いずみたくの楽曲は口ずさみたくなるような耳に残るものばかりで流石に稀代の作曲家は違うな、と感心。特にテーマ曲というべき『行こうよ仲間たち』は子供たちが歌いやすく、歌詞も心に響くものだ。ダンスの振付は山田卓、劇団四季以外のステージの振付も多数あるが、立体的に、ダイナミックに見せるフォーメーションは、後の多くの振付家の手本となっている。また、アクションシーン、最近の舞台はアクション指導が入り、”格闘技”といった趣きでリアリティ感満載で迫力もあるが、この『ガンバ』のアクションシーンは全てダンス。無駄な動きを削ぎ落し、対峙するキャラクターのその瞬間をクローズアップする。また、ノロイ達のダンスも必見で、ここはよく観て欲しいポイント、怖くもあり、ちょっとコミカルでもあり、振付家のセンスを感じるシーンとなっている。
この物語は子供向けでありながら、いわゆる昔話のようなキッパリとした勧善懲悪とは言い難く、またハッピーエンドでもない結末だ。ガンバは純粋な気持ちから行動するが、もちろん、それを快く思わない人物(ここではネズミ)が存在するし、訳ありの者もいる。友情、絆、愛といったテーマだけではなく、戦い、死といった重い側面もきっちりと描いている。このミュージカルはアニメの舞台化ではなく原作の舞台化、しかも舞台芸術としてもクオリティが高い。実はTVのアニメ版、ガンバと行動を共にするのは、ガンバも含めて7匹、およそ半分に減っている。1つのキャラクターが複数のキャラクターを兼ねていたりする。ミュージカル、原作、アニメと比較してみるのも一興だ。それでもテーマがブレないのは原作のパワー、ガンバはやっぱり”ガンバ”なのである。
ファミリーミュージカル『ガンバの大冒険』
7月23日(土)~8月21日(日)
自由劇場 (港区海岸1-10-53)
HP: https://www.shiki.jp/
取材・文/高浩美
撮影/下坂敦俊
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