物語の始まりは、新撰組を題材としたTVドラマの撮影現場から始まる。
この物語の主人公であるシゲは、30歳の蠍座のB型(?)、適当な日々を過ごしている。
同じ現場にいる友人から新撰組の豆知識を聞きつつ、帰路につく。
そして次の場面から、物語は急展開。
翌日同じ撮影現場にあわられたシゲは、友人に興奮しながらもこう話す。「幕末に行ってきた!」と。先日の帰り道、怪しげな男からこれまた怪しい薬をもらい、それを飲んでしまう。
その薬とは、「白き薬は10のときを遡り、黒き薬は10のときを超える・・・」 というもの。そしてシゲは、幕末での出来事を回想する。
幕末にタイムスリップしたシゲは、新撰組の屯所を目指す。そこで見たのは、暇にあかしだらだらと日々を過ごす新撰組の姿だった。シゲは新撰組のメンバーに、山南敬介と間違われ山南として新撰組の人々と関わることになる。
そんな話が展開される「LOOSER」。先に紹介したように、5人芝居ということで舞台上には5人しか出てこないが、それぞれの役者が様々な役をこなし入れ替わり立ち代り幕末の重要人物たちを演じる。そんな演出方法を逆手に取ったかのような、トリックとも言うべき物語の展開もある。
一人の役者が様々な役を演じるということだが、基本的な早着替えは羽織を裏返すなどの簡単な変化となる。だが、そこはさすが実力派が集まった座組みというべきか、それぞれの演技力や持ち前の機転で
大量の登場人物を演じ分けており、全く違和感を感じない。
また、5人による息ぴったりの流れるような芝居は、見るものを物語の世界に没入させ、休憩時間なしの2時間以上の舞台となる本作だが全く長さを感じさせない。
そして、何より今作で主演2作目となる崎山さんによるシゲ。崎山さん自身が優等生なキャラクター性を持つにも関わらず、30歳の無気力でいい加減なシゲというキャラクターを見事演じているし、シゲというキャラクターに説得力を持たせている。
現に、女性からしてみたら、少しイラっとする部分もあるかもしれない。
そんなシゲが、新撰組や長州藩の面々と関わりどう変わっていくのか。幕末を舞台にした熱い男たちのドラマを是非劇場で体験してもらいたい。