――人狼の舞台って1つの空間で行われて、人数も限られてて、死んだりはしますけど誰も出入りはしない、基本的には1つの密室で行われますよね。心理的な駆け引きの中で、キャラクターの性格も見えてくる。宇宙兄弟の映画とかコミックでは見えなかった部分がこの舞台だと見えてってくるっていうのはありますね。
佐渡島:僕が『宇宙兄弟』の小山さんのエージェントをしている中で、課題意識として持っていることのひとつは、アニメとか映画っていうのは本よりも多くの人にリーチするためのメディアミックスなんだということです。だけど、繰り返し楽しんでもらうためのメディアミックスっていうのを思いつかなかったんですよ。本を何回も読んでくださいっていってもむずかしいじゃないですか。それで、人狼劇とのタイアップというのは、初めて繰り返し楽しんでもらうことのできる仕組みだと。それで、この仕組みが、今までの桜庭さんのやり方だと、かなり人狼ゲーム側に寄っているんですが、原作側によせることができると、いろんな漫画と組むことができると思ったんですね。
――たしかに、そうですね。
佐渡島:さらに桜庭さんの側でも、例えば5つ良い作品と組んじゃったら、毎年その5つを回していって、1年に1個だけ新作を作っていくというやり方でも劇がずーっと回り続ける、たとえば劇団四季のような感じっていうのができるだろうなっていう風にも思いました。でも、まだそういう原作と組んでいないし、自分の生み出した劇の持ってるポテンシャルのすごさみたいなものに、桜庭さん自体もまだ完全には気付ききっていないだろうと思って、それでもう「一緒にやりたい」ってなって、やりましょう、やりましょう、やりましょうってこっちから言った感じですね。
桜庭:佐渡島さんのほうから……今でも覚えてるのが、初めてお打ち合わせした日に「じゃあ、もうやるって告知して良いですか」って。
――早い!
桜庭:え……ってなって。でも流行っていうか、時代の動向を見ている現場の第一線の方だからこそのスピード感だなとは思ったので、これは長々と検討せずに「やる」と言ってから詳細を詰めようと思いました。
――「やる」が前提ですね。
桜庭:これはやるかやらないかではなくて、やると決めてどうするかだな、時間を使うのはと思って。ここまで人狼劇のシステム自体を許容して、コラボで作品世界を表現するために、必要なことは何でもするっていう姿勢で来てくださる方は初めてでしたから。今までは「作品を使って良いけど、ここらへんからは触らないで」みたいなのが多かったんですよね。だから、これは貴重だなと思って即答しました。原作を壊さずに色んな”IF”を見せられるじゃないですか。もし六太が宇宙飛行士になれなくても、この人がなったらとか、あの時だったら……どういう風にあきらめずにチャレンジするのかとか、そういう点って原作ではできないことだけど、そうやっていくことでより深くキャラクターが理解され愛されるというか、宇宙飛行士になりたいっていうのが華やかな楽しいことだけではなく、みんなが覚悟を持って来ていたってことがすごいわかると思うんですね。
「Fate/Zero」は、Fa…