――そろそろ質問に入らせていただこうと思うんですけど。初演(4/20~4/25)の手応えみたいなものはいかがだったでしょうか。『磯部磯兵衛物語』って、結構難しいお芝居じゃないですか。ギャグコメディって、普通の泣かせる芝居よりむずかしいと思うんですが、演じてみての手ごたえであるとか、お客さんの反応みたいなもので、ここは良かったみたいなものは、ありましたか。
井上:もともと、僕たちとしては、ここはお客さん笑ってくれるだろうなっていう狙いどころがあって、いざ本番開けてみたら、意外と笑ってくれなかったり……逆に僕たちが予想してなかった「あっ、こんなとこでお客さんの笑いが来るんや」っていうのが本番で得られて、そういうところも遊べるんやなっと思ったんで、色んなところで笑いどころが見つかるんだなって実感しました。
――中山さん、どうですか
中山:劇団が単独で2.5次元舞台をやるっていうのは、珍しいケースだと思うんですね。外から集めてくるとかじゃなくて、配役を基本中にいる人材で決めていく形は。
――出演者は、ほぼPatchさんですからね
中山:そうなんですよ。似てるキャストを集めて呼んでくるのが普通のパターンなんですけど、劇団内で配役っていうので、どうキャスティングをするのか演出の末満さん含め、迷ったって思うんですよ。
――でも「探してきたんか!」っていうぐらい、皆さんの役への寄せ具合が凄い。
中山:ですよね。ぼくも母上ってことで、最初心配やったんですけど……いざ! 衣装、メイク、カツラとかやっていただいたら、これイケルなぁって思ったんです。
――事前のリリースでいただいた写真と見比べて、うわっ! 登場人物のまんまや! って思いましたね。
中山:ですよね
井上:ひゃっひゃっひゃっ……(大笑い)
中山:そっくりですよね、みんな。
――よくここまで作り込んできたなぁ! って感じでしたね。
中山:まず、絶対原作とかPatchファンの方が来て下さるのはわかってたんで、ファンの期待を、どう越えるかっていうところで……結局ね、役作りだと思ったんですよ。役作りで、キャラクターに寄せていった。
――役者さんがキャラクターに寄せてきたように似てる……というか、「そのまんま」と感じたんですが、意識してこんなところに気を配ってた、みたいなのはありますか?
井上:そうですね……磯兵衛を演じるときに、僕としては、ただダラダラした青年を演じるのではなくて、見ていてホッとするような、安心するような、愛されるキャラクター……漫画でも実際そうですし、こうなにか共感を得られる……「ああ、わかる。磯兵衛の気持ちもわかる」っていうような人物像は意識しましたね。
――磯兵衛って単なる怠け者じゃなくって、めんどくさがりなんですよね。
井上:そうですよね。
中山:楽したい、とにかく楽したい。
井上:楽したい、楽なほうを一生懸命考えて考えて……
――それ、そのままやったほうが楽なんちゃうのみたいな。
井上:考え方の方向性が全然違いますよね。ゆるいって感じで。
――そういう「ゆるさ」の部分をいかに出すかってとこですか。
井上:そうですね。
――中山さんは、今回、歌舞伎で言うところの女形ですよね。女性役で、それも割りといい年のお母さんの役じゃないですか。けっこう大変やったと思うんですけど。
中山:いやぁ、大変でしたよ。僕ね、最初は磯兵衛やりたかったんですよ。劇団内オーディションのときに第一希望、磯兵衛で出したんです。でも末満さんから「中山の母上、おもろいなぁ」ってキャスティングしていただいて、それで、男だからできる女性をやろうと思って。
女性が女性やるんじゃなくて、男が女性を演じるときは、その男という武器をつかわない手は無いですよね。芝居の途中でやりましたけど“ペットボトルの水飲んでぶっ掛ける”のとか、なんかチョコチョコ「男出てるやん!」っていうさじ加減で、絶妙なバランスでね。
――女性がね、女性を演じると生々しくなりすぎるんですけど、いっぺんひっくり返って、男性が演じてるところで、我々が持ってる中年のオバサン像っていうかお母さん像みたいなところが出てましたよね。
中山:そうですね。でも、子供に対する愛だけはすばらしいって言う、そのあたりが見えてたんじゃないかなって思うんですよ。
――そうですね。でも……大変やったでしょ、歩き方とか。
中山:ホント、だから……そう、まずは所作からでしたね。そこで妥協したらしょうもない学芸会みたいなのになっちゃうので、歩き方・立ち方、手の“しな”の作り方とか、いっぱい歌舞伎とか映像とか見て、研究しましたね。
――今日、中山さんとお会いして、母上のときは、肩をこうスッと落として立ってはったのが、今日は普通にこう(堂々と胸を張るポーズ)じゃないですか。そのあたりでも……
井上:たまにこうですけどね(極端ないかり肩の物まね)
中山:ならへんって!(笑)
――工夫してやってはったんやなぁと思って。
中山:いやぁ、変なところが筋肉痛になりましたけどね。
――それから、最後の歌うところはハイライトじゃないですか
中山:歌うとき、気持ちよかったですね~。
井上:最後の千秋楽の日、感動したもん。なんか……。
中山:ばかばかしい歌やけど、なんか感動するみたいな。
井上:意味深に聞こえて……息子を歌う歌じゃないですか、なおさら感じるものがありました。なんか「ありがとう」みたいな感じになって、感動しましたね。
――非常にすばらしかったですね。
中山:ああいやぁ……嬉しいです。
2025年2月をもって、建て替…