舞台演出家の西田さんは、本作で映画監督デビューを飾りましたが、「視点や見えるものだったりとかは、舞台ではできないというものでないといけないと思い、映像でしかできない作品だけを考えて作った作品です」と紹介。
西田監督は、この映画は、松田凌さん演じる黒ネクタイの男の想いだけでひっぱろうと思い、意図的に彼の設定は映画の中ではほとんど語らないことにしたとのこと。説明的なシーンが少なく、難しいこの役を、松田凌さんならいけると思った松田さんの魅力を聞かれ、「松田凌くんと舞台の仕事を何回かして、彼はこう見えてとても役とお芝居に対する覚悟がある、力がある俳優。何も心配なく、イメージ通りやってくれました」と答えました。松田さんは、西田さんの映画監督デビュー作の主演を任されたことに関して、「西田大輔初監督作品に白羽の矢を立てていただけたという光栄な部分と責任があったので、全うしなくてはいけないなという覚悟は忘れずにやりました」と話しました。
監督のこの映画の構想の始まりは、『最後のユキの表情が撮りたい』ということだったとのことで、ヒロインのユキを演じた皆本麻帆さんの演技について、「『ああこういう話ね』みたいに思われたくないというところがあって、ラストの1秒でわかる、映画が変わる物語を作りたかったんです。皆本さんは混乱を隠そうともまとめようともせずそのままやってくださったので、作りたかったのはこれだなというのがありました。とても才能のある女優さんなので、これからが楽しみです」と話しました。それを聞いた皆本さんは、「役柄と状況と今の自分がリンクしていたのかなと思います。最後、大画面で大きく映らせていただいて、すみません。ありがとうございます」とラストシーンについて意味深に話しました。
西田監督は、白ネクタイの男役の玉城裕規さんに関して、「印象に残る役を書こうというのがありました。彼はMr.ストイックで、皆さんが思っているまんまなので。吸血鬼みたいでしょ?」と言うと、玉城さんは「吸血鬼ってことじゃないですか!」と突っ込みながらも、「役に関しては、『最初の方は印象に残してなんぼ』じゃないですけれど、西田監督と多少なりと話をさせていただきました。1回『アウトレイジ』っぽすぎると言われました。綺麗な部分だけじゃなく、『アウトレイジ』がいてもいいんじゃないかなとは思っていたんですけれど、その話し合いなども楽しみながら、濃い時間を過ごしました」と真面目に話しました。
西田監督は、菊地美香さんに関しては、「お芝居も上手だし、いい意味で現場をひっぱってくれました。場所を仕切っていくみたいなのは最初からイメージしていたんですけれど、とても上手にやってくださいました。あのラブシーンとかも、誰もやったことがないラブシーンをやりたかったんです。」と、”顎噛み”シーンについて言及。「性癖とかではないんですよ!」と言うと、松田凌さんが「そうかと思ってました!」と突っ込んで、会場は笑いに包まれました。菊地さんは、「洋館の中で、『ちょっと美香ちゃん。このシーンなんだけど』と呼ばれて、『えっ、私脱がされるの?』と思ったんですけど(笑)、『美香ちゃん、ちょっと顎噛んでくれる?』と言われて。『今まで見たことがないラブシーンを撮りたいんだ』とおっしゃったんで、『なんでもやりますよ』って。山口(大地)くんにはギリギリまで言わないでいたんです。『ボタンを外す』というト書きがあったんですけれど、大地くんはそういうシーンだと思っていたのに、いきなり顎を噛まれて、びっくりしたと思います!」と話すと、監督は、「壁ドンがあって、顎クイがあって、次は顎噛みが流行るかもしれないですよ!」と会場を笑わせました。