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【レポート】髑髏の旗の下に!『キャプテンハーロック~次元航海~』ゲネプロレポート

スペースオペラ『宇宙海賊キャプテンハーロック』が、連載開始より39年目にして初めて舞台化された。多くの日本人の心を揺さぶり松本零士ファンの間でも長く愛されている作品で、13年にはCGアニメーションとして、14年より嶋星光壱による漫画「キャプテンハーロック〜次元航海」がチャンピオンRED(秋⽥書店)にて連載されている。

舞台は、退廃し享楽にうつつを抜かす人類が残された地球。そんな地球に謎の侵略者マゾーンの魔の手が迫るという筋立て。

原作さながらの、威厳溢れる佇まいと優しさを内包するハーロックを演じるのは林野健志。言葉数ではなく、一つ一つのセリフに強烈な印象を残していく。台場正役の鈴木勤、ダイバーゼロ役にはヒロム、キリタ・イソラ役には霜月紫ら様々な分野で活躍する若手俳優や、ユーモア溢れる副艦長のヤッタラン役山田崇夫や癒し系のドクター・ゼロ役松田好太郎、紅一点の戦闘隊長有紀蛍役の山本夢、舞台オリジナルキャラとしてサブ役の西泰平やヤス役の校條拳太朗らが舞台を彩る。

弦楽器を鳴らし、中央にたたずむ少女の語りから物語は始まる。アルカディア号のクルーであり、異星文明ニーベルング人のミーメである。
国防の最前線というのに、軍人たちは収賄に血道を上げる。そこに一隻の巨大戦艦が現れた。
自由を愛し、地球政府に逆らう広域指名手配犯・ハーロック率いる宇宙海賊戦艦アルカディア号。腐敗しきった軍人たちをなぎ倒し、海賊の信念を表す“髑髏の旗”をなびかせる。
腐敗した地球にも希望はあった。マゾーンの脅威に唯一気付き、暗殺された台場博士の息子・正(ただし)。彼はハーロックに出会い「男としての覚悟」を胸にアルカディア号にクルーとして合流する。「地球を守る」という強い意志に溢れる正を待っていたのは、ただの酔っ払い集団であるクルー達だった。正は失望するが、早速現れたマゾーン艦隊をハーロックの的確且つ豪胆な指示に倒していくクルーたちの姿に目を見張る。彼らもまた地球を守る男たちだったと、決意を新たにした正は彼らと祝杯を上げる。
物語はすすみ、正と共にアルカディア号に乗り込んだ波野静香が侵略者・マゾーンの先兵である事が判明する。地球人として過ごし地球を愛する気持ちを持ちながら、マゾーンのスパイとして工作活動を続けていた波野は、地球人とマゾーンの「共存の道はないのか?」と葛藤する。マゾーンである自分は危険分子であると感じ、自らクルーの元を離れる波野をハーロックは制止する。ニーベルング人のミーメや海賊船の荒くれ者たちを例に挙げ「お前が去る理由がどこにある?」と改めてクルーの一員として波野を迎え入れる。
どんな荒くれ者だろうとも、異星人であろうとも、何者も拒まず全てを受け入れるハーロックの、船長としてそして一人の男としての魅力が引き立っていた印象深いシーンだ。

本作では繰り返し「ハーロックとは何者なのか?」と問われる。
かつては共に戦った地球防衛軍のキリタ、新たなクルーとなった正、アルカディア号に地球の未来を託して逝ったトチローと、ハーロックと男たちの確固たる絆と武力に屈しない鋼の心。そして、男としての礼儀と信念。原作でも描かれるエピソードを通して、古き良き時代の「男たちの矜持」に観客の胸は熱くなり、いつの間にか42番目のクルーとしてアルカディア号と共に航海を続ける。

ハーロックに命を捧げたミーメ役・柴⼩聖の可愛らしい歌声と、女王ラフレシア役:扇けいの自信に満ちたパワフルかつ繊細な歌声が劇場を包む。
物語冒頭の軍人との戦いは力強い殺陣で、女性だけのマゾーン艦隊とは光と柔らかなコリオグラフで優雅なアクションとメリハリの効いた表現が秀逸。また、アニメだけではなく実写映像を用い、次々とテンポよくシーンが切り替わる演出はまさにアニメ的。アニメの手法を用いて舞台化したら、というアプローチが新鮮だった。最後には、松本零士ファンにはたまらないシーンも用意されていた。

何よりも、林野演じるハーロックの、芯の通った存在感と佇まい。
かつて少年少女だった私達が憧れた、銀河の無法者がそこにいた。

 

 

 

 

【CAST】

ハーロック:林野健志
台場正:鈴⽊勤
波野静⾹:伊藤えみ
ダイバーゼロ:ヒロム
キリタ・イソラ:霜⽉紫
柴⼩聖、藤本かえで、校條拳太朗
⼭本夢、⼭⽥崇夫、松⽥好太郎、⻄泰平
⽔元まこと、菅井義久、岩尾隆明、☆★朋★☆
後藤紗亜弥、⽻渚さやか、⻄條瑠美、⻲井理那
⾳河亜⾥奈、本⼭由乃(劇団ロオル)、堀籠沙耶
久織じゅん、未依、藤井桂枝、⼭⽥英真
⻄脇⼤河、サトシ、伊藤直樹(幻想〜Un Rave)
ファイヤー(幻想〜Un Rave) 、⻑⾕川和輝、⽮那居秀樹
五⼗嵐妃奈乃、希美、松樹侑奈
杉浦タカオ(声)、久保亜沙⾹(声)
⼥王ラフレシア:扇けい

【STAFF】

脚本・演出:原⽥光規

原作・総設定・デザイン:松本零⼠
秋⽥書店刊「キャプテンハーロック 次元航海」
漫画:嶋星光壱

脚本協⼒:安⻫勝則
⾳楽:杉浦タカオ、hoto-D
天宮コージー(esca)
振付:後藤健流
アクションコーディネーター:岩尾隆明
CG:坂内友樹

プロデューサー:越康広(ビッグファイタープロジェクト)
制作:貞⽅祥(SHOWMANʼS)

企画協⼒:ZERO Goods universe
秋⽥書店
東映アニメーション

主催:ビッグファイタープロジェクト

http://www.bfp54.com/harlock

<文・写真>
公野研究室 冨田祐太郎

※人材育成の一環として学生が執筆いたしました。
 また、2.5newsではインターンシップを実施しております。
 詳細は下記のページをご参照ください。
 https://stagenews25.jp/?p=3346

2.5news(編集部)

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