舞台上には全くと言っていい程、何もない。石田三成と島左近の出会い、「青竹のような奴」と島左近は石田三成に向かって言い、三成は左近に「兄になってくれ」と言う。ここから二人の友情が始まるが、戦乱の世、あの合戦は刻一刻と近づく。松平忠吉と井伊直政の親子の関係、大谷吉継は、目がよく見えないが、自分のすべきことは見分けられる。小早川秀秋は徳川家康も石田三成も裏切れないと苦悩する。各武将、極限状態で何を想うのか、何を考えるのか、実際のところはわからないが、シンプルな朗読劇だからこそ、真に迫るものがある。5人とも足軽等の役もこなし、なかなかハードルの高い芝居、役を瞬時に演じ分けるのはとりわけ難易度が高い。音楽や効果音、照明に助けられているとはいえ、やはりセットがない分、己の技量だけが頼りの過酷なものである。この時代を必死で生き抜く武将たち、狡猾な徳川家康、しかし、そうならなければ天下人にはなれない。ヒールな雰囲気を漂わせながら、この戦乱を生き抜く。石田三成の末路は誰もが知っているし、小早川秀秋は悩んだ末にどうするのかは、観客は先刻承知だ。ただ、かっこいいだけじゃなく、弱いところや迷う姿も見せ、リアリティを持たせる。そして戦いの火ぶたは切って落とされるが、この歴史的な戦い、効果音や照明で視覚的に鮮やかにみせるが、それ以上に俳優陣の奮闘、いわゆる殺陣やアクションのような派手な立ちまわりはないが、その熱演とリアリティに満ちた台詞で真に迫るものが感じられた。