と太宰の共闘だ。初めて会ったときから毛嫌いし合っていたけれど、「異能」の相性は抜群によい二人。図らずも組むことになった二人からバディ感が立ち上がる。思えば太宰が、負の感情であるにせよ、ここまで心を動かされたのは中也が初めてなのかもしれない。「生きるなんて行為に、何か価値があると、本気で思ってるの?」と言っていた太宰の心に、中也が変化を起こした。人は人と関わることで変わるのだと、そんなことも感じさせられた。
関わりといえば、ポートマフィアの新首領、森 鴎外の太宰や中也に及ぼす影響は大きい。森と太宰の関係は親子のようでもあり、「羊の王」の中也が森と出会って「長」としての在り方に心を打たれる。中也が大きく成長するのも、森の存在あってこそ。森 鴎外を演じるのは、初登場となる根本正勝だ。ひょうひょうとした部分と組織の「長」としての冷徹さを併せ持つ森を、豊かな演技経験を生かして懐深く演じた。
そして、同じく初登場となったのは蘭堂役の細貝 圭。蘭堂の持つ独特の存在感を見事に放ち、物語の世界観を確実に形作る。作品の見せ場となるのは、蘭堂が「異能」を見せるシーン。プロジェクションマッピングと演技が一体化して、物語の世界に包み込まれたような没入感が味わえる。
脚本・演出は中屋敷法仁。第 1 作から演出を手掛ける中屋敷は、複合的な表現で『文豪ストレイドッグス』の世界を立体化する。俳優の身体表現を駆使して演劇的な高揚感をかき立て、照明など最新鋭のテクニックで臨場感を高める。舞台となるヨコハマ「擂鉢街」を象徴する階段状のステージが左右に割れる大仕掛けで、スピーディな物語展開を実現した。原作を見てどう演じるのだろうかと思っていた「電子遊戯場(ゲームセンター)」のシーンは「こう来たか!」という表現で、これはぜひご覧いただきたい。
中屋敷演出の真骨頂は、キャラクターが生きていること。今作では太宰が、中也が大きな物語の中でもがくように生きる様がリアリティを持って描かれる。二人の息吹を、しかと感じることができる。壮大な異能力アクションバトルであると同時に、緻密な台詞劇として人物像に、人間ドラマに肉薄する。生きる二人と同じ空間を共有できるのが、舞台を観る醍醐味だ。
ライター:大原薫
舞台写真撮影:田中亜紀