演出家と出演者4名からコメントが寄せられた。(各プロフィール最下部に記載)
■演出:倉持裕
演出)倉持裕 提供:ホリプロ
村上春樹さんの小説は十代の頃から読み始め、新刊が出るのが最も待ち遠しい作家でした。俯瞰した視点、ふとしたきっかけに異世界に深く潜っていく展開など、作劇する上で多大なる影響を受けました。今回の芝居の原作『神の子どもたちはみな踊る』は、短編集の中で最も好きな作品です。戯曲は、モノローグを駆使することによって、過去と現在、現実と虚構を行き来しながら展開します。それらの継ぎ目をなだらかにつなげて、一枚の絵として演出したいと考えています。キャストには素晴らしい俳優が揃いました。古川雄輝さんとは、主演された『イニシュマン島のビリー』を拝見して以来、いつかご一緒したいと思っていました。静かに、強い信念を崩さないムードが役に合っています。松井玲奈さんは非常に知的な印象で、インテリな役のイメージにぴったりです。何度もご一緒している川口覚さんは、誠実な男も軽薄な男もどちらも似合う俳優です。木場勝己さんは、シアターコクーン『8月の家族たち』が印象的でした。ファンタジックなキャラクター「かえるくん」を、毅然と、楽しんで演じて頂けたら、と期待しています。
■古川雄輝:淳平役
村上春樹さん原作の作品に主演させて頂き、大変光栄です。沢山いらっしゃる原作ファンの皆様の期待にも応えられるように努力したいと思います。台本をいただいた時に、村上春樹さんならではの世界観を持った物語だと感じました。初めてご一緒させていただく倉持さんのもと稽古を通して、淳平の心情を繊細に表現できるように、役者として少しでも成長できるように頑張りたいと思います。また初共演の松井玲奈さんとのお芝居も楽しみです。淳平と小夜子の距離感をリアルに演じたいです。先輩の木場勝己さん川口覚さんからは、たくさんのことを吸収できるよう勉強させて頂きます。映像では味わえない、お客様の前で生でお芝居をするライブ感を楽しみにしながら、稽古に励みたいと思います。
■松井玲奈:小夜子役
村上さんの作品に深く触れていきたい、と思っていた時にこの舞台のお話があり、なんというタイミングだろうとびっくりしました。震災をテーマにした作品はいつだってやるべき時にあるのだなと、感じずにはいられない作品です。私が演じる小夜子という役には、原作には書かれていない、彼女の複雑な心情があるなと思っています。言葉にできない感覚的な思いというのは、女性が心の中に留めがちなものだと思うので、自分なりにどう表現できるのか挑戦だと感じています。今回始めて演出を受ける倉持さん自身もこの作品をどう表現するのか思考を巡らせていらっしゃったので、頭の中のプランがどんな風に形になっていくのかが今からとても楽しみです。初共演の古川雄輝さんも、小夜子と沙羅の二人に優しく寄り添い見守ってくださると思います。
■川口覚:片桐役、高槻役
村上春樹さんの作品を役者として探究できる事に感謝と興奮しています。
倉持さんの演出を受けるのは 3 度目になります。
倉持さんとの作品作りは、楽しかったり苦悩したり、その都度、自分にとって必要な事を必ず気付かせてくれる贅沢な時間です。
細胞を鋭敏にし、倉持さんのイメージを体現できるよう、 共演者の方々、全スタッフの皆様と共に邁進して参りたいと思います。
■木場勝己:かえる役、語り手役
村上春樹さん原作の舞台、『海辺のカフカ』のパリ公演本番中になります。
その村上さんの作品、『神の子どもたちはみな踊る』に再び出演することになりました。私の役は、「ナカタさん」から「かえるくん」に変わります。この二つの役に共通しているのは、数奇な運命と成し遂げなければならない使命であります。もう何も考えません。今回初めてになる演出の倉持裕さんに、すべてをお任せしようと思っています。
<あらすじ>
信用金庫に勤めるさえないサラリーマンである片桐(川口覚)の元に、ある日突然巨大な蛙が現れる。地下で気持ちよく眠っていた「みみずくん」が神戸の地震で目を覚まされ、その怒りにまかせて東京に大地震を起 こそうとしている、それを阻止できるのは片桐だけだと、その「かえるくん」(木場勝己)は言うのだ。片桐が昏倒してい る間にみみずくんとの闘いは行われ、いつのまにか片桐は病院へ…。一方、作家の淳平(古川雄輝)は、大学時代からの友人である小夜子(松井玲奈)と彼女の娘の沙羅に熊の話を語って聞かせ る。淳平は大学時代に小夜子に恋をしていたが、彼女は共通の友人である高槻と結婚した。高槻と小 夜子はその後離婚し、淳平は高槻から小夜子と結婚するよう勧められているのだ。淳平は地震の後、はるか昔に捨てた故郷である神戸のことを思う。沙羅もまた地震以来悪夢を見るよ うになる。地震男が自分を狭い箱に閉じこめにくると言うのだ。眠りについた小夜子と沙羅を見守るうち、淳平は小夜子に求婚することを決意する。
<登場人物>
淳平: 36 歳。アルバイトをしながら小説を書いている。大学時代の同級生、小夜子にずっと思いを寄 せていたが、小夜子は同じく同級生の高槻と結婚してしまった。ほどなく離婚した小夜子と、小夜子の娘、沙羅を護るため、淳平は小夜子に求婚することを決意する。
小夜子: 学生時代はひそかに淳平に思いを寄せていたが、高槻と結婚する道を選ぶ。現在は離婚し、娘沙羅を一人で育てている。地震のあとも怯え続ける沙羅のことを淳平に相談するうちに、昔の思いがよみがえる。
片桐、高槻:
ー片桐 :信用金庫の融資管理課の職員。突然現れた「かえるくん」に言われ、戸惑いながらも、「みみずくん」が起こそうとしている新たな地震を食い止めるため闘うことを決意する。
ー高槻 :淳平、小夜子の同級生。現在は新聞記者をしている。小夜子と結婚するも、娘沙羅をもう けた後に離婚。淳平に、小夜子と再婚するようすすめる。
かえる、語り手: 片桐の前に突然現れた「かえる」。普段は地下に眠っている「みみずくん」が、阪神大震災で揺 り起こされ、東京で巨大地震を起こそうとしているのを食い止めるため、片桐の力を借りにやっ てきた。
沙羅(子役、未定): ※W キャスト 小夜子と高槻の娘。あの地震以降、「地震男」に無理やり箱に押し込められる夢に怯えている