【オフィシャルインタビュー】舞台『12人の怒れる男』桑野晃輔さん×糠信泰州さん×竹下健人さんインタビュー

キムラ真率いる劇団ナイスコンプレックスの舞台『12人の怒れる男』がいよいよ大阪、東京で開幕する。
本作は1954年にアメリカのテレビドラマとして誕生し、映画化や今も舞台化が続く名作と言われる法廷サスペンス。
ナイコンでは『純粋に芝居と向き合いたい。上質な空間を提供したい』という想いから2018年より定期的に本作を上演し4シーズン目。今年も熱い漢たちが揃った。
作品を代表して、陪審員7号をWキャストで演じる桑野晃輔さんと糠信泰州さん、陪審員11号役の竹下健人さんに話を聞いた。

陪審員7号 役(Wキャスト):桑野晃輔さん

陪審員7号 役(Wキャスト):糠信泰州さん

陪審員11号役:竹下健人さん

桑野晃輔さん×糠信泰州さん×竹下健人さんインタビュー

若手ベテラン関係なく皆が丸裸になって殴り合いをするような作品

出演が決まった感想から伺います。

桑野「素直に嬉しかったですね。不朽の名作にチャレンジできることは役者としてみんな嬉しいんじゃないかな。法廷というワンシチュエーションの中でこの役を通してどう生きてぶつかり合えるか、どんな化学反応が起きるか楽しみです。キムラさんからの出演オファーはラブレターをもらった気持ちです。久しぶりにキムラさんとご一緒でき、少しでも成長した姿を見せられたらと思います」

糠信「決まった時は嬉しかったですね。この作品はガチンコ芝居で、みんなで向き合っていく作品。今までやってきたものとはまた違う魅力があり、とても楽しみです。初共演の方も多く、しかもベテランのみなさんに囲まれることを思うと緊張と不安でドキドキの気持ちはたくさんありますが、楽しんで自分らしい陪審員7番を演じることができたらいいなと思っています」

初出演の初々しいメッセージがありました。そんな時もあったなーとしみじみな竹下さん、出演としては3回目を数えますが心境はいかがでしょうか。

竹下「あははは!待ってください!僕も初心のつもりでここにいますので!(笑)。 僕は今回3回目の出演になりますが、今回は2年前の初出演の時と同じ陪審員11号役を演じます。去年は7号を演じまして、実は後半で11号と7号がバチバチに言い合うシーンがあるんです。2年を経て新しい二方をお迎えし、どんな変化が起こるのかまず楽しみです。何よりこの作品の面白いところは、若手ベテラン関係なく皆が丸裸になって殴り合いをするような、そんな場所だと思っています。良いところは勉強させていただき、新鮮な気持ちでやらせていただけたらと思っています」

この作品のカンパニーはどんな雰囲気ですか?

竹下「 “怒れる男”というタイトルですが、みんな優しいんですよ。それはキムラさんが大好きなキャストを集めているから。初参加の時は心配でしたが、すぐに輪の中に入れてくださって、常にディスカッションができる場なんです。それはキムラさんがアットホームな空気を作ってくださるのもありますし、芝居が好きという想いの方々がその場所に集っているので、どんどん自分がやりたいことにチャレンジできる場だと思っています」

桑野「シリーズとして続いていますが、新しい作品になれるように僕らもやっていかなあかんなと思っています。びっくりしたのは、大阪公演で関西方面出身の方は関西弁でセリフを話してくださいと(笑)。これはキムラさんならでは」

竹下「セリフが方言になる作品はなかなか無いですよね」

桑野「前回もそうだったんですか?」

竹下「僕は7号も11号も大阪公演ではコテコテにやりました。この作品は色々なカンパニーが上演していますが、方言版は唯一無二だと思います」

混乱はしないのですか?

竹下「思ったよりスムーズに切り替えられて、劇場の空気感も違いますし、みなさんスイッチがパッと入って、同じ作品なのにこんなに違うかと。発見が多かったですね」

糠信「この作品は大阪と東京でメンバーも変わるんです。たくさんの方とお芝居ができるところがとても貴重な経験になりますし、見どころだと思います。しかも7号ってとにかく喋るんですよ。ワンシチュエーションでステージにずっと出ていて、12人全員と怒り絡み合ってお芝居ができる。大変そうですけどとても楽しみですね」

桑野「僕は関西出身なので、上手く切り替えられるとおっしゃっていましたが、ちょっと怖くなってきました」(全員笑)

お客様が笑うくらいコメディなところがあってもいい

7号はがさつなセールスマン。他の人々に劣等感を抱かせて喜ぶが、実は内心、劣等感に囚われている人物です。何を意識して演じようと?

桑野「キムラさんから『怒れる男だから』といってシリアスにならずに、お客様が笑うくらいコメディなところがあってもいいんだよ、笑える作品だから、と言っていただいて、すごく安心しました。気張らず自然に役が作られていくんだろうなと。人間は心の中に劣等感や嫌悪感を抱いているとは思っていて、7号にもそれがあって、でも実は有罪無罪の判決に執着は無くて、早くこの場から去りたいと思っている人。その辺りを念頭に置いて役作りができたらと思っています」

糠信「大声でがさつな7号は自分と比べると真逆な性格で、僕は普段から突っかかったり怒ったりしない静かな方なので、役者の醍醐味である違ったタイプを演じることが楽しみです。今までちょっと弱そうな役が多かったので、この役は未知な事も多くすごく良い経験になると思っています。“何に対して自分が怒るのか”人間らしさを意識して向き合って、そんな役づくりができたら」

そして竹下さんは再び移民の男11号を演じます。迫害で苦しんで来た経験から真剣に正義を求めている役どころです。

竹下「衣装を着た時に懐かしい気持ちになりましたね。11号と僕は似ている部分がたくさんあって、その部分を大事にしていきたいです。対峙する7号も演じてきたので、自分がこうボールを渡せば相手がこう返してくれるんや、とか勉強になることばかりで。それを今回フィードバックして生かしていけたらいいなと思っています。より熱い11号をお届けします」

4つのチームがあり全部違うものになってくる

自分にとっての課題や挑戦とは?

桑野「泰州君が言っていた通り出ずっぱりなので、お腹を壊さないように(笑)。舞台中にトイレに行けないので、そこは全公演注意したいなと」

糠信「ステージ上に水飲み場があると聞きましたが、本当に水を飲めるのですか?」

竹下「飲めるんですよ。僕は緊張しすぎて飲み過ぎてほんまにトイレに行きたなって、しかも一番盛り上がっている終盤!(笑)。経験者として水の飲みすぎは注意です!」

糠信「気を付けます! 僕はチャチャを入れたりかき乱す役だと思っていて、このタイプは演じたことが無く自分のカラを破ることは勇気がいりますが、7号としてガツガツいけるように。それが挑戦ですね」

竹下「11号はなかなか意見を言えないキャラクターなので、実際セリフも限られては来ますが、その限られたセリフの中で思いっきり心を動かしたいです。一言一言に魂を込めて生まれるエネルギーをこれまで以上に出していけたらと思っています」

見どころや楽しみにしていることは?

桑野「やはり上杉祥三さんとの共演ですね。ご一緒するのは初めてなので楽しみです。あとはフッキー(藤原)さん。もちろん共演経験はありますが、こんなにガッツリ絡むのは初めてなので楽しみです」

糠信「唯一共演している方が桑野さんとフッキーさんですが、2人とも別チームでお客としてお二人の芝居を見られそうで、それはとても楽しみにしています。見所としては、4つのチームがあり全部違うものになってくると思いますので、それぞれ楽しんでいただきたいですね」

竹下「2人とは最終的にガチガチに戦うのですごく楽しみです。あと喋っているところ以外の動きにも注目して見てもらえたら。セリフがなくてもお芝居をしていないとすぐバレちゃうんです(笑)。以前は役者に近いロイヤル傍聴席というシートがありまして、気が抜けないシーズンもありそれが魅力の一つで。この人、この時はこんなことをしていたから、あの時はこう動くんだ、とか。一度や二度では見つけられない発見があるので、何回でも見ていただける作品になっていると思います」

桑野「色んな12人の男がいて、その中で誰か一人は共感できる言葉や人物がいると思います。そして今日はこの人と決めて見てもらえると、また違った楽しみ方もできます。劇場でお待ちしております」

糠信「陪審員たちは物語が進むにつれて気持ちが変わっていきます。その気持ちの変化はどこで起こったのか、何が心に刺さったのか。心が動いた瞬間に着目して観るととても面白いです。同じ役でもWキャストでは違いますし、お客様と一緒に楽しめたら」

竹下「今回も自分が持っているエネルギーやお芝居に対する想い、このご時世に対すること、いろんな想いを全部作品に乗せることができたらと思っています。そしてそのエネルギーを受け取っていただいて、明日の活力になるような、そんな作品を届けたいです」

インタビュー・撮影/谷中理音

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Rie Koike