『ダイヤのA 』the LIVE (2015年8月上演)
幕開きは野球の試合開始の、あのサイレンの音だ。青道のメンバーが登場し、”俺たち、青道!”と連呼、それからオープニング、主題歌にのってアニメさながらにタイトルロールやキャラクターが映し出される。ここで早くもテンションがアップ、沢村が青道に入部する下りから始まる。さっそくの遅刻、原作通りに物語は流れていく。タメ口な上に、かなりのビッグマウスな沢村、先輩たちからは”なんだ、あいつ~”的な目で見られるも一向に気にしない。原作・アニメから抜け出たような沢村を小澤廉が元気よく演じる。ガハハ笑いは、もう沢村そのものだ。
物語は沢村が青道の野球部に入り、練習試合を経て一軍入りするところまで、全体から見ると、ほんの出だしの部分だけである。だからこそ、登場人物の関係性、内面をきっちりと描ける。エピソードはほとんどはしょられていない。些細なエピソード、プリンを食べてしまった下りまで描かれているので、ここはファン的には嬉しい。原作同様に沢村中心に進行するが、サブキャラもしっかりと描いているので群像劇の要素もある。皆、それぞれの想いがある。その心のひだまでに入り込む演出、とりわけ、滝川・クリス・優のエピソードは泣かせる。将来を嘱望されながら、故障のために本来の力を発揮出来なかったもどかしさを内に秘め、沢村をサポートする。そんな想いに気づく沢村は滝川の期待に応えようと奮闘する。滝川もまた、沢村の一途な姿勢に触発される。その関係や姿勢は清々しく、ふと忘れかけていた大事なものに気づかされる。そして一軍入りのメンバーの発表、”選ばれた者は選ばれなかった者の分まで戦う”、それは現実でも同じことだ。
ビジュアル的には”野球をどうやって表現するのか”に関心が集中するが、ここは1つのパターンのみでの表現ではない。映像・効果音を駆使したり、あるいはピッチャーを舞台上部にすえ、その下にキャッチャー、バッター、審判を配する等、シーン毎に変えていたのは秀逸だ。また野球ならではのプレー、塁に出る、走る、スチールする、キャッチャーがランナーを刺す、といった場面は映像・効果音を使い、舞台の上下部分を有効に使い臨場感を出していた。ひとつの表現に固執せず、シーン毎に表現を変え、メリハリをつける。また、野球はチームプレイ。ピッチャーの動き、バッターの仕草、キャッチャーの構え等のそれぞれのコンビネーションも上手くハマり、観客は『ダイヤのA』の世界に没入出来る。クリエイター、キャスト、スタッフのチームワークの良さも感じる。舞台版の主題歌『Grateful Story』が作品世界を盛り上げる。ちょうど夏の甲子園時期リアルの高校野球シーズンと重なっての上演であった。
※キャラクタービジュアル写真は『ダイヤのA』The Live Ⅱの写真となっております。
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■収録内容
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©寺嶋裕二・講談社/「ダイヤの A」The LIVE 製作委員会
取材・文/高浩美