2021年6月24日(木)、 「ARGONAVIS from BanG Dream!」による舞台「ARGONAVIS the Live Stage」が東京・シアター1010にて開幕した。
本舞台には、 TVアニメやアプリ、 リアルライブでキャラクターの声と演奏を務めるキャスト陣が出演し、 コンテンツの世界観・キャラクター設定と、 アニメシリーズの構成・脚本を手掛けた毛利亘宏氏が脚本と演出を担当する。
公演では、 アニメでも描かれた函館の大学生バンド・Argonavisの結成と、 札幌で活躍するカリスマバンド・GYROAXIAとの出会いの物語を追体験することができ、 ライブシーンでは、 キャストによる生演奏が繰り広げられる。 本稿では、 舞台初日の模様をお伝えしていく。
ステージを見守る観客は、 ペンライトを振り、 歓声を上げられない代わりに大きな拍手で応える。
昨今の本プロジェクトのリアルライブではおなじみの光景だが、 いつもと違うのは観客が着席しているという、 舞台ならではの事実だろうか。
そしてステージはそのまま、 七星 蓮(演/伊藤昌弘)がバンドの道のりを語り始めるセリフから、 シームレスに過去の物語へと突入していく。
そんな中、 明るい人柄を持つギターの五稜結人(演/日向大輔)と、 慎重派であるベースの的場航海(演/前田誠二)は、 バンドを組むことを思い立つ。
そして2人は、 類まれなる才能を持つ蓮をバンドに誘い、 元野球部で多方面に渡る“天才”であるキーボードの桔梗凛生(演/森嶋秀太)と、 実家の農場のためにお金を稼ぐべくドラムを始めた白石万浬(演/橋本祥平)を加え、 Argonavisを結成する。
これまでのリアルライブでは観られなかった、ステージ衣装ではない“私服”のメンバーによる演奏を喜んだファンも多いだろう。
舞台のオープニングでのパフォーマンスと比べ、どこかフレッシュさを感じさせてくれるのも見事だ。
バンドの中心であり、傍若無人な天才のボーカル・旭 那由多(演/小笠原 仁)、那由多を世に知らしめるためなら犠牲を厭わない、リーダー兼ギターの里塚賢汰(演/橋本真一)、那由多の才能を認めながらも反発するリズムギターの美園礼音(演/真野拓実)、自称“宇宙人”でマイペースなベースの曙 涼(演/秋谷啓斗)、飄々とバンドを客観視するドラムの界川深幸(演/宮内告典)。
すでに札幌で高い人気を誇る彼らは、普段は極めてドライな雰囲気でありながら、ひとたび演奏になれば燃えたぎるような熱を纏う。
楽曲の演奏中、客席は真っ赤なペンライトで埋め尽くされ、5人の一挙手一投足を見逃すまいと息を飲む様子さえ感じるほどだ。
かつてGYROAXIAに在籍していた結人の葛藤、蓮と那由多という天才ボーカルどうしの出会い、万浬の事故と復帰……。
ストーリーは極めてテンポ良く進んでいくものの、メンバーがそれぞれに抱えている想いやできごとを丁寧に描いており、すでにアニメで展開を知っているファンでも、あらためて心を動かされたり、涙したりすることもあるはずだ。
そして2つのバンドの運命は、やがて「Destiny Rock Festival」という大型フェスで、再び交わることになる――。
キャストたちが繰り広げる舞台には、アニメとはまた異なる高い熱量がある。
それはキャラクターたちの心に生まれた想いが、同じセリフひとつとっても、生の声や演技によってより強く伝わってくるからだ。
2.5次元舞台は、「原作では見られなかった細かな表情の動きや、フレーム外にいるキャラクターの様子を知ることができる」のも醍醐味のひとつだが、本作はそれに加え、“原作と同じ生身の演者による、再現の重量感”のようなものも強く感じさせる。
そして、彼らが劇中で披露する演奏は、“ライブ”でありつつ、“物語を構成する一部”でもある。
数々のリアルライブを経てメンバーどうしの絆を深め、ますます安定感を増した全身全霊のパフォーマンス。
ひとりひとりが手に入れた新たな歌唱や演奏技術によって、この物語に圧倒的な説得力を生んでいる。